題材は、「
たわら先進国株からスリム先進国株に乗り換えるべきか」とします。
まず、
たわら先進国株とスリム先進国株の信託報酬(税込)を比較します。
●
たわら先進国株 0.216%
●スリム先進国株 0.11826%
●差額 0.09774%
信託報酬差は0.09774%ですが、下記記事で検討したとおり直近1年のトータルリターン差(推定)は0.1572%ですので、この両方の数字で検証してみます。
●ニッセイマジックが炸裂するもスリム先進国株には及ばず
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-871.html#moreたわら先進国株を1300万円保有しており、そのうち投資元本が1000万円、含み益が300万円のケースで考えてみます。
このとき、
たわら先進国株を売却し、その代金全額でスリム先進国株を購入したとすると、
たわら先進国株 1300万円(うち投資元本1000万円、含み益300万円)
↓
(含み益300万円×20.315%=60万9450円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム先進国株 1239万0550円(投資元本も同額)
となります。
つまり、冒頭で説明したとおり、売却を伴う乗り換えによってリスク資産の総額が減ることになります。
その結果、減った金額(譲渡所得税相当額)が生むはずだったリターンを得ることができなくなります。
他方で、売却を伴う乗り換えによって、1239万0550円×(0.09774%ないし0.1572%)=(1万2110円ないし1万9477円)のコスト削減効果を得ることができます。
そのため、売却を伴う乗り換えの判断基準は、コスト差(1万2110円ないし1万9477円)が60万9450円の運用益を上回るかどうかということになります。
具体的に計算してみます。
1万2110円÷60万9450円=1.9870%
1万9447円÷60万9450円=3.1909%
このように、譲渡所得税相当額が年2~3%以上の利益をあげると想定するのであれば、売却を伴う乗り換えをして譲渡所得税相当額を失わないほうが得をするという結論になります。
一般に、先進国株の期待リターンは年5%ですから、含み益が3割のケースでは、たわら先進国株をそのまま保有したほうが得です。
一般化してみます。
60万9450円の5%は3万0472円です。
3万0472円÷1239万0550円=0.2459%ですので、コスト差が0.2459%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム先進国株の信託報酬は税込0.11826%ですから、信託報酬が税込0.36416%(税抜0.337%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が3割の場合)。
以上のことから、含み益が3割以上のときは、たわら先進国株を売却してスリム先進国株を買ってはいけないということが分かりました。
そこで、含み益が2割と1割のときも検討してみます。
●含み益が2割のとき
たわら先進国株 1200万円(うち投資元本1000万円、含み益200万円)
↓
(含み益200万円×20.315%=40万6300円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム先進国株 1159万3700円(投資元本も同額)
売却を伴う乗り換えによるコスト削減効果は、1159万3700円×(0.09774%ないし0.1572%)=(1万1331円ないし1万8225円)
1万1331円÷40万6300円=2.7888%
1万8225円÷40万6300円=4.4856%
このように、譲渡所得税相当額が年3~4.5%以上の利益をあげると想定するのであれば、売却を伴う乗り換えをして譲渡所得税相当額を失わないほうが得をするという結論になります。
一般に、先進国株の期待リターンは年5%ですから、含み益が2割のケースであっても、たわら先進国株をそのまま保有したほうが得です。
一般化してみます。
40万6300円の5%は2万0315円です。
2万0315円÷1159万3700円=0.1752%ですので、コスト差が0.1752%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム先進国株の信託報酬は税込0.11826%ですから、信託報酬が税込0.29346%(税抜0.272%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が2割の場合)。
●含み益が1割のとき
たわら先進国株 1100万円(うち投資元本1000万円、含み益100万円)
↓
(含み益100万円×20.315%=20万3150円が譲渡所得税として徴収される)
↓
スリム先進国株 1079万6850円(投資元本も同額)
売却を伴う乗り換えによるコスト削減効果は、1079万6850円×(0.09774%ないし0.1572%)=(1万0552円ないし1万6972円)
1万0552円÷20万3150円=5.1941%
1万6972円÷20万3150円=8.3544%
このように、譲渡所得税相当額が年5~8%以上の利益をあげると想定するのであれば、売却を伴う乗り換えをして譲渡所得税相当額を失わないほうが得をするという結論になります。
一般に、先進国株の期待リターンは年5%ですから、含み益1割になれば、たわら先進国株を売却してスリム先進国株に乗り換えたほうが得です。
一般化してみます。
20万3150円の5%は1万0157円です。
1万0157円÷1079万6850円=0.0940%ですので、コスト差が0.0940%を超えるのであれば売却を伴う乗り換えをしたほうが得という結論になります。
スリム先進国株の信託報酬は税込0.11826%ですから、信託報酬が税込0.21226%(税抜0.197%)を超えるファンドであれば売却を伴う乗り換えを検討したほうがよいことになります(含み益が1割の場合)。
まとめます。
たわら先進国株を売却してスリム先進国株に乗り換える場合、たわら先進国株の含み益が2~3割のときにすると損をしますので、たわら先進国株の含み益が1割になるまで待つべきです。
これを一般化すると、
●信託報酬が税抜0.34%を超えるファンドであれば、含み益が3割のときに売却してスリム先進国株に乗り換えても得をする
●信託報酬が税抜0.27%を超えるファンドであれば、含み益が2割のときに売却してスリム先進国株に乗り換えても得をする
●信託報酬が税抜0.20%を超えるファンドであれば、含み益が1割のときに売却してスリム先進国株に乗り換えても得をする
ということになります(厳密には、信託報酬差ではなくトータルリターン差で計算する必要があります)。
コメント
No title
信託報酬差/(20.315%*5%) > 含み益
となるようであれば乗り換えた方が得って感じでしょうか
よくある解説サイトでも含み益*20.315%/信託報酬差で
何年で回収できるかという視点で見ているものが多いですが
期待リターン5%がキモですね
これを下回るようなら何年たっても追いつけない
2018/04/24 21:58 by aaa URL 編集
スリムでないemaxis新興国やたわら新興国を売ってスリム新興国に乗り換えたいと思ってます。
もし宜しければ見解を教えて下さい。
2018/04/25 00:01 by URL 編集
よく読まず質問してしまい、失礼しました。
2018/04/25 02:44 by URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2018/04/25 10:32 by 編集
No title
>公式化すると信託報酬差/(20.315%*5%) > 含み益となるようであれば乗り換えた方が得って感じでしょうか
近い数字が出そうですね。
>期待リターン5%がキモですね。これを下回るようなら何年たっても追いつけない
そのとおりです。
譲渡所得税相当額の5%相当額>コスト差
であれば、売却を伴う乗り換えをすると損をします。
>スリムでないemaxis新興国やたわら新興国を売ってスリム新興国に乗り換えたいと思ってます。
以前の記事の内容が損益の理解を間違っており、しかも信託報酬値下げ前の事実関係を前提にしていますので、改訂版を新記事として公開する予定です。
もう少しお待ちください。
最後のご質問は非公開でしたので、いただいたコメント部分を貼り付けます。
【引用開始】
はじめまして。いつも拝読させていただいています。とてもためになるブログをありがとうございます。
ところで晴れてこどもが就職し、今日が初めての給料日です。入金されるまでは一体いくらなのかわからず躊躇していましたが、振込額をみて、今日からつみたてNISAを始める決意をしました。
とりあえずSBI証券の口座開設は済ませてあるのですが、もし男爵様が今月からつみたてNISAを始めるとしたらどのインデックスファンドを選ばれますか?
初心者の質問で申し訳ございません。
よろしくお願いします。
【回答】
スリム先進国株に一括40万円を投入します。
つみたてNISAは、20年間の非課税投資枠が20本与えられるという制度ですから、リバランスや途中での買い増しができません。
そのため、1種類の本命ファンドをできるだけ早期に購入し、20年の非課税投資期間の恩恵を最大限に受けるべきです。
なお、まとまった資金がなく、毎月の余剰資金から購入するときは均等額の積立買付で一向に構いません。
2018/04/25 11:05 by たわら男爵 URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2018/04/26 12:21 by 編集