eMAXIS Slim全世界株vsVT

VT

バンガード社の日本における看板商品であり、インデックスファンドのリーサルウェポンと呼ばれる米国ETFです。
経費率は0.11%。
全世界の大中小株を投資対象とし、これ1本買っておけば全ての悩みから解脱できます。
FOYでも常にトップ10にランクインし、FOY2017では、VTを買うだけファンドである楽天全世界株が初登場1位を獲得し、投信ブロガーから熱烈な支持を得ていることを改めて見せつけてくれました。

しかし、他方で、最近は三重課税コスト問題が指摘されるようになりました。

●【FOY記念】eMAXIS Slim全世界株vs楽天全世界株
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-740.html#more

この記事で分析したとおり、楽天全世界株は運用会社の運用能力が未知数であり、思わぬコスト高になるリスクがあります。
そこで、今回は、本家本元のVTと比較してみます。


※よろしければ、次の記事もご覧ください。

●楽天VTIが50億円を突破し、iFreeSP500の2倍に
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-744.html#more

●【追記あり】ヤマゲン先生、スリム派に転向
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-743.html#more

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まずは、eMAXIS Slim全世界株です。

トータルコスト 税込0.226144%(投信保有ポイント考慮前)
【内訳】
●信託報酬 税抜0.1225%(税込0.1323%)
計算式:0.159×10%=0.0159、0.1095×80%=0.0876、0.19×10%=0.019
●運用コスト 0.093844%
計算式:0.006×10%=0.0006、0.094×80%=0.0752、0.18044%×10%=0.018044

※eMAXIS Slim全世界株とは、eMAXIS Slim先進国株80、eMAXIS Slim新興国株10、eMAXIS Slim国内株10の配分比で自作したもの。
松井証券でこの配分比を「目標ポートフォリオ」に設定し、リバランス積立及び自動リバランスサービスを利用すると簡単に自作することができます。
また、この配分比で積立買付し、年に1回、リバランスをすれば、どの証券会社でも自作することができます。自動リバランスサービスがSBI証券で実装されれば非常に便利ですので、SBI証券は真剣に検討してほしいです。
詳細は、次の各記事をご覧ください。

●「スリム全世界株リバランス積立」の活用方法
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-725.html#more
●自動リバランスサービスの実装を求む
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-727.html#more


つぎに、VTです。

トータルコスト 0.22704%
【内訳】
●経費率 0.11%
●三重課税コスト(推定値)0.11704%

※VTは米国ETFであり、「経費率」は信託報酬を含む実質コストを指す。
VTの信託報酬(Management Fees)は0.09%、運用コスト(Other Expenses)は0.02%であり、トータルコスト(Total Annual Fund Operating Expenses)は0.11%となる(下記リンク先3頁)。
https://personal.vanguard.com/pub/Pdf/p3141.pdf#search=%27Vanguard+Total+World+Stock+ETF+Prospectus%27
また、VTのインデックスファンドであるVTWSXの信託報酬は0.17%、運用コストは0.04%、トータルコストは0.21%である(下記リンク先2頁)。
https://www.vanguard.com/pub/Pdf/sp628.pdf#search=%27Vanguard++Prospectus+VTWSX%27

※三重課税コスト
三重課税コストとは、ファンドが保有する株式の配当金について、
(1)投資信託 現地国、日本の二重課税
(2)米国ETF 現地国、アメリカ、日本の三重課税
というように、米国ETFはアメリカが10%の源泉税を徴収するというものである。
現地国の税率は10%であることが多く、アメリカは残りの配当金(90%)に10%の源泉税を徴収するため、配当金の9%がアメリカに奪われる。
ファンドが保有株の配当金を受け入れる際、原則としてその10%が保有株の所属国(現地国)によって課税されるが、保有株がファンドと同じ国籍の時はファンド受入時には課税されず、ファンドが顧客に分配金を出した時点で初めて課税される。
この例外が適用されるのは、日本の投資信託であれば日本株、米国ETFであれば米国株となる。
ファンドが分配金を出したとき、日本の投資信託は、日本株は日本国の一重課税、日本株以外は現地国・日本国の二重課税であり、米国ETFは、米国株は米国・日本国の二重課税であるが、米国株以外は現地国・米国・日本国の三重課税となる。
配当金が100あったとして、
(1)投資信託 現地国9(投資信託の現地国である日本株の1を除いたもの)、ファンド受入額91
(2)米国ETF
うちアメリカ株(VTは52%) 現地国(アメリカ)5.2、ファンド受入額46.8
うちアメリカ株以外(VTは48%) 現地国4.8、アメリカ4.32、ファンド受入額38.88
となるため、この差額5.32%(91-46.8-38.88)が三重課税コスト(米国ETFではなく投資信託であれば払わずに済んだコスト)となる。
ここで「ファンド受入額」と記載したが、これは便宜上の表現である。投資信託は文字どおりファンドの純資産額に上積みされ、顧客にとっては含み益の一部となり、売却時に譲渡所得として日本国によって課税されるが、米国ETFはそのまま顧客に分配されるため、分配時に配当所得として日本国によって課税され、その際、20.315%が日本国によって源泉徴収される。
無分配の投資信託であれば、米国ETFと異なり、保有株の配当金を顧客に分配して20.315%を徴収されることなく、この20.315%相当額もファンド内で運用し、その運用利益を顧客に渡すことができるため、その分、リターンが向上する(課税の繰り延べ効果)。
VTの配当利回りは2.20%であるため(マネックス証券「米国株源泉銘柄レポートBOOK2017年冬号」54頁)、三重課税コストは0.11704%(2.2×5.32%)と推定される。
もっとも、この推定は、米国株とそれ以外の地域の構成株の配当利回りが同率であることを前提とするものであるため、あくまで参考値にすぎないことに注意されたい(一般に新興国株のほうが配当利回りが高いことから、三重課税コストが0.11704%を超える可能性がある)。


両者の差 0.000896%(1000万円あたり89.6円)

ついに日本の投資信託がトータルコストでVTを若干ながらも下回りました。感慨深いものがあります。

両者は若干の差異はあるものの、ほぼ同コストといえることから、分配金を出し、その20.315%(正確には、アメリカ税引き後の20.315%となるため、0.9×20.315%=18.2835%)が源泉徴収されるVTのほうが不利になります。
具体的には、VTの配当利回りは年2.20%ですから、その18.2835%は0.402237%となるため、VTを買うと、毎年、保有残高の0.402237%を日本国に税金として差し出さなければなりません。

そこで、本題です。


いつも勉強させていただいています。
お時間がありましたら、eMAXIS Slim全世界株 vs VT の検証をお願いできないでしょうか?
過去の記事から、たわら全世界株 vs VTよりさらに有利になると予想しており、今後の追加投資はeMAXIS Slim全世界株にするつもりですが、現在所有しているVTにかなりの含み益があり、売却してまでeMAXIS Slim全世界株に乗り換えるべきか悩み中です。
よろしくお願いします。


質問者のVTの含み益がどの程度かが分かりませんので、私のVTで考えてみます。

私のVTの含み益は、現在、22.63%です。
VTの保有残高を仮に1226万3000円とすると、226万3000円の含み益があるわけです。
もしこの瞬間に売却すると、226万3000円の20.315%(45万9728円)が譲渡所得税として源泉徴収されます。これは保有高の4.5972%です。
他方で、前述したとおり、分配金によって、毎年、保有残高の0.402237%を日本国に税金として差し出さなければなりませんので、上記のケースでは4万9326円となります。

上記のケースにおいて、VTを売却してeMAXIS Slim全世界株を購入するということは、最初に45万9728円を支払って、その後、毎年4万9326円ずつのコストを減らすことを意味します。
45万9728円÷4万9326円=9.32年だから、9年4か月で得をするということではありません。なぜなら、最初に失った45万9728円は、もしVTのまま運用していたら年5%前後の期待リターンを発生させたはずだからです。
45万9728円の5%は2万2986円ですから、売却によって減らすことができる本当のコストは2万6340円(4万9326円-2万2986円)となります。毎年2万6340円ずつ節約し、最初の45万9728円を取り戻すには17.45年もかかります。

しかし、これも正確ではありません。
なぜなら、上記の4万9326円は課税が繰り延べられただけであり、含み益の一部になりますので、将来的に売却した際には課税されてしまうからです。
そのため、正確には、減らすことができるコストは4万9326円ではなく、4万9326円の運用利益となり、期待リターンを5%とすると2466円にすぎません。

売却しなければ2万2986円(45万9728円の5%)の運用利益が手に入るのに、売却すると2466円(4万9326円の5%)の運用利益しか手に入らないわけですから、損をします。

このように、既に相当額の含み益があるときは、含み益が多額であればあるほど、売却を伴う乗り換えをすると損をする可能性が高まります。

また、米国ETFの分配金は、配当所得(総合課税)として確定申告すると、事業所得の赤字と損益通算することができ、さらに各種控除を差し引くことができ、無職者や低所得者であるほど得をします。

●米国ETFの分配金を確定申告してみます
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-733.html#more

このような理由で、私は、VTは売却せずに温存し、分配金を配当所得(総合課税)として確定申告し、住民税は申告不要制度を利用する予定です。

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コメント

No title

たわら男爵様
初めてコメントいたします。男爵様の鋭い記事を毎日楽しみにしています。
松井証券のリバランス積み立てを利用したslim世界株のメリットについて教えてください。
私の理解ではリバランス積み立ては設定した割合になるように買い付けのみで調整する機能です。
この場合、たとえば先進国:新興国:日本の割合が80:10:10から「ある年」突然70:20:10になった場合でも全体の比率が80:10:10にリバランスされますよね。
これと比較してSBI証券で毎日80:10:10で買い付けしていた場合「ある年」突然70:20:10になった場合はすでに投資済みの部分が70:20:10になり、そこに毎日80:10:10の積立が乗るだけですので、全体としては本来の比率である70:20:10に近づきます。
つまり、SBIで固定割合積み立てを行った場合の方が、実際の時価総額比に近づくと思われるのですがいかがでしょうか?自動リバランス積み立ては時価総額比から設定割合へとずらしてしまうだけで、メリットがないように思いました。
もちろん、時価総額比にそれほどこだわる必要がないことは理解していますが、そうであるならば自動リバランスにこだわる必要もそれほどないのではと感じた次第です。
どうぞよろしくお願い致します。

No title

コメントありがとうございます。

私が数パーセント単位の時価総額比ではなく、80:10:10の時価総額比っぽい配分比にしているのは、リバランスボーナスのためです。

リバランスは高いものを売って安いものを買うことですが、高いものは値下がりの余地が大きく、安いものは値上がりの余地が大きいことから、リバランスをすると配分比の維持+アルファの利益を得ることができます。

しかし、これは逆ハリ投資ですから、心理的な抵抗があります。
グングン上がっているもの売って冴えないものを買うわけですから、もう少しもう少しと考えているうちに、高かったものは下がり、安かったものは上がってしまう可能性があります。

そのため、年に1回、自動でリバランスしてくれるサービスがあると便利であり、SBI証券が実装してくれないかなと思っています。

No title

検証ありがとうございました。

VTの含み益は、シュミレーションして頂いた数値より大きいため、売却せずにホールドし、追加投資分のみ、eMAXIS Slim全世界株の購入していく事に納得がいきました。

VTを買わない方がコストが低いなんて、数年前には考えられない、すごい時代ですね。

No title

参考にしていただけて、よかったです。
またご質問があればご連絡ください。

No title

たわら男爵様
ご回答ありがとうございました。
なるほど、リバランスボーナスを狙ってのものでしたか。納得いたしました。
確かに、安くなった資産を毎日買い増ししてもらうととても嬉しいですね。
私もSBI証券に実装してほしくなりました。

No title

コメントありがとうございます。

>私もSBI証券に実装してほしくなりました。

ぜひ要望してください。
要望が多くなればSBI証券も動くかもしれません。

また何かご質問があればご連絡ください。

スリム全世界株の異様さ

eMAXIS Slimの3ファンドを用いた「全世界株式」には、ベンチマークがありませんね。
時価総額配分の良さを分かった上で全世界株式の戦略をとることは、合理的な投資戦略であることは同意します。
FTSEグローバルをベンチマークとした楽天・全世界株式やACWIベンチマークののステートストリート全世界株式とは、
明らかに一線を画すポートフォリオになっていることは、お気づきになられているのでしょうか。
1:8:1のポートフォリオは、確かに「国別」時価総額では問題ないと思います。
ところが、銘柄数では、異様な様相となります。
eMAXIS全世界株式が日本を含めなかった(含むことができなかった)のは、ベンチマークが存在しなかったからです。
ACWIの日本株式部分もFTSEの日本株式部分も日本の投信には、指標がありません。
MSCI-kokusai 1347銘柄+MSCI エマージング・マーケット 857銘柄+TOPIX 2035銘柄 で
全4239銘柄のうち、日本株式が48%と約半分は日本株式となります。一覧表にするとわかるのですが、
上位はともかく、下3分の2は、日本株式だらけで、気持ち悪くなります。
山崎氏が推奨したように、日本株と外国株を半々か4:6で保持するなら、それでもいいのでしょうが、
全世界分散なら、意味のある指数を用いたほうがバランスがよろしいのではないでしょうか。
MSCI Japan320銘柄が日本株式となっています。このあたりが、バランス的にはベストでしょうね。
MSCI の指数は市場の85%~90%をカバーする大・中型株を基準に算出されているので、2000超のTOPIXでは、違和感がありますね。
国別配分では問題なさそうに見えますが、スリム全世界株は、全世界株式に、EXE-i中小型株式(日本のみ)を加えたような
変な偏りがあるのではないでしょうか。
国別の時価総額を押さえておけばいいではないかという考えならそれでいいと思いますが、
単なる国別時価総額比であり、内容を伴った時価総額比とは言えないですね。
野村が、野村つみたて外国株投信+TOPIXで「全世界株」にしなかった理由もここにありますね。
野村つみたて日本株投信は、仕方なく、日経平均を採用して銘柄数を調整したものと考えられます。
(日経平均は、銘柄数こそ絞り込まれているものの、投資指標にできるような代物だとは、山崎氏もよく言われるところです)
山崎氏が、TOPIX:MCSI-kokusaiなら4:6、ご自分で購入されたときはFTSEグローバルの全世界株式時価総額比としたことは、
実は、すごいことなのだなと再考しました。

投資信託やETFは、指数の持つ意味と運用の質の両面を考えていかないと、コスト計算だけでは、図れないものがあると考えます。

SMT→eMAXIS→インデックスe→ニッセイ→たわら→(楽天)→eMAXIS Slim・・・
これだけではありませんね。リート、現物株、米国株、新興国、日本小型株式への偏重やポートフォリオのぶれ・・・
一括か積立か、非課税枠をどうするか、バランスファンド、直販型、国内ETFは、海外ETFは、高配当戦略は・・・

次々に流行りのファンドが変遷する現状は、とても長期に保持することができる環境ではないですね。
おまけに資産種や投資法、投資先、様々な余計なことをしてしまう要素が多すぎますね。
銀行の特定口座で、何も考えずにSMTグローバル株式だけを積立設定し、忘れていたおばあちゃんに、
最終的には、いろいろな意味で負けそうな気がします。

No title

コメントありがとうございます。

>eMAXIS Slimの3ファンドを用いた「全世界株式」には、ベンチマークがありませんね。

もしこの配分比の合成ベンチマークのスリム全世界株ファンドが新規設定されれば、つみたてNISAのインデックスファンドに採用されるでしょう。

>MSCI-kokusai 1347銘柄+MSCI エマージング・マーケット 857銘柄+TOPIX 2035銘柄で全4239銘柄のうち、日本株式が48%と約半分は日本株式となります。下3分の2は日本株式だらけで気持ち悪くなります。

ごめんなさい。その感覚を共有できません。
銘柄数が増えてまずいことが何かあるのでしょうか?

>単なる国別時価総額比であり、内容を伴った時価総額比とは言えないですね。

時価総額比というのはそういうものだと思います。
TOPIXは時価総額比の指数ですから、TOPIXを10%混ぜれば、時価総額比の全世界株ファンドを自作できると考えます。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は、たわら先進国株(楽天証券)とVT(マネックス証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)はeMAXIS Slim先進国株を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資はeMAXIS Slim先進国株を毎月5万円購入。
●松井証券で「Slim全世界株リバランス積立」の毎営業日1万円投資を実行中。
●楽天証券で「たわら男爵15種」の毎月2回100円投資を実行中。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、大和証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

パソコン版右端の「ブログ記事検索」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
●カテゴリ「この投資信託がすごい」では、ベストバイファンドの具体名を明示しています。
●カテゴリ「インデックスファンドの基礎知識」を読めば、誰でも簡単に投資信託の必須知識を得ることができます。

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