損をする順番です。
1、含み損が出ている時に売却する
2、含み益が多い時に売却する
3、含み益が少ない時に売却する
まず、最も損をするのが「含み損が出ている時」に売却することです。
100万円で購入した
たわら先進国株が90万円(含み損10万円)になったケースで考えてみます。
この時点で売却すると、売却代金は90万円、確定損は10万円となります。
10万円の譲渡損ですので、譲渡益課税である譲渡所得税は発生しません。
この90万円で直ちにeMAXIS Slim先進国株(イーマクシススリム先進国株)を90万円買うと、スリム先進国株の購入価格は90万円となります。
※
投資信託を買い替える際は、同日売買をしなければ価格変動の影響を受けます。
すなわち、
たわら先進国株を売却した数日後、その売却代金が買付余力に反映された時点でスリム先進国株を買うと、その間、相場が上昇すると損をし、相場が下落すると得をします。
我々が
インデックス投資をするのは指数の期待リターンを確保するためですので、相場の変動の影響は極力排除しなければなりません。
そこで、
たわら先進国株の売却注文を出す同じ日に同じ額のスリム先進国株の買付注文を出す必要があります。
ただし、同日売買をするためには、一時的に購入金額を無リスク資産から借りる必要があります。
すなわち、
(1)スリム先進国株を買う証券口座に無リスク資産から100万円を入金する
(2)
たわら先進国株の100万円の売却注文、スリム先進国株の100万円の買付注文を出す
(3)
たわら先進国株の売却代金が証券口座に入金後、証券口座から出金して無リスク資産に100万円を戻す
という流れになります。
その後、相場が上昇し、スリム先進国株の評価額が100万円になったとします。
たわら先進国株を売却しなければ、100万円で買ったものが100万円になっただけですので、値上がり益はなく、譲渡所得税も発生しません。
しかし、スリム先進国株の購入価格は100万円ではなく90万円ですので、スリム先進国株が100万円になると、購入価格と評価額との差額10万円は値上がり益となり、その20.315%(2万0315円)が源泉徴収されてしまうことになります。
すなわち、含み損が出ている時に売却すると、乗り換え後の新ファンドの売却時に本来であれば課税されなかったはずの旧ファンドの含み損の部分に課税されたのと同じ結果になって損をすることになります。
したがって、要らなくなった
投資信託は、含み損が出ている時に売却してはいけません。
ただし、同じ特定口座内に含み損を超える配当金がある場合には、配当金の20.315%の源泉税が自動的に還付されますので(証券口座に入金されます)、含み損の金額が配当金の金額を超えない限度で積極的に旧ファンドを売却したほうが得をします。
つぎに、含み損がある時に売却するとして、含み損が少ない時のほうが多い時よりも源泉徴収される金額(含み益×20.315%)が少なくなりますので、得をします。
相互リンク先のアウターガイさんが開発し公表している「乗り換えコストチェッカー」というものがあります。
https://www.valuetrust.net/tool/ctcc.htmこれは信託報酬が高いファンドから信託報酬が低いファンドに乗り換える際、乗り換えから何年後に得をするかということを自分で検証できるツールです。
ただし、実質コストではなく信託報酬で比較する仕様ですので、実質コストを自分で入力する必要があります。
収益率5%、乗り換え元信託報酬0.235%(たわら先進国株の税抜トータルコスト)、乗り換え先信託報酬0.196%(スリム先進国株の税抜トータルコスト)で試算します。
含み益5% 3年で逆転
含み益10% 36年で逆転
含み益11% 42年で逆転
含み益12% 46年で逆転
含み益13% 50年後も逆転せず
このように、超低コスト
投信から超低コスト
投信(今回のコスト差は0.039%)は、含み益に対する課税コストを考慮すると得をしないことが分かります。
ただし、野村つみたて外国株
投信であれば話は少し異なります。
もし野村つみたて外国株
投信の信託報酬が税抜0.1095%(スリム先進国株と同額)まで下がると、税抜トータルコストは0.148%となります。
含み益10% 1年で逆転
含み益15% 13年で逆転
含み益20% 26年で逆転
含み益25% 36年で逆転
含み益30% 45年で逆転
含み益35% 50年後も逆転せず
含み益が15%以下であれば乗り換えようという気になれますね。
このように、たわら先進国株からスリム先進国株への乗り換えは、信託報酬差(0.09%)がトータルコスト差(0.039%)で縮まることから、含み益が15%を超えるとそれほど得はしないことが分かります。
とはいえ、不要になったファンドをいつまでも保有するのもストレスになります。
そこで、源泉税が数万円程度であれば売却して新ファンドに乗り換え、すっきりするというのも一つのやり方です。
ただ、私の場合は、VTをSBI証券に移管し、VTの分配金とたわら先進国株の譲渡損を損益通算するという方法が使えます(特定口座口座であれば自動処理してくれます)。
例えば、VTを1000万円保有していると、その分配金は20万円です。
VTは3か月に1回、分配金を出しますので、源泉徴収後の分配金の金額を見ながらたわら先進国株を売却し、同日、スリム先進国株を楽天証券で買うわけです。
VTの分配金は1年で20万円ですから、たわら先進国株の含み益が30%のときは、1年で86万円分のたわら先進国株を売却することができます(66万円の30%は19万8000円。66万円+19万8000円=86万円)。
しかし、他方で、私は、今年、VTの分配金を配当所得(総合課税)として確定申告し、事業所得の赤字と損益通算することで、VTの分配金の源泉税をほぼ全額の還付を受けることができました。
こういうことをいろいろと考えると、私の場合は、VTはマネックス証券のまま、たわら先進国株はホールドしたままでよいかなと思っています。
コメント
No title
自分としては、「不要になったファンドをいつまでも保有するのもストレスになる。」がまさに意をついていますw
自分の場合、まだ積立を始めたばかりで含み損は数百円ですので、思い立った時にスッキリしたいと思います。
いずれ保有額が多くなった時にまたこちらを参考にさせてもらう機会あるかもしれません。
その時はよろしくお願いしますm(__)m
2018/03/11 06:32 by yuma URL 編集
No title
2018/03/11 08:12 by 誤字 URL 編集
No title
>自分の場合、まだ積立を始めたばかりで含み損は数百円ですので、思い立った時にスッキリしたいと思います。
私も、2015年に個別株とSMTグロ株、セゾングロバラを売却した際、かなりの利益を確定させました。
しかし、その後に投資したたわら先進国株の含み益が現在30%ですので、あの時、税負担としてでも乗り換えてよかったと思っています。
何より、不要なファンドの管理をしないで済むという気持ちの問題が大きかったです。
また何かご質問等があればご連絡ください。
>が多い気が
訂正しました。
ありがとうございました。
2018/03/11 08:28 by たわら男爵 URL 編集
No title
配当や株式等譲渡所得の税率を上げる税制改正が検討されているというような記事を見かけました。
税率20%の間に、含み益を少し確定させておいた方がいいのかという気もしますが、どのようにお考えですか。
2018/03/11 19:10 by URL 編集
No title
>税率20%の間に、含み益を少し確定させておいた方がいいのかという気もしますが、どのようにお考えですか。
税率のアップが決まった段階で検討しても遅くはないことから、その時点で検討したいと考えています。
まだ税率アップ自体がなされるかどうかも不明確ですし。
なお、10%から20%への税率アップ時は、私は含み損でしたので、そのようなことを考える余裕はありませんでした。
2018/03/11 22:36 by たわら男爵 URL 編集
No title
少し理解できなかった部分があるので、教えていただけると助かります。
>>VTの分配金とたわら先進国株の譲渡益を損益通算するという方法が使えます
損益通算はVTの分配金に課税される部分を投信の含み損になっているものを意図的に売却して、分配金の課税を繰り延べする方法だと理解していたのですが、間違っていますでしょうか?
2018/03/11 23:15 by だるっち URL 編集
No title
たわら先進国株の譲渡益ではなく、譲渡損の誤記でした。
失礼いたしました。
2018/03/12 00:02 by たわら男爵 URL 編集
No title
ありがとうございます。
2018/03/12 20:30 by だるっち URL 編集