積立投資は保険である

積立投資は気休めにすぎない。

これは、みんな大好き山崎元先生の名言です。

この本の76頁にはこのように記載されています。

しかし、ドルコスト平均法を含めて「時間分散」を行う投資法は、投資すべき資金が既にあり、最適な投資額が決まっているとすると、時間・手間・コストがそれぞれ余計にかかるのと共に、投資が完了するまでの期間に十分機会を利用できない「機会コスト」もかかるので、「気休めにはなっても、合理的ではない方法」です。
既に運用資金をお持ちの方は、どの道「いいタイミング」など分からない中で平均的に有利だと思うからリスク資産に投資するのですから、ご自分にとっての適正投資額を遠慮なく1回で投資してしまってください(「一括投資」)。

この点について否定的な人がいます。
星野泰平さんならもっと別のことを言うに違いない、そう思ったあなたは早計です。

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星野泰平って、だれ?

素敵なタイトルですね。
ちなみに、単行本は1512円ですが、キンドルなら1080円です。しかも、読み放題サービスの対象ですから、読み放題サービスを利用中の人はタダで読めます。

私も、この本をずっと昔に買いました。
タイトルを見て、「きっと積立投資のほうが一括投資より儲かる、あるいは損をしないことが詳述されているんだろう」と思いましたが、そうではありませんでした。
結論から言えば、星野さんは山崎先生と同じことを言っています。

キンドル読み放題サービスの人は、図表を見るのも大変でしょうから、とりあえず308頁に飛んでください。
「第9章総括」の部分です。
ここで星野さんはこれまでの総まとめをしています。

セゾングローバルバランスファンドの1989年12月から2010年12月までの252か月の実際の値動きで検証した結果について、星野さんは、(1)損失回数、損失率、(2)平均利益額、平均利益率、(3)最低成績、最低収益率、(4)最高成績、最高収益率、(5)10年間運用した場合の損益という視点で比較していますが、いずれも一括投資の勝ちです。

同書318頁にはこのように記載されています。

先ほど10年間のケースでは一括投資は0回、積立投資は7回で積立投資のほうが損をしていた。それは10年間に限ったことではなかったことが分かる。1年間から9年間まで、すべての運用年数で積立投資のほうが損をした回数が多かった。

同書319頁にはこのように記載されています。

圧倒的に一括投資のほうが平均的に利益を上げている。

だったら積立投資のどこがいいんだよ、と私も最初に読んだ時に混乱しました。
一括投資と比較して積立投資にはいいところが何一つないからです。

同書328頁には、「一括投資と積立投資の価値の違い」と題する図があります。
この図を見ると、一括投資は数値化できる価値(利回り、リスク、コストなど)が積立投資よりも優れているのに対し、積立投資は数値化できない価値(安心感、回復力、親近感など)が一括投資より優れていると記載されています。

そう、この本は337頁かけて「積立投資のすべて」を論じてきたわけですが、結局のところ、積立投資は「気休めでしかない」という事実を検証してしまったことになります。

星野さんは、同書253頁で次のように述べます。

つまり、一括投資で損失を回避したければ、投資期間を重視すればよいのだ。
私は6年間をひとつの節目としてみている。

既にある程度の資産を保有している人が、これから初めてリスク資産を買おうとしたとき、「積立投資のすべて」という本を書き、社団法人世界つみたて投資協会代表理事である星野さんであっても、積立投資ではなく、一括投資(ただし、6年間ホールドできたらね)を勧めているわけです。

しかし、マルキール先生は違います。

マルキール先生は、同書440頁で、次のとおり述べます。

投資の専門家の中には、ドル・コスト平均法を勧めない人もいる。それは表3に示したように、右肩上がりの相場の下では、このアプローチはベストとは言えないからだ。表3の想定の下では、期初にまとめて5000ドル投資するのがベストなのだ。
しかし、この方式は少なくとも将来株価が大きく下落した時に対する保険の役割を果たしてくれる。そして、2000年3月あるいは2007年10月といった、相場サイクルのピーク時にまとめて高値で投資した後、運悪く相場が崩れた時に陥る後悔や自己嫌悪の念を和らげてくれる効果は大きい。

マルキール先生は、同書441頁で、なぜ保険が必要なのかを実に明快に指摘します。

ほとんどの投資家にとって本質的な問題は、悲観論が蔓延するような相場下落の局面でも、動揺しないで株式投資を続けられる固い意思があるかどうかということである。
相場が下落したからといってやめてしまったのでは、元も子もないのだ。

すなわち、ドルコスト平均法は、狼狽売りをしないで相場に居続け、稲妻の輝く瞬間を逃さないための「保険」だったわけですね。

そもそも、「保険」とは、制度上、大多数の顧客が損をするようにできています。多くの顧客から保険料を集め、保険事故があったごく一部の顧客に配るものが保険制度ですから、絶対に事故にあわなければ保険に入らないほうが保険料の分だけ得をするに決まっているわけです。
しかし、みんなが保険に入るのは、万が一の事故に備えるためです。万が一の事故で人生を破滅させないように、保険料というコストを払って保険に加入します。

ドルコスト平均法も同じことです。

一括投資に比べ、積立投資はリターンの点でもリスク(ここでは損をしない可能性という意味)の点でも劣ります。
リスク資産を買ったほうが儲かる可能性が高いからこそ、みんなリスク資産を買うわけですから、より多額の資産をより早期にリスクにさらす一括投資のほうが儲かる可能性が高いに決まっています。

しかし、我々は、儲けの一部を諦めるというコスト(山崎先生の言う「機会コスト」)を支払って、狼狽売りの防止という保険を手に入れるためにドルコスト平均法で積立投資を行うのです。

マルキール先生は、ドルコスト平均法は保険であると喝破しました。
実にすばらしい指摘だと考えます。

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コメント

No title

山崎元先生の本しか読んでいませんが積立投資が保険というのは納得です。ドルコスト平均法は元本が大きくなってくると毎月積立てる効果はほとんどありませんが何となく怖いので積立している感じが強いです。

>セゾングローバルバランスファンドの1989年12月から2101年12月までの252か月

2101年→2011年ですよね?

No title

クロスパールさん

>2101年→2011年ですよね?

2010年でした。
ご指摘ありがとうざいました。

>ドルコスト平均法は元本が大きくなってくると毎月積立てる効果はほとんどありませんが何となく怖いので積立している感じが強いです。

私は、これも誤解だと考えています。
詳しく記事にしてみます。
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