その中で、実に興味深い部分がありました。
【引用開始】
Q3.つみたてNISAを始めたばかりで、どの
投信にしたらいいのか迷っている。自社以外の
投信でどのファンドに注目しているのかを教えてほしい。
(バンガード)
個人的見解だが、ニッセイさんとeMAXISさんがコスト競争を繰り広げていて、注目している。
Q7.三菱UFJ国際
投信の話で「ここまでコスト競争が進むと、直販も検討せざるを得ない」という話があったが、ちょっとでも直販を考えている運用会社さんがおられたら、挙手をお願いしたい。
A7.
「一時期、バンガードが日本で直販を検討という報道がなされていたが?」→(バンガード)「報道の中身を見ていただくとわかるかと思いますが、そのようなことは言っていないという理解です」
【引用終わり】
バンガード社の直販に関する私の記事はこちらです。
●バンガード社の直販にスリムシリーズは勝てるのか?
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-877.html上記記事でお伝えしたとおり、バンガードジャパンの社長は明らかにやる気でした。
しかし、今回のつみップでは、バンガード社は直販を完全否定しています。
その理由は簡単です。
勝てないからです。
我が国の
インデックスファンドの超低コスト戦争は、昨年末のスリム先進国株の異次元の値下げによって本場のアメリカを超えてしまいました。
全世界株ETFであるVTの経費率は0.1%ですが、この0.1%は信託報酬とその他コストの合計額です。
VTの信託報酬は0.08%、その他コストは0.02%となります(下記リンク先3頁参照)。
https://personal.vanguard.com/pub/Pdf/p3141.pdf#search=%27Vanguard+Total+World+Stock+ETF+Prospectus%27また、VTの
インデックスファンド(VTWSX)の経費率は0.19%ですが、そのうち信託報酬は0.15%、その他コストは0.04%です(下記リンク先2頁参照)。
https://www.vanguard.com/pub/Pdf/sp628.pdf#search=%27Vanguard++Prospectus+VTWSX%27これに対し、スリム先進国株の信託報酬は0.109%、その他コストは0.069%、経費率は0.19657%となります。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-category-34.htmlバンガード社は
インデックス投資の世界では抜群のブランドを誇りますから、わが国で直販をする以上、スリムやニッセイに負けることは許されません。
スリムやニッセイに勝つためには、少なくとも信託報酬をこれらと同程度にしなければなりません。鳴り物入りで直販を開始したのに、ふたを開ければスリムやニッセイよりも高コストだったのでは、バンガード社の低コストという看板を傷つけてしまうからです。
しかし、スリム先進国株やニッセイ外国株の信託報酬は0.109%です。
これは100億円を直販で売ったとしても、経費控除前利益は1090万円しかないことを意味します。
1000億円を売り上げて、ようやく経費控除前利益が1億円です。
バンガード社が直販を真剣に検討していたのは、信託報酬がまだ0.2%の頃だったと思われます。
信託報酬が0.2%であればまだ直販に踏み切る旨味がありましたが、昨年末にスリム先進国株が異次元の値下げに踏み切り、来月にはニッセイ外国株がそれに対抗値下げしてしまうという事態に接し、直販しても儲からないという経営判断をしたのだろうと推測されます。
また、もしバンガード社が直販に踏み切れば、楽天バンガードファンドシリーズの顧客を奪うことになります。
楽天バンガードファンドシリーズはバンガード社のETFを買うだけファンドですから、楽天バンガードファンドシリーズが売れれば売れるほど、バンガード社にはETFの信託報酬が入ることになって儲かるという関係にあります。
そうすると、バンガード社としては、成功するかどうか分からないし、もし成功したとしても旨味が極めて少ない直販に少なくないコストをかけて踏み入るよりも、楽天バンガードファンドシリーズを応援して楽して儲けたほうがよいことから、直販はしないという方針変更をしたのでしょう。
しかし、スリムとニッセイにとっては日本が主戦場です。
超低コスト戦争から逃げ出すことはファンドの死を意味します。
丸井が低コスト
インデックスファンドのクレジットカード払いに踏み切らず、バンガード社も直販を諦めた今、残る爆弾はスリムシリーズの直販だけになりました。
三菱UFJ国際
投信が直販を起爆剤として更なる躍進をするのか、あるいは純資産額が早晩1000億円に達するであろうニッセイ外国株が先行者としての抜群の知名度を生かして逃げ切るか、はたまたiFree外国株が空気を読まずに起死回生をかけた大幅値下げに踏み切るか、アツい夏になりそうです。
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