題材は「eMAXIS新興国株からeMAXIS Slim新興国株に乗り換えるべきか」とします。
両ファンドはマザーファンドを共通にするため、信託報酬を除く実質コストはほぼ同額であると想定できるからです。
まず、イーマクシス新興国株とスリム新興国株の信託報酬(税込)を比較します。
●イーマクシス新興国株 0.648%(信託財産留保額0.3%)
●ススリム新興国株 0.2052%
●差額 0.4428%
イーマクシス新興国株を1300万円保有しており、そのうち投資元本が1000万円、含み益が300万円のケースで考えてみます。
このとき、イーマクシス新興国株を売却し、その代金全額でスリム新興国株を購入したとすると、
イーマクシス新興国株 1300万円(うち投資元本1000万円、含み益300万円)
↓
(信託財産留保額3万9000円、含み益296万1000円×20.315%=60万1527円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム新興国株 1235万9473円(投資元本も同額)
となります。
このように、売却を伴う乗り換えによってリスク資産の総額が減ることになります。
その結果、減った金額(譲渡所得税相当額)が生むはずだったリターンを得ることができなくなります。
他方で、売却を伴う乗り換えによって、1235万9473円×0.4428%=5万4727円のコスト削減効果を得ることができます。
そのため、売却を伴う乗り換えの判断基準は、コスト差5万4727円が64万0527円の運用益を上回るかどうかということになります。
具体的に計算してみます。
5万4727円÷64万0527円=8.54405%
このように、譲渡所得税相当額が年8.6%以上の利益をあげると想定するのであれば、売却を伴う乗り換えをして譲渡所得税相当額を失わないほうが得をするという結論になります。
一般に、新興国株の期待リターンは年6.5%ですから、含み益が3割のケースでは、イーマクシス新興国株を売却してスリム新興国株に乗り換えたほうが得です。
期待リターンについては、こちらをご覧ください。
●72の法則と115の法則
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-686.html一般化してみます。
64万0527円の6.5%は4万1634円です。
4万1634円÷1235万9473円=0.33685%ですので、コスト差が0.33685%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム新興国株の信託報酬は税込0.2052%ですから、信託報酬が税込0.54205%(税抜0.5%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が3割の場合)。
含み益が3割の場合に売却を伴う乗り換えをしたほうが得だということは、含み益が3割以下のときは売却を伴う乗り換えをしたほうが得だということになります(含み益が多額であればあるほど、乗り換えをした際の譲渡所得税が多額となり、乗り換えないほうが得になるため)。
以上のことから、含み益が3割以下のときは、イーマクシス新興国株を売却してスリム新興国株を買ったほうがよいことが分かりました。
そこで、含み益が4割と5割のときも検討してみます。
●含み益が4割のとき
イーマクシス新興国株 1400万円(うち投資元本1000万円、含み益400万円)
↓
(信託財産留保額4万2000円のほか、含み益395万8000円×20.315%=80万4067円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム新興国株 1315万3933円(投資元本も同額)
売却を伴う乗り換えによるコスト削減効果は、1315万3933円×0.4428%=5万8245円
5万8245円÷84万6067円=6.8842%
このように、譲渡所得税相当額が年6.9%以上の利益をあげると想定するのであれば、売却を伴う乗り換えをして譲渡所得税相当額を失わないほうが得をするという結論になります。
一般に、新興国株の期待リターンは年6.5%ですから、含み益が4割のケースでは、イーマクシス新興国株を売却してスリム新興国株に乗り換えたほうが得です。
一般化してみます。
84万6067円の6.5%は5万4994円です。
5万4994円÷1315万3933円=0.41808%ですので、コスト差が0.41808%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム新興国株の信託報酬は税込0.2052%ですから、信託報酬が税込0.62328%(税抜0.577%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が4割の場合)。
●含み益が5割のとき
イーマクシス新興国株 1500万円(うち投資元本1000万円、含み益500万円)
↓
(信託財産留保額4万5000円のほか、含み益495万5000円×20.315%=100万6608円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム新興国株 1394万8392円(投資元本も同額)
売却を伴う乗り換えによるコスト削減効果は、1394万8392円×0.4428%=6万1763円
6万1763円÷105万1608円=5.8731%
一般に、新興国株の期待リターンは年6.5%ですから、含み益が5割のケースであれば、コスト差(年5.9%)が譲渡所得税相当額の運用利益(年6.5%)を下回りましたので、イーマクシス新興国株を売却せず、そのまま保有していたほうが得です。
一般化してみます。
105万1608円の6.5%は6万8354円です。
6万8354円÷1394万8392円=0.49%ですので、コスト差が0.49%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム新興国株の信託報酬は税込0.2052%ですから、信託報酬が税込0.6952%(税抜0.643%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が5割の場合)。
まとめます。
イーマクシス新興国株を売却してスリム新興国株に乗り換える場合、イーマクシス新興国株の含み益が5割のときにすると損をし、4割のときにすると得をしますので、イーマクシス新興国株の含み益が4割程度になるまで待つべきです。
これを一般化すると、
●信託報酬が税抜0.5%を超えるファンドであれば、含み益が3割のときに売却してスリム新興国株に乗り換えても得をする
●信託報酬が税抜0.577%を超えるファンドであれば、含み益が4割のときに売却してスリム新興国株に乗り換えても得をする
●信託報酬が税抜0.643%を超えるファンドであれば、含み益が5割のときに売却してスリム新興国株に乗り換えても得をする
ということになります(厳密には、信託報酬差ではなくトータルリターン差で計算する必要があります)。
コメント
たわら新興国->スリム新興国株
もし、お時間がありましたら、同じシリーズで、たわら新興国->スリム新興国株の乗り換えも検討いただけませんか??私が、最近考えてるってだけなのですが。。。
よろしくお願いいたします。
2018/05/01 09:44 by はたらく男 URL 編集
No title
新記事でご回答しましたので、ご覧ください。
2018/05/01 22:35 by たわら男爵 URL 編集