まず、VTIよりもVTを選択すべきです。
その理由は単純です。アメリカ一国に集中するよりも、広く分散すべきだからです。
たしかに、上記のブログでは、世界分散よりもアメリカ一国集中を勧めています。
なぜなら、彼らはアメリカ株のブロガーだからです。アメリカ株に集中させるほうが儲かると思ってブログを書いているわけですから、読者に対し、アメリカ株を勧めるのは当たり前です。
しかし、マルキール先生は次のように述べます。
もちろん、VTIだけでも、かなりの分散投資になっている。GEやコカ・コーラ社に代表されるアメリカの多国籍企業が、事業の大きな部分を国際的に展開しているからだ。
しかし、中国、インド、ブラジルをはじめ多くの新興国経済は、先進国よりも遥かに高い経済成長を続けている。中国を例にとれば、新興国と呼ばれているが、すでにアメリカに次ぐ世界第二の経済大国に成長しており、IMFによれば、今後も当分の間、高い成長が持続する見通しである。
(「ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版」476~477頁)
S&P500平均だけに投資した場合は、2000年代最初の10年間はマイナスのリターンに終わった。
しかし、同じ期間に新興国株式に幅広く分散投資する
インデックス・ファンドに投資した場合は、申し分のない高いリターンを上げることができた。
(同書261~262頁)
なぜアメリカの平均ではダメで、世界の平均を求める必要があるのかというと、私は、世界経済の持続的な発展は確信することができますが、アメリカ経済の持続的な発展は確信することはできないからです。
そもそも、
インデックス投資とは、指数の期待リターンを得ることです。
【参考記事】
●
インデックス投資の目的は期待リターンを得ること
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-328.html上記参考記事では、JPモルガンのレポートをご紹介しています。
それによると、期待リターンは次のとおりです。
アメリカ大型株 5.25
アメリカ小型株 6.0
英国大型株 6.5
欧州大型株 6.0
先進国株 5.50
先進国株(除く日本)5.50
世界株 5.75
世界株(除く日本)5.75
新興国株 8.25
これを見ると、当たり前ですが、アメリカ一国集中すれば劇的に儲かるというものではないことが分かります。
そうであれば、全資産をアメリカ一国に集中投下し、アメリカと一蓮托生になるよりは、全世界に広範に分散させるべきです。
しかし、VTには三重課税コスト問題があります。
そのため、楽天全世界株の推定コストは低額とは言えません。
●楽天全世界株
税込0.3996%(
投信保有ポイント考慮前)
【内訳】
信託報酬 税込0.1296%
運用コスト(推定値)0.05%
VTの経費率 0.11%
三重課税コスト(推定値)0.11%
また、三重課税コストを除いても、バンガード社のVTWSXと比較すると高いです。
●VTWSX
「Management Fees」 0.17%
「Other Expenses」 0.04%
「Total Annual Fund Operating Expenses」 0.21%
【参考記事】
●VTの
インデックスファンド(VTWSX)の実質コストは0.21%だった
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-454.htmlVTWSXの信託報酬はVTの経費率+0.06%ですが、楽天全世界株はVTを買うだけのファンドであることから、その信託報酬はVTの経費率+0.1296%です。
つまり、楽天全世界株もVTWSXも投資対象は同じなのに、楽天全世界株は2倍以上の高いコストを支払わなければなりません。日本がバンガード社の直販対象地域でない以上、仕方ないといえば仕方ないことなのですが、私は、こういうことが結構気になる性格です。
※VTIの
インデックスファンドはVTSAXですが、そのトータルコストは驚きの0.04%です。
https://personal.vanguard.com/us/funds/snapshot?FundId=0585&FundIntExt=INT#tab=3楽天全米株の推定トータルコストは0.2196%ですから、実に5倍以上の高コストとなります。
楽天全米株はiFreeSP500よりもいいファンドだと思いますし、米国株に投資したいのであればベストバイファンドだと思いますが、私は、やはりこういうことが結構気になります。
●この
投資信託がすごい(2017年9月、全世界株編)
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-567.html#moreこの記事でもお伝えしたとおり、コストの観点からは、初めてETFを買うだけのファンドを立ち上げる楽天
投信投資顧問の運用能力よりも巨大なマザーファンドを買うだけの野村アセットマネジメントの運用能力のほうが信頼できますし(しかも野村アセットマネジメントの運用能力はFunds-iシリーズで実証されています)、アメリカを通さない野村つみたて外国株
投信には三重課税コストはかかりません。
というわけで、楽天全米株と楽天全世界株の2本からしか選べないとしたら、私は、マルキール先生に従い、楽天全世界株を選択します。
しかし、VTWSXの2倍以上のコストがかかる点は気になりますし、三重課税コストの負担は軽視できません。
これらを考えると、構成銘柄数はVTの28%にすぎませんが、私は、野村つみたて外国株
投信を買いたいです。
コメント
No title
早速のご回答、誠にありがとうございます。
大変参考になりました。
自分には、米国集中よりも、世界分散の方が性格的にあっています。
また、
現在、楽天証券で積み立てている
三井住友・DCつみたてNISA・全海外株式インデックスファンドの 実質コストが税込0.354%、で
楽天全世界株の予想実質コストが税込0.3996%
であるということで、コスト的にはほぼ同じなんだなということもわかりました。
男爵様の益々のご活躍を祈念しております。
2017/10/08 21:58 by 鹿島 URL 編集
No title
RV世界株の実質コストの高さは、確かに馬鹿になりません。
3重コストは大きな問題です。
たわら男爵さんのように野村つみたて外国株投信を購入するのが最良の選択なのかもしれません。
しかし、日本株も含めた全世界の株式に1つの商品で投資できる魅力が捨てられず、私はRV世界株を積立NISAで積み立てる予定です。
でも、0.4%のコストがかかることは忘れないようにするつもりです。
2017/10/08 22:05 by 旅するインデックス投資家 URL 編集
No title
また、VTIのミューチュアルファンドには複数あり
VTSAXはAdmiral Sharesといって最低投資額が1万ドルとなっています
それ以下ですとInvestor SharesというシェアクラスのVTSMXとなりこちらは経費率は0.15%です(一括投資の場合3000ドル以上となっています)
また500万ドル以上の年金機関向けですとInstitutionalクラスとなり(VITSX)経費率は0.035%、1億ドル以上のInstitutional Plusクラスとなり(VSMPX)0.02%まで低下します
InstitutionalクラスにはVTと同じものもありこちらはVTWIXといって経費率は0.1%となっています
500万ドルですと日本円にして5.6億円くらいですから案外手が届きそうな気もしますが、ETFと違って基準価額の反映に一日余計にかかりますのであまり現実的ではないかもしれません。
セゾン・バンガードがミューチュアルファンドを使ったFoFですがやはり二日遅れて価額が変動していますね
2017/10/09 09:49 by URL 編集
No title
>早速のご回答、誠にありがとうございます。
参考にしていただけて、よかったです。
また何かご不明な点があればご質問ください。
>日本株も含めた全世界の株式に1つの商品で投資できる魅力が捨てられず、私はRV世界株を積立NISAで積み立てる予定です。
楽天全世界株も良い商品であることは間違いないと思います。
ただ、楽天投信投資顧問の運用能力が未知数であるのが不安な点です。
>VTのミューチュアルファンドはVTWSXです。記事中に混同されているところが見受けられます。
誤記していましたね。ご指摘ありがとうございます。
>VTIのミューチュアルファンドには複数あり
これは知りませんでした。
具体的に教えていただき、ありがとうございます。
1万ドル以上で0.04%であれば、それほど資金的なハードルが高くありませんので、ますます日米のコスト格差が気になります。
2017/10/09 19:32 by たわら男爵 URL 編集
No title
質問があるのですが、VTやVTIなどのETFでは配当がありますが、楽天のファンドの場合配当は出していません。
ETFから出た配当金を楽天側は受け取ると思いますが、その場合ファンドの基準価格は配当金分上がるのでしょうか。
2017/10/09 19:49 by URL 編集
No title
>ETFから出た配当金を楽天側は受け取ると思いますが、その場合ファンドの基準価格は配当金分上がるのでしょうか。
そのとおりです。
分配金(課税後)の分だけ基準価額が上がります。
2017/10/09 20:56 by たわら男爵 URL 編集