外株のバイアンドホールドには為替リスクはない(続)

以前、「株に為替リスクはない」との記事を書いたところ、下記の質問をいただきました。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-23.html

はじめまして。いつも拝見させていただき勉強しております。
おかげさまでインデックス投資を始めまして、最近は投資範囲として米国にどこまで重点を置くかという点で日々思案しております。基本的には米国株式中心でと考えているのですが、その際の為替リスクについて、どう考えるべきか未だ論を持てずにおり、大変興味深く記事を拝見させて頂いておりました。
記事の中で株に為替リスクは無いというご意見がありましたが、その点について教えて頂きたい事があります。
そのようにお考えになる根拠として、円高により米国にインフレが生じる≒米国企業業績の向上≒米国企業株価上昇ということをあげていらっしゃいます。疑問に思ったのは、非基軸通貨の一つに過ぎない円の寄与程度で、米国の様な大きな経済圏全体でインフレ(米国企業業績の向上)が本当に発生するのか?という点です。
ご説明頂いている根拠ですと、米国の経済活動と円(日本)の経済活動との規模の違いが考慮されていない様に見えてしまいました。日本が米国に対して円高を契機に増加させた経済活動程度で米国企業の業績は上がるのでしょうか。もちろん、日本に対して物が売れるのですから良い方向にはたらく事にはなると思いますが、あくまでグローバルの中の一顧客でしかなく、業績を左右する支配要因にはならないのではないかと考えました。
投資も経済も最近勉強を始めたばかりの素人のため、もしかしたら的はずれな質問かもしれません。その際はご容赦いただき、ご意見うかがえますと幸甚です。

さっそくお答えします。

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購買力平価説というものがあります。
SMBC日興証券の解説を引用します。

長期にわたる為替レートの決定理論で、スウェーデンの経済学者カッセル氏によって提唱されました。
購買力平価説には、絶対的購買力平価説と相対的購買力平価説があり、前者の絶対的購買力平価説は、為替レートは2国間の通貨の購買力によって決定されるという説です。
具体的には、例えばアメリカでは1ドルで買えるハンバーガーが日本では100円で買えるとするとき、1ドルと100円では同じものが買える(つまり1ドルと100円の購買力は等しい)ので、為替レートは1ドル=100円が妥当だという考え方です。
しかし、この説が成立するにはすべての財やサービスが自由に貿易されなければなりませんから、厳密には成り立たないことになります。
一方、後者の相対的購買力平価説は、為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定されるという説です。
具体的には、ある国の物価上昇率が他の国より相対的に高い場合、その国の通貨価値は減価するため、為替レートは下落するという考え方です。
しかしながら、この説もすべての財やサービスが同じ割合で変動することを前提としているため、厳密には成り立たないことになります。
絶対的購買力平価説も相対的購買力平価説も現実の市場では厳密には成り立たないことになりますが、為替レートの決定理論としては優れた説で、昔から研究・利用されています。
http://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/ko/J0263.html

私の説明は、この購買力平価説を逆から述べたにすぎません。

為替レートとは、お金とお金を交換する交換比率のことですから、それ自体に色はなく価値中立的です。ドル円の為替レートは、多くの人がドルと円の価値が同じだと考える水準で変動していきます。
そして、購買力平価説からは、ドルと円の交換レートは両者の価値の一致点、すなわち、それぞれの通貨で同じものが買える水準であると説明されるわけです。

そこで、ご質問の疑問点に戻ります。

>非基軸通貨の一つに過ぎない円の寄与程度で、米国の様な大きな経済圏全体でインフレ(米国企業業績の向上)が本当に発生するのか?という点です。

私の説明で為替を固定させたのは理解しやすいようにするための説明上の便宜にすぎません。正確に言えば、為替が動くから物価が動くのではなく、物価が動くから為替が動きます。
なぜなら、為替レートそれ自体はお金とお金の交換レートにすぎず、価値中立的だからです。

以前の記事では、

(1)ドルと円の購買力が変化しないのであれば、為替レートはそのうち元に戻る
(2)為替レートが元に戻らないときは、ドルと円の購買力が変化する。円高になれば、アメリカがインフレになり、アメリカ株もインフレを反映して株高になり、円高による為替差損は株高で回収できる

との説明をしました。

これは分かりやすさを優先したためであり、正確には、「ドルと円の購買力が既に長期的に変化してしまっているから、為替レートは戻らない」ということになります。
つまり、何らかの要因によって、既にアメリカのインフレ率が日本のインフレ率を超過してしまったことから、為替レートがそれを織り込んで円高ドル安になったというわけですね。

先進国株の期待リターンは年率5.5%程度です。
【参考記事】
インデックス投資の目的は期待リターンを得ること
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-328.html

我々の問題意識を整理すると、

(1)円安になれば儲かる
(2)円高になると損する

ということになります。

すなわち、たわら先進国株の基準価額は円貨換算で表示されますが、ファンドはもう先進国株を買ってしまっており、ファンドの財産はドル建てで保有され、それを毎日の為替レートで円貨換算表示しているだけです。

ということは、円安になるとドル建て資産で構成されるたわら先進国株の円貨換算後の基準価額は上がるため、ホルダーの我々にとってはうれしいことになります。
逆に言えば、円安は円の価値が減ることを意味しますので、預貯金を含む円建ての資産の実質価値は目減りしていきます。ドル建て資産を持たないことがリスクとなるわけです。

これに対し、円高は円の価値が上がることを意味しますので、ドル建て資産で構成されるたわら先進国株の円貨換算後の基準価額は下がります。

先ほどの先進国株の期待リターンは年率5.5%です。
他方で、円高になると言っても、現在の1ドル110円が90円になったところで2割減るだけです。為替差損は、4年もあれば取り戻せます。
このように、円高になるとしても限度があります。一時的に円高に振れたときに一括購入すれば儲かりますが、将来、円高に振れるかどうかは誰にも予測できません。

前回の記事でも言及したとおり、均等額積立てを継続すれば、円高の時も円安の時も買うことになりますので、為替レートもドルコスト平均法の恩恵を受けることができます。

このような理由で、私は、外株をバイアンドホールドする際に為替リスクを考慮する必要はないと考えています。

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コメント

No title

「為替のリスクはない」のではなく「気にする必要がない」「手法によっては取るに足らない」だけでは。
いつもこの手のキャッチコピーには首をひねってしまいます。
国内株だって為替リスクはないとも言えるし、あるとも言えますからね。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

コメントありがとうございます。

>「為替のリスクはない」のではなく「気にする必要がない」「手法によっては取るに足らない」だけでは。

ブログは本文を読んでもらえないと意味がありませんので、タイトルが重要です。

「為替リスクがほとんど消える」というタイトルよりは「為替リスクはない」というほうが本文を読みたくなりませんか?

Robbyさん
参考にしていただけたようで、良かったです。
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たわら男爵

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Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

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●つみたてNISA(SBI証券)はeMAXIS Slim先進国株を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資はeMAXIS Slim先進国株を毎月5万円購入。
●松井証券で「Slim全世界株リバランス積立」の毎営業日1万円投資を実行中。
●楽天証券で「たわら男爵15種」の毎月2回100円投資を実行中。
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