積立投資とリスク選好度

リスク許容度とリスク選好度という言葉があります。

【参考記事】
リスクに対する選好と、リスク許容度は区別しなくてはならない
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-52.html

上記参考記事でお伝えしたとおり、マルキール先生の素晴らしい解説(出典は「ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第11版)」)によれば、

リスク許容度
「投資から上がる所得以外に、どの程度収入源があるか」(前掲書444頁)
「自分のポートフォリオから損失が出たとしても、それを穴埋めできる力」(前掲書445頁)

リスク選好度
「毎年のポートフォリオの価値は変動するが、それを我慢して見守るだけの忍耐強さ」(前掲書448頁)

とされています。

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マルキール先生が「リスク選好とリスク許容度を区別する」(前掲書444頁)ことが重要であると指摘するとおり、リスク許容度とリスク選好度はきちんと区別しておかねばなりません。

両者の区別は簡単です。

以前、私は、こんなふうに定義しました。
【参考記事】
他人のブログに勝手にアドバイスするシリーズ(9)~売り時はいつ?
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-256.html

リスク許容度とは、客観的にどれだけの相場の下落に耐えられる資産状況にあるかということで、私のような引退者のリスク許容度は非常に低く、大企業に勤めている人は非常に高くなります。

リスク選好度とは、主観的に自分がどの程度のリスクを取ると心地よく感じるかということです。
全財産が100万円しかなくても全て投資したいと思う人はリスク選好度が高く、1億円あっても半分しか投資したくないと考える人はリスク選好度が低いといえます。

このように分かりやすく書いたつもりでしたが、客観的、主観的という意味がいまひとつ理解しにくかったのかもしれません。

例を出しましょう。

あなたは深い谷の片側から対岸に渡らなければなりません。その谷には、

1、細い紐
2、丸太
3、木の板
4、手すり付きの木の吊り橋
5、手すり付きの鉄橋

のいずれか1つが掛かっていました。

深い谷ですから、落ちたら死にます。下から強い風が吹き上がっています。

さて、普通の一般人であれば、どこからが安全だと感じるでしょうか。
これが「リスク許容度」です。

つぎに、あなたはどこから谷を渡ろうと考えるでしょうか。
これが「リスク選好度」です。

このように「リスク許容度」は普通の一般人を基準としますので、正しい答えは1つしか存在しません。
あなたは、自分のリスク許容度について、正しい答えに到達するかもしれませんし、しないかもしれません。でも、正しい答えは1つしかありません。

これに対し、「リスク選好度」はあなたを基準とします。
あなたと同じリスク許容度に置かれた人であっても、どの程度の「我慢して見守るだけの忍耐強さ」があるかは人それぞれです。
しかし、あなたは、自分のリスク選好度、すなわち「我慢して見守るだけの忍耐強さ」について、過小評価しているかもしれませんし、過大評価してしまっているかもしれません。

あなたにどの程度の「我慢して見守るだけの忍耐強さ」があるかは、多額の含み益や含み損が発生したときにならないと分かりません。そのときに、利確や狼狽売りをしたいと思わなければ、あなたには現在保有しているリスク資産に相当するリスク選好度があったといえることになります。

言葉を換えれば、自分のリスク選好度が実際にどの程度なのかは、とりわけ暴落にさらされてみないと分かりません。
暴落時にビビってしまったら、自分のリスク選好度を過大評価してしまっていたということになるでしょうし、追加投資する意欲があれば、自分のリスク選好度を過小評価していたことになるでしょう。

そして、積立投資は、一括投資に比べて、リスク資産に投じる時間が長期に及ぶため、暴落時にさらされるリスク資産を少なくすることができます。

以前、私は、「私は、ドルコスト投資法の最大の利点は、実際の暴落相場に自らをさらすことで、自らの本当のリスク選好度を把握することにあると考えています。」と書きました。
【参考記事】
ドルコスト法がいいという投資家ほど信じられない?
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-324.html

これは非常に重要なことだと考えますが、投信ブロガーでさえ十分に理解をしていないと思われたことから、あえてまた記事にしてみました。

ちなみに、私のリスク許容度は極めて低いです。
手持ちの財産の中で、子供を成人させ、私が死ぬまでやりくりしなければならず、損失を穴埋めする力はゼロといえるからです。

また、私のリスク選好度も極めて低いです。
リスク資産は全財産の6割にすぎず、残りの4割は個人向け国債を保有しているからです。

結局のところは、インデックス投資をする以上は余計な欲をかかず、指数の期待リターンを得られれば十分であることを心から納得した上で、全財産のうちリスク資産に投じる金額を決めるということに尽きるといえます。
もっとも、そのいい塩梅が分かった人はインデックス投資の達人といえるのでしょうね。

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コメント

No title

アーリーリタイアを実現されて、実際どうですか?
働いていた頃の方が心安らかだったりはしないのでしょうか。

No title

コメントありがとうございます。

>働いていた頃の方が心安らかだったりはしないのでしょうか。

お金と社会的身分の2点だと思いますが、まずお金は十分ありますし、社会的身分も先輩の好意で無職から脱しましたので、子供たちの学校との関係も大丈夫です。

とりわけ子供と触れ合う時間を多くとれるようになったのは大きく、特に下の子は生まれたときから私と多く過ごしているせいか、私べったりです。
心の底からの満面の笑みはたまらないですね。

No title

定期的な収入が途絶え、取り崩しの生活が続くことへの不安についての質問だったのですが、お答えから想像するに、すでに普通の暮らしをしているだけでも、取り崩すどころか逆に増えていくほどの資産をお持ちのようですね。お見それいたしました。
御家族から引き継いだ財産もあるかもしれませんが、ご自身で積み上げられたぶんもそうとうあるのでしょうね、羨ましい限りです

No title

こんにちは、この記事を読ませていただき、
大変勉強になりました。自分のリスク許容度
を再確認する機会になりました。

前日の記事も興味深いです。現金の価値が
下がるのはわかっていましたが、
75万5153 VS 0.06という数字で見ると…
差がありすぎて、怖いですね

No title

コメントありがとうございます。

>定期的な収入が途絶え、取り崩しの生活が続くことへの不安についての質問だったのですが

このような不安があるのであれば、リタイアしてはいけないと考えます。

再就職は、現在の日本では不利にしかなりません。
40歳を超えるとアルバイトでも選考外になる可能性が高まるでしょうし、前職や経歴が立派であればあるほど再就職への障害になるという話はよく聞くところです。

アルバイトで不足分を稼ぐつもりであれば、正職にしがみつき、淡々と仕事をして、9時17時で残業せず、定時になったらさっさと帰るほうがはるかに楽だと思います。

>この記事を読ませていただき、大変勉強になりました。自分のリスク許容度を再確認する機会になりました。

ありがとうございます。

本文ではああいう風に書きましたが、自分のリスク許容度とリスク選好度を確実に把握している人など、私を含めて誰もいないと思っています。

以前も書きましたが、あのニュートンでさえ間違ってしまったわけですから、我々にできることは、できるだけ市場に参加し続けられるように、ある程度の安全幅をとって投資をするということに尽きると考えます。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

リスク資産は、たわら先進国株(SBI証券)とVT(マネックス証券)をほぼ50:50でホールド中。
2017年10月10日より、SBI証券で野村つみたて外国株投信の毎営業日1万円積立てを実行中。
NISA口座ではVTの分配金を使ってVTを購入中。

無リスク資産は、個人向け国債変動10(みずほ証券と大和証券を行ったり来たり)で運用中。

パソコン版右端の「検索フォーム」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
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