米国ETFの為替差益課税は心配無用

先ほど、こんな記事を見ました。

「海外ETFの問題点とは ~課税区分と税金」
http://21centurycapitalist.com/2017/07/18/post-356/

要するに、保有するリスク資産は米国ETF(うち7割がVT)であるところ、為替差益相当額は雑所得として課税されるので、国民健康保険等に影響して不利益になるとの前提のもと、

さて、これで私も自分のポートフォリオを見直さなければならなくなりました。
ずっと保有する気でいましたので、ショックです。

と結論づけています。

その後の記事を拝見しても、いろいろと悩んでおられるようですが、そもそも悩む必要は一切ありません。

広告

分かりやすいように、簡単な事例を設定します。

●設例
1株60ドルで買ったVTを1株60ドルで売った。
ただし、為替は、購入時は1ドル100円だったが、売却時は1ドル120円だった。

このとき、購入時の円貨換算時のVTの時価は6000円であり、売却時の時価は7200円です。
上記の記事では、この1200円は為替差益のため、雑所得になり、確定申告が必要であると理解していますが、この点の理解が間違いです。

特定口座内で管理する限り、単純に、1200円の20.315%の源泉徴収税が差し引かれるだけです。
正確に言えば、売却代金60ドルから、1200円の20.315%=247円=約2ドルが差し引かれた58ドルが特定口座に入金されます。
※分配金は、日本国による源泉徴収課税の前に米国による源泉徴収課税がなされますが、譲渡益には米国による源泉徴収課税はなされません。

私はマネックス証券の外国株口座しか知りませんので、マネックス証券を例にします。

まず、マネックス証券では、米国株口座(TradeStatin)の取引画面の残高照会欄を見ると、ドルベースでの評価損益(含み損益)が表示されています。
例えば、1株60ドルで買ったVTの時価が70ドルになれば+16.666%と表示されます。

つぎに、外国株口座サイトにログインし、外国株取引欄を見ると、保有銘柄ごとに、概算簿価単価、概算評価額、概算評価損益が日本円ベースで表示されています。
「概算」なのは、売買手数料等の諸費用が考慮されていないからですが、確定申告は毎年末に郵送される「特定口座年間取引報告書」(諸費用を考慮したもの)を添付して行いますので、問題はありません。

これで分かるとおり、少なくとも特定口座で管理する限り、米国ETFは、取得時の為替相場に基づいて円貨換算された金額が取得時の簿価単価=取得価額となり(設例でいえば、取得価額は6000円)、売却時の為替相場に基づいて円貨換算された金額が売却時の簿価単価=売却価額となります(設例でいえば、売却価額は7200円)。

つまり、特定口座で管理する限り、源泉徴収の対象となる取得価額や売却価額には為替差損益が既に考慮されていますので、課税関係は全て特定口座内で完結し、確定申告を必要としません。

国税庁も同じことを言っています。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/02.htm
【照会要旨】
外国株式を外貨建てにより譲渡した場合、その譲渡により生じた所得のうち、その外国株式の保有期間の為替相場の変動による為替差損益に相当する部分を「株式等に係る譲渡所得等の金額」から区分して雑所得の対象とする必要がありますか。
【回答要旨】
外国株式等の譲渡対価の邦貨換算額相当額が、株式等の譲渡に係る収入金額として取り扱われることとなるため、為替差損益を雑所得として区分する必要はありません。

【注意事項】
マネックス証券はこんなことを言っています。

Q 外国為替取引をして、為替差益がでました。確定申告は必要ですか?
A 外国株取引のために外国為替取引を行った場合の為替差益につきましては、原則確定申告は不要です。
これは、円換算した際の外国株取引の売買損益には、外国株取引のために行った外国為替取引の為替差損益も含まれているものとして考えるためです。
しかしながら、外国株取引を行う意図で交換された外貨を、外国株取引を行わずに円転し、為替差益が発生した場合には、雑所得(総合課税)として確定申告する必要があると税制上判断される可能性がございます。
税制上の判断につきましては、税務当局により異なる場合がございますので、詳細につきましては所轄の税務署にご確認ください。

これを翻訳すると、

円転する場合は、売却後に直ちにしないとまずい(売却代金をドルのまま数年間放置し、円安時に日本円に戻すと、その為替差益に課税されるおそれがある)

ということですね。

もっとも、購入のタイミングを見計らっていたところ、購入するときまで数か月が経過し、結果として、より円安時に購入することになり、新たに購入した米国ETFの取得価額(日本円換算時)が高くなってしまったとしても、それはそれで仕方のないことです。
※取得価額が高くなったほうが、売却時の譲渡益が少なくなり、源泉徴収税が安く済みます。

他方で、より円高時に購入してしまうと、その分だけ取得価額が安くなってしまいますので、両刃の剣といえますね。

広告

コメント

配当(分配)金は?

ちょっと質問です
外国株式も特定口座のお陰でキャピタルゲインの税務処理が楽になりましたが、インカムゲイン、つまり、受け取ったドルの配当金は、受け取った時と、円転した時の為替差益を雑所得として申告する必要があるのでしょうか?
なんだか、申告が必要な気がするのですが・・・

No title

コメントありがとうございます。

分配金についても、ドルで入金された直後に円転すれば為替差益は発生しないことから、申告は不要です。
厳密には入金日に円転しないとダメですが、現実問題として、数日遅れて為替差益を得たことが税務署にばれたとしてもうるさくは言われないでしょう。

ちなみに、
>受け取った時と、円転した時の為替差益を雑所得として申告する必要があるのでしょうか?

この点は譲渡益も同じです。
売却代金をドルのまま放置し、数か月後に円転し、円安による為替差益を得ると雑所得になります。

数か月寝かせてしまったときは、適当なETFを買ってすぐに売却し、売却代金が入金されたら直ちに円転すれば、税務署にばれてもうるさくは言われないと思います。

なお、うるさく言われないと思うという意味は、法的には勝てないものの、実務的に課税されることはないといいなあという程度のことですので、確実なことを知りたければ税理士に相談してください。
非公開コメント

広告

プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は、たわら先進国株(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)はeMAXIS Slim先進国株を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資はeMAXIS Slim先進国株を毎月5万円購入(+特定口座で4万円×4回=毎月16万円の積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、大和証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

パソコン版右端の「ブログ記事検索」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
●カテゴリ「この投資信託がすごい」では、ベストバイファンドの具体名を明示しています。
●カテゴリ「インデックスファンドの基礎知識」を読めば、誰でも簡単に投資信託の必須知識を得ることができます。

新着記事通知用のツイッターアカウントはこちら。
https://twitter.com/tawaradanshaku

インデックス投資家必読の書

ブログ記事検索

他の投信ブログはこちら

管理