まず、現に相当額の無リスク資産を保有しているかどうかに関係なく、リスク資産を購入する際は、一括投資ではなく、5年程度の時間をかけて、毎月均等額を積み立てるべきです。
その理由は、マルキール先生の言葉を借りれば、「相場サイクルのピーク時にまとめて高値で投資した後、運悪く相場が崩れた時に陥る後悔や自己嫌悪の念を和らげてくれる効果は大きい」からです。
※毎月均等額と書きましたが、私の好みは毎営業日積立てです。
しかし、毎営業日積立てができる証券会社は松井証券しかなく、大抵の証券会社は毎月1回の積立て設定しかできないこと、毎営業日積立てのほうが毎月積立てよりもリターンは良いものの、毎日ログインしてスポット購入をして毎営業日積立てを実現する手間を補えるほどの差はないことから、通常は毎月均等額の積立てでよいと考えています。
なお、以前はマネックス証券でゴトウビ積立て(毎月5日、10日、15日、20日、25日、30日の積立設定をする)をすることを提唱していましたが、SBI証券が超低コスト
投信にも0.05%の保有ポイントを付与するようになったことから、マネックス証券でゴトウビ積立てをするよりも、SBI証券で毎月均等額積立てをしてポイントをもらった方が儲かるだろうと考えています。
※前回の記事でもお伝えしましたが、一括投資ではなく、5年程度の時間をかけて毎月均等額の積立てをするということは、それだけリスク資産を買う時期が遅れることを意味しますので、一般的に儲かる可能性は確実に減ります。
しかし、マルキール先生が主張するとおり、一括投資後の暴落による含み損を後悔し、損切りの美名で自分を誤魔化してリスク市場から退場してしまい、稲妻が輝く瞬間を逃す失敗を避けることができます。
そして、前回の記事でお伝えしましたが、私も、マルキール先生が主張するとおり、「相場が急落した時に多めに追加投資できる機動性を確保するために少々現金を持っているほうが有利だろう」と考えています。
ならば具体的にどうするかですが、リスク資産を実際に保有していれば、暴落時がいつかは簡単に分かります。
なぜなら、含み益がすごい勢いで減っていき、やがて含み損に転化し、含み損がすごい勢いで増えていくからです。
これに対し、リスク資産を実際に保有していなければ、暴落時がいつかは感覚として分かりません。
つまり、フクリさんの疑問、すなわち「もしも暴落で投資をすることができるのであれば、ドルコスト平均法なんてやらずに、暴落している時だけ全力で投資をすればよいのではないでしょうか。なぜ積み立て投資をするのでしょうか。」との点に対する回答は、「リスク資産を実際に保有していない限り、本当に投資してもよい暴落時かどうかの判断が付かないから、とりあえず毎月均等額積立てを開始継続すべき」ということになります。
世界経済が右肩上がりである以上、株価も右肩上がりである。
このことを理屈として理解していても、感覚として確信していない限り、ほとんどの市場参加者が我先にリスク市場から逃げ出す暴落時に追加投資などすることはできません。
そして、私がリーマンショックから学んだことは、暴落しても更に暴落し、みんなが底だと思っても底が抜け、更に大暴落する場合があるということです。
そんな時に悲しいのは、追加投資したいのに資金が尽き、絶好の買い場を眺めているだけになることです。
私がリスク資産を60、無リスク資産を40としているのは、絶好の買い場を逃さないためです。
しかし、ここで重要なのは、マルキール先生が強調するとおり、「このことは決して相場の先行きを読むことを勧めているのではない」ということです。
暴落に接した人は、誰でも不安に駆られます。なぜなら、市場参加者がリスク市場から一目散に逃げ出している状況を暴落というからです。むしろ、不安に駆られない人はおかしいといってよいでしょう。
しかし、暴落時に重要なのは、とにかくリスク資産を売却せず、リスク市場に居続けるということです。
なぜなら、マルキール先生が主張するとおり、「一旦下がったものは、必ずまた上がる」ものの、その時にリスク市場にいなければ値上がりによる利益を得ることができないからです。
そこで、追加投資が重要になります。
なぜなら、追加投資をすることで、暴落をバーゲンセールと思えるようになるからです。
しかし、追加投資をしている途中で資金が尽き、自分のリスク資産の価値が下がるだけの状況になると、暴落に耐えきれなくなってしまいます。
そこで、私は、どんな暴落でも3年は続かないだろうという考えのもと、少なくとも3年間は追加投資できるような余剰資金を確保しています。
つまり、追加投資であっても、3年間の均等額積立てができるような態勢を整えておくわけです。
もちろん、投資効率の観点からいえば、これは完全な無駄です。
率直に言って、自分でも4割の無リスク資産は多すぎるのではないかと思っていますが、6割のリスク資産を負担なくホールドするための保険であると割り切っています。
マルキール先生は、追加投資を推奨しながら、「このことは決して相場の先行きを読むことを勧めているのではない」と断言しています。
私は、この一見矛盾するかに思える表現の真意について悩みましたが、結局のところ、ドルコスト平均法と同様に、「将来株価が大きく下落した時に対する保険の役割を果たしてくれる」ということに尽きるのではないかと考えるに至りました。
というわけで、フクリさんの疑問、すなわち「ドルコスト平均法と暴落時のスポット投資を組み合わせることは、投資方針に矛盾が生じていると思います。そして、市場を出し抜いてやろうという金銭欲は、
インデックス投資家にはあまり必要のないものだと思っています」という点に対する回答は、「市場を出し抜こうというわけではなく、将来株価が大きく下落した時に対する保険の役割を果たしてくれるものだから」ということになります。
コメント
No title
>暴落時に重要なのは、とにかくリスク資産を売却せず
>追加投資をすることで、暴落をバーゲンセールと思えるようになる
良いこと言うなあ。毎日これを唱えたいです。
でも、バーゲンセールまでじっと我慢して待つのが難しいですよね。資金があると小利欲しさについつい買っちゃう・・ (^^);
2017/08/18 20:19 by 60のおっさん URL 編集
No title
>でも、バーゲンセールまでじっと我慢して待つのが難しいですよね。
毎月均等額積立てを続けていれば、追加投資をしなくても、暴落時にバーゲンセールに参加したのと同じことになります。
そのため、毎月均等額積立てをしている人は、あえて追加投資をする必要はありません。
しかし、暴落に血が騒ぎ、どうしても追加投資をしたい人は、スポット投資は大抵失敗しますので、それはやめて、暴落が始まったなと思った時点で、余裕があれば、積立額を2倍とか3倍に増やし、点ではなく面で追加投資をするのがよいと考えています。
2017/08/19 00:26 by たわら男爵 URL 編集
No title
バランスファンドを持っていれば、急激な下落時には自動的に債券から株式に資金を移動してくれるので同様の効果が期待できるのでは?
と考えましたが、それでも基準価額は下がるので、下がると追加投入したくなるのが人の性かもしれないですね。
あと役割として現預金とあまり変わらない債券のために信託報酬を払うのが気になる人にも向かないですね
というより、自分の意思で何か判断したことで成果が出るのが楽しいから、急落時に追加投入したくなるのかもしれません。
2017/08/22 23:07 by URL 編集
No title
>あと役割として現預金とあまり変わらない債券のために信託報酬を払うのが気になる人にも向かないですね
私が嫌なのは、株が下がれば債券も下がるという点です。
債券は、長期的にはインフレに弱く、短期的には株と一緒に下がり、歴史的には超低金利時代で最高の債券高のトリプルパンチな点に魅力を感じません。
>自分の意思で何か判断したことで成果が出るのが楽しいから、急落時に追加投入したくなるのかもしれません。
よくいろいろなブログで投資の楽しさを熱弁する人がいますが、私は、投資に楽しさを求めることは非常に危険だと思っています。
投資は、あくまで資産形成の手段にすぎず、それ以上でもそれ以下でもないということを肝に命じておくことができた人だけがインデックス投資で成功するのではないかと考えています。
2017/08/22 23:51 by たわら男爵 URL 編集
20年使わない資金
2018/07/25 15:33 by URL 編集
No title
リバランスは、相場の動向を一切無視し、年に1回、事前に決めた日に実行しなければなりません。
リバランスとは、高いものを売って安いものを買うことですから、頻繁に実行すると高値を追うことができずに損をします。
>変動5%ルールを設定し、リバランスを考えています
リバランスは、変動幅ではなく、年に1回、事前に決めた日に機械的に行うべきです。
2018/07/25 22:31 by たわら男爵 URL 編集