長期投資とリスク

長期投資とリスクについては、様々な投信ブログで検討されています。
しかし、どれもいまいち良く分かりません。

例えば、このブログ(http://ameblo.jp/anti-index/entry-11625847545.html)では、マルキール先生は、意図的に、標準誤差を標準偏差と誤解させる書き方をしており、長期投資でリスクが縮小すると主張する奴は統計音痴か詐欺師か馬鹿だと断じています。
しかし、私は、このブログを何度も読みましたが、正直、何を言っているのか分かりませんでした。

山崎元先生も、何度もブログ等で書かれていますが、正直、何度読んでも良く分かりません。

なぜこの人たちはもっと分かりやすく書かないんだろうと、私は非常に不満でした。

というわけで、長期投資とリスクに関する私なりの結論を書いてみます。

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まず、マルキール先生の著書である「ウォール街のランダム・ウォーカー(原著11版)」436頁の記載を引用します。

【引用開始】
図1の対象期間中に25年間株式を持ち続けたとすると、やはり年平均10%強のリターンが得られたのだ。
もし1950年以降で株式投資にとって最悪だった25年間をとったとしても、年平均リターンはそれより約3パーセント低かっただけである。
【引用終わり】

ちなみに、上記の図1というのは、同書435頁の表のことであり、S&P500を25年間ホールドした時の年平均リターンは最低で7.96%、最高で17.37%である反面、1年間では最低で-37%、最高で52.62%であることが示されたものです。

上記の記述は「リスクは投資期間に依存する」という章タイトルの中の文章ですので、マルキール先生が「長期投資をすればリスクは減少する」と述べていることは明らかです。

マルキール先生が何を言っているのかを翻訳してみましょう。

(1)先進国株や全世界株の期待リターンは5.5~5.75%であり、(2)の変動幅はあるものの、おおむね5.5~5.75%のリターンを年々上げ続ける。

(2)リスクとは年率ボラティリティのことであり、先進国株や全世界株は約20%であるから、毎年80%から120%の範囲で元本が変動する。

(3)運用期間が短ければ短いほど、個々の暴騰や暴落の影響をダイレクトに受けるが、運用期間が長期化すると、暴騰や暴落は何度も起こることによって平均化されるため、運用期間中の暴騰や暴落の影響をほとんど受けないようになり、運用期間全体で見たときのリターンは期待リターンに集約していく。

(4)したがって、運用期間が長期化すればするほど元本割れを心配する必要はなくなり、25年間運用すると、これまでで最悪のケースでも年率7.96%のリターンを得ることができた。

別の言い方をするとこうなります。

(1)20年かけて1000万円のたわら先進国株を保有するに至った人と、1日前に一括して1000万円分のたわら先進国株を買った人がいるとする。

(2)ある年の暴落で株価が20%下落すると、どちらのたわら先進国株も800万円になる。20年かけた人と昨日買った人のリスク(変動幅)はいずれも20%で等しい。20年かけたからといって、リスク(変動幅)は減らない。

(3)20年かけた人と昨日買った人で違うのは含み益(累積したリターン)の差。昨日買った人は保有額の100%が元本であるため、20%の元本が毀損されてしまう。他方で、20年かけた人は含み益の一部を失うだけで済む。

最近、積み立てた投信を取り崩すときに相場が暴落したらどうするのかという議論をする人がいます。
私はそのような議論はナンセンスだと思っています。

10年20年積み立てておきながら、どうして、1回の暴落ごときで含み益が全部なくなって含み損になると思うのだろうかと考えるからです。

すなわち、10年20年かけて積み立ててきた以上、取り崩す時点では莫大な含み益が発生しているはずであり、暴落によって含み益は減るでしょうが、依然として含み益がある状態ですから、生活に必要であれば少しずつ取り崩していれば、その後の相場の回復とともに含み益もまた回復していくことになります。

もっとも、取り崩した分の含み益は永久に失われてしまい、回復しないままになりますが、それはもう仕方ないことですから、諦めるしかありません。

世界経済が右肩上がりであるという宗教を信じるならば、株価もまた右肩上がりになります。
ただし、株価は単純に右肩上がりになるわけではなく、暴落や暴騰を繰り返しながら、くねくねと蛇行しながら右肩上がりになっていきます。
投資のタイミングによって年平均リターンは10%弱の差異が生じるものの、売却と買戻しのタイミングを失敗すると期待リターンすら得られないおそれがあること、過去の最悪のケースでも約8%の年平均リターンが得られたこと、現在でも5~6%のリターンが期待できることから、やはりバイアンドホールドする価値はあるといえるでしょう。


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コメント

No title

翻訳ありがとうございます。
専門家の説明と自分の実感とがしっくりこないなと思っていたのですが、なんか腑に落ちました。
素人にとっては、損をするのと、含み益が減るのとでは、経済的には同一でも、心理的には全く違います。

No title

引用先のブログや山崎さんの主張は、「マルキール氏の主張(2)と(3)で"リスク"がごっちゃになってる」みたいな感じではないでしょうか

(2)はリスク=年率ボラ(ある一年の変動の激しさ)という主張なのに、(3)ではリスク=年率リターンのばらつき(この一年のリターンは他の年に比べてどうだったかみたいな)のようになってしまっている、と

そして長期投資で減る"リスク"は(3)の方、つまり年率リターンが良い年だったか、イマイチな年だったかの影響であり、長期投資では変動をならして、まあでも10年で見たらそれなりのプラスだしいっか、ということでは

要は「2017年1月日時点で退職金1000万円投資する」場合と「10年積み立てて来きて2017年1月1日で1000万円になっているポートフォリオ」では「2017年一年間の変動の可能性=年率ボラ」は一緒でしょ、と

でも、退職金を一気につぎ込んだ人の年率リターン(=2017年だけのリターン)と、10年積み立てて来た人の11年の平均リターン(過去10年+2017年の11年の平均)なら、積み立ての人の平均リターンの方が、マルキールさんの言う「期待リターン」に近い可能性が高い

みたいな話なのではないでしょうか

マルキール氏は長期投資では「リスク」が減る、と言っていますが、それは(2)のリスクではなく(3)の意味の方ですよね、という主張かと

No title

コメントありがとうございます。

ruruさん
参考になったのであれば良かったです。


>マルキール氏は長期投資では「リスク」が減る、と言っていますが、それは(2)のリスクではなく(3)の意味の方ですよね、という主張かと

ご指摘ありがとうございます。
私もそのとおりだと思います。

実際に投資をするにあたっての最大の心配は、預貯金より損するのではないかということです。
マルキール先生の意図は、標準偏差とか標準誤差という統計用語を用いず、誰にでも分かる表現で素人の不安を払拭しようとした点にあると考えます。

長期投資では、投資タイミングによって年利10%の差が生じ、その差が25年分あるわけだから、1年分よりも変動幅(ボラティリティとしてのリスク)が大きいではないかということを殊更に指摘して、我々素人を混乱させる以外のメリットが何かあるのかなと疑問に思ったわけです。
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たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は、たわら先進国株(楽天証券)とVT(マネックス証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)はeMAXIS Slim先進国株を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資はeMAXIS Slim先進国株を毎月5万円購入。
●松井証券で「Slim全世界株リバランス積立」の毎営業日1万円投資を実行中。
●楽天証券で「たわら男爵15種」の毎月2回100円投資を実行中。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、大和証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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