バランスファンドは自動ナンピンシステムである

山崎元先生が「初心者向きはウソ。バランスファンドの7つの注意点」というコラムを公開しています。
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/10392

この中から重要な個所を抜き出してみます。


今日、個人投資家の立場でバランスファンドについて考えると、正直、バランスファンドは個人投資家にとって良い運用対象だと思えない。

バランスファンドは初心者向けだという意見がある。
中身を把握して運用するにはバランスファンドではなく個別の資産に投資するファンドに自分で金額を決めて投資するほうが良い。また、中身が把握できていない状態で漠然とバランスファンドに投資することがいいとは思えない。初心者だからといって、投資家を馬鹿にしてはいけない。

「固定比率のバランスファンド(たとえば8資産の比率を固定するようなもの)ならいいのではないか」と立論することがある。
債券部分の運用に関しても手数料を払うのは余計ではないか。

バランスファンドは株式100%のファンドよりもリターンの変動がマイルドであることが多いので、保有している人から見て精神的に楽であることは多いだろう。
現在のような長期国債利回りがゼロに貼り付いた状態では、資産として債券を保有する意味が疑わしい。将来金融政策が正常化されて長期国債の利回りが上昇するときに大きく値下がりすることが避けられない一方、現在の期待利回りはゼロである。

近年、バランスファンドであっても手数料の低廉な商品が出て来ているが、バランスファンドの場合、「債券部分の運用にも、それなりの手数料を払っている」ことになるような無駄が生じている。

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山崎先生は、最後に次のように述べます。

特に、FP(ファイナンシャル・プランナー)のような他人にアドバイスをする職業の人には気を付けて欲しい。「素人にすすめやすいから」とか「私は好きだから」といった不適切な理由で、アドバイスの内容が左右されるようでは、正しいプロフェッショナルとは言えない。

ところで、バランスファンドの積立買付を勧めているFPといえば、カン・チュンドさんです。
カンさんは「ラクして増やそう!バラつみ投資」というタイトルの電子書籍を出版しており、バランスファンドを利用した資産形成を強力に推奨しています。

しかし、カンさんのブログを読んでも、なぜバランスファンドを利用した資産形成が優れているのかについて、理論的な根拠を説明した箇所がありません。
探したところ、次の記載を発見することができました。

とにかく楽!投資にかける時間がほとんどゼロになります。
http://tohshi.blog61.fc2.com/category38-5.html#no1859

投資の初心者は、いちばん最初は、債券ファンドやバランスファンドを『はじめの道具』として、選択されたほうがよいと思います。
なぜなら、やみくもにリターンを狙うよりリスクを抑える(分散する)ことに重きを置いている道具だからです。(※ 致命的な打撃を受けにくい・・)
http://tohshi.blog61.fc2.com/blog-category-38.html#no2509

債券ファンドについて、こんなことを言っている人がいます。

債券ファンドとはどういうものかというと、年限(満期までの長さ)やリスクの異なる債券を組み合わせてポートフォリオを組んだものです。たとえば、10年債(満期まで10年の債券)が2%、20年債(満期まで20年の債券)が3%、30年債(満期まで30年の債券)が4%の金利の時にこれらをミックスしたポートフォリオを組みます。
30年債だけに投資すれば4%で回せるのにそれぞれの年限をミックスするのが投資信託なのです。
ファンドはたくさんの債券を保有しています。それぞれの債券は「満期と金利」が決まっており、満期までの間、決まった金利を受け取れるのは前述の通りです。しかし、ファンドは毎日、保有している債券について、「もし、今、市場で売ったとしたらいくらになるか」という数字を発表しなければなりません。実際には売らないけれども、売った場合の価格を時価評価額として発表しなければならないのです。この価格がダダ下がりだと非常に格好が悪く、場合によってはファンド・マネージャーの出世に響きます。そこで、あらゆる場合に備えて、年限の違う債券に分散投資するのです。
ファンド・マネージャーは投資家の解約にも備える必要があります。なので、現金も準備しておかなくてはいけません。もしくは超短期の、金利のほとんど付かない債券(=価格変動リスクが非常にわずか)にも投資しておく必要があって、保有債券の平均利回りは恐ろしく低いのです。
http://diamond.jp/articles/-/13806?page=2

みずほ総合研究所は、2016年6月、「国内債券への投資意義を考える」というレポートを出しています。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/sl_info/pension/pdf/pension_news201606.pdf#search=%27%E5%82%B5%E5%88%B8%E6%8A%95%E8%B3%87+%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%27

国内債券の期待収益率がマイナスであるにも拘わらず、最適ポートフォリオにおいては、国内債券割合が5割を超える結果となっているのは、他資産に比べて低いリスク(標準偏差)と他資産との負の相関関係によるものである。
株価下落局面に限定してみた場合には、2013年5-6月のいわゆるバーナンキショックを除くと、債券価格と株式との間の負の相関関係は概ね維持されていることが観察される。
これは、株式の下落局面において、「質への逃避」が起きることに起因するものと考えられる。

これを一言で説明すると、株価が下落すると、株式が叩き売られて、その資金で債券が買われるから、債券の価格が上昇するという意味です。

つまり、バランスファンドの意義は、株価の下落局面において、価値が高くなった債券を売り、その金で価値が低くなった株式を買い増しすることで、将来の株価の上昇に備えた仕込みを自動的にしてくれる点にあることになります。

とはいえ、株価の下落局面が到来しなければ、バランスファンドの債券部分は信託報酬の無駄遣いです。
また、山崎先生が指摘するとおり、債券には将来の利上げによって暴落するリスクがあります。未来永劫、現在のようなマイナス金利政策を維持することはできませんので、いつかの時点で必ず利上げがなされます。その時点で債券ファンドの価格は暴落しますが、問題は、その時点がいつかは国の金融政策に完全に左右されており、我々には全く予測することができないという点です。

私は、リスク資産を多めにバランスファンドに投じるよりは、リスク資産は株式100%にし、その分、無リスク資産を多めに持っておくほうが好きです。
現預金(個人向け国債を含む)は、債券投資と異なり、絶対に元本割れをしません。もっとも、インフレには弱いですが、それは債券投資をしていても同じです。

バランスファンドを買う人は、「自動ナンピンシステムに信託報酬を支払うべきか」という実に高度な投資判断をしていることになるのですが、そのことを分かって資金を投じている人は極めて少数でしょうし、初心者は皆無といってよいでしょう。

投資をしないよりしたほうが儲かることは確実ですから、初心者に対し、とりあえずバランスファンドを勧めるというのも一つの方法です。
しかし、現在は歴史的な超低金利時代であり、将来必ず到来する利上げによって債券ファンドは確実に暴落しますが、そのことを十分に理解している人はもはや初心者とはいえません。

その意味で、初心者にバランスファンドを勧めるカンさんと、カンさんに対して「そんな奴はプロではない」と強烈な非難をする山崎先生のどちらが正しいかといえば、私は山崎先生が正しいと考えます。

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コメント

いつも楽しみに拝見いたしております。
丁度、外株7日本国債3の手動リバランスから、emaxisスリム8資産均等に変更しようかと悩んでいた私にはタイムリーな話題でした。
その判断の確認の意味でも、お考えを教えていただけたら幸いです。

現金を幾ら持っているべきか、今はその現金をリスク資産に投入すべきか否か、と言う判断を自信を持って出来ない人を初心者と言うならば、債券を混ぜてリスクを下げたバランスファンドを選ぶ事には意味が有るのではないでしょうか。
別の言い方ですと、将来的にプラスとなるタイミングで追加資金を投入するのでなければ、期待リターンを上げつつシャープレシオが高いアセットアロケーションとすることが、将来の収益の最頻値を上げることに繋がるのだと理解していましたが、あっていますでしょうか?

今後値下がりする事がわかっている日本債券部分にも手数料を払っているのは釈然としない気もしますが、暴落時に躊躇なく資金投入やリバランスを実行するには、バランスファンドや自動リバランスのようなシステム化が一番のように思いました。

No title

コメントありがとうございます。

>債券を混ぜてリスクを下げたバランスファンドを選ぶ事には意味が有るのではないでしょうか。

山崎先生も指摘していますが、債券を混ぜたことでリスクが幾らに減ったのかを計算できる人は初心者とはいえないと思います。

超低金利の下では、債券を含めることで、むしろリスクを呼び込むことになるということなんでしょうね。

>期待リターンを上げつつシャープレシオが高いアセットアロケーションとすることが、将来の収益の最頻値を上げることに繋がるのだと理解していました

この理解で正しいと思いますが、債券投資による過去のリターンは現在の超低金利を想定していません。
これまでの過去リターンを信じて初心者が何も考えずに債券を混ぜたバランスファンドを保有していいのかというのが山崎先生の根源的な疑問なのだろうと思いました。

>外株7日本国債3の手動リバランスから、emaxisスリム8資産均等に変更しようかと悩んでいた私にはタイムリーな話題でした。

私ならどうするかを少し考えてみます。

お返事頂けて嬉しいです。

国内債券ファンドは今後の値下がりが確実なので、過去のデータ通りにはいかないと言うのは納得です。
八資産均等も、新興国やリートはこれまでが良すぎたのではないかとも思ったりもし。。
そのような余計な相場観を入れない為の等分配なのですが(笑)

もしよろしければ、お考えいただけた結果を記事かコメントで教えていただければ参考にさせていただきたく思います。

No title

コメントありがとうございます。

>お考えいただけた結果を記事かコメントで教えていただければ参考にさせていただきたく思います。

もう少しお待ちください。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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