ドルコスト法がいいという投資家ほど信じられない?

「過去の事例から言及するほど愚かなこともない」というブログを読みました。
http://takimu009.blog103.fc2.com/blog-entry-2203.html

上記ブログ主は、私がドルコスト投資法を推奨していることについて、「ドルコスト法の信奉者」との表現を用いた上で、一括投資より優れていると主張することに対して「寝言」であるという痛烈な表現で批判をされています。

その理由は、山崎元先生の受け売りにすぎませんが、要するに、市場が長期的に右肩上がりである以上、キャッシュを温存して逐次的に投入するドルコストは「気休めにしかならない」だけであり、「機会損失の発生」がない一括投資の方が良いというものです。

また、私の推奨する毎営業日積立てについても、「毎日購入したところで、より平均となるだけ。そこにメリットデメリットもない」と批判したうえで、「トンデモ理論」という痛烈な表現で批判されています。

ドルコスト投資法は、本当に、気休めのトンデモ理論なんだろうかというのが今回のお話です。

※上記ブログ主が原文をそのまま引用されることに対し不快感を表明されていますので、元の版を改訂しました。それにより批判的な印象を強く与える表現になってしまいましたが、それは私の本意ではなく、「」で引用することの宿命だとご理解ください。

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山崎元先生は、ドルコストに批判的です。
著書の中でも、ドルコスト平均法は「気休めにはなっても、合理的ではない方法」であるから、手持ち資金がある人は「自分にとっての適正投資額を遠慮なく1回で投資してしまってください」(「全面改訂ほったらかし投資術」76頁)としています。

その理由は、極めて単純で分かりやすいものです。

(1)ある人がこれからリスク資産に投入しようと考えている一定量のキャッシュを持っていたとする。
(2)その人がそのままキャッシュを持ち続けるのではなく、リスク資産に投下しようと考えているのは、キャッシュの期待リターンよりもリスク資産の期待リターンの方が高いからだ。
(3)そうであるならば、1日でも早くキャッシュをリスク資産に投下すべきである。毎日少しずつリスク資産に投下するのはリスク資産に投下できないままのキャッシュの量を多く残すだけであり、リスク資産の期待リターンを得る機会を失うだけだ。

山崎先生はここまではっきりとは書いていませんが、山崎先生の理屈を分かりやすく翻訳するとこうなります。
非常に論理的かつ分かりやすい理屈といえます。

しかし、経済合理的な思考方法を実践されている山崎先生が気付いていない視点があります。
それは、普通の人は、自分のリスク許容度とリスク選好度を正しく認識しない不合理さの中で投資をしているということです。

賢い人が陥りがちな罠のひとつに、みんなも自分と同じように賢い選択をすることを前提に考えてしまうというものがあります。
私は、山崎先生は、まさにその罠に陥っていると考えます。

かつて私は、こんな記事を書きました。
【参考記事】
他人のブログに勝手にアドバイスするシリーズ(9)~売り時はいつ?
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-256.html#more

上記参考記事の一部を引用します。

【引用開始】
自分の全財産のうち、リスク資産にいくら投じるかは、リスク許容度とリスク選好度の2点に基づいて判断されるべきであり、それは相場の値動きとは一切関係ありません。

リスク選好度とは、主観的に自分がどの程度のリスクを取ると心地よく感じるかということです。
全財産が100万円しかなくても全て投資したいと思う人はリスク選好度が高く、1億円あっても半分しか投資したくないと考える人はリスク選好度が低いといえます。

とはいえ、その人の本当のリスク選好度は暴落時に判明します。暴落時に悲観して投げ売ってしまう人は、自分ではリスク選好度が高いと思っていても実はとても低かったといえるからです。
自分のリスク選好度がどの程度かについては、歴史的な暴落時でもホールドを続けることができるかどうか、換言すれば、リスク資産が半減しても狼狽売りをしたくならないかを想像して判断した方がよいでしょう。

ただし、想像と現実は違います。実際に数千万円の含み損になっても耐えられるかどうかはその時になってみないと分かりません。そのためにも、一括投資ではなく、5年程度の時間を分散させて積み立てることで、リスクにさらす財産を少しずつ増やしていき、自分のリスク選好度はどの程度なのかをきちんと把握すべきだと考えます。
【引用終わり】

私は、ドルコスト投資法の最大の利点は、実際の暴落相場に自らをさらすことで、自らの本当のリスク選好度を把握することにあると考えています。
そして、投資期間が長ければ長いほど、含み益も積み上がっていくことになりますので、実際の暴落相場に直面したとき、それまで積み上げてきた含み益が狼狽売りをしたいと思う自分の心を守ってくれることでしょう。

私は、これは「気休め」という言葉で表現していいほど軽いものではないと考えます。
たしかに、経済合理的な考えではありません。経済合理性の観点からすれば、投資をする前に自らのリスク許容度とリスク選好度に基づく「適正投資額」(「全面改訂ほったらかし投資術」76頁)をきちんと把握しておくべきであり、自らのリスク許容度とリスク選好度が曖昧なままで投資に参加すべきではないからです。
しかし、普通の人は経済合理的な観点から物事を考えたりはしません。普通の人は感情で動きます。人間とは実に弱い生き物なのです。

そのような普通の人が、これまで経験したことのない投資の世界に入るわけです。リスク許容度とリスク選好度に基づく「適正投資額」をきちんと把握することを求めることができるのでしょうか。
私は無理だと考えます。

また、投資歴がそこそこあっても、大暴落を経験していない人は、大暴落に直面したとき、それまで自分が想定していたリスク選好度がいかに甘かったかを思い知ることでしょう。そして、大多数の市場参加者と同様に、狼狽し、投げ売り、市場から退場し、稲妻の輝く瞬間を逃してしまいます。

私がドルコスト投資法を推奨するのは、経済合理的に行動する人間など少数であり、大多数の人は何となく投資の世界に参加する現状を前提にして、できるだけ多くの人が多くの期間、市場に参加し続けるためにはどうしたらよいかを考えた結果です。

すなわち、暴落時の狼狽売りを防止するためには、自分自身の「適正投資額」の範囲内で投資をするしかありませんが、普通の人にとって、自分自身の「適正投資額」を事前に知るすべはなく、事前に想定した自分の「適正投資額」が本当の「適正投資額」なのかは実際に暴落に接した時に初めて判明することから、結局のところ、リスクにさらす資産を少しずつ増やすことでしか事前に対策することはできないということになります。

また、毎営業日積立てを推奨するのは、もっとも優れたインデックスファンドとは指数との乖離率がもっとも少ないものであるという前提のもと、指数ともっとも仲良しさんなのは毎営業日に積み立てることだからです。

あるインデックスファンドが顧客から集めた金で現物を購入する頻度について、毎日ではなく、1か月に1回だとしたら、誰もそんなファンドは買わないでしょう。なぜなら、購入する頻度が減るにつれて指数との乖離率が増えるからです。
私は、我々がインデックスファンドを買う頻度についても同じことが言えると考えています。

インデックス投資である以上、何があろうと指数に殉じなければなりません。
なぜなら、指数に殉じることこそがインデックス投資の存在意義であり、指数に殉じることこそがもっとも効率的に指数の期待リターンを得る方法といえるからです。

ドルコスト投資法の中で、毎営業日積立て以上に指数に殉じる方法はありませんので、私は毎営業日積立てを推奨しています。

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コメント

No title

たわら男爵様

いつもブログ更新ありがとうございます。

先日、セゾン投信のセミナーに行ったのですが、中野社長さんが「セゾン投信が設定されたとき、自分は社長という立場から大金を最初投じたが、すぐリーマンショックが起こり、長らく含み損の時期があった」
「(セミナーでは米国株の右肩上がりの図で説明してきたが)明日、1000万円すべて投下するのはやめてください。時間分散してください」というようなお話をされてました。


山崎さんも、2016/11/8の記事にあるように
YAMAZAKIポートフォリオでなくVTを購入されていますしね。人間言行不一致はあるものでしょう。


さて、今回の質問なのですが、

>インデックス投資家はタイミング投資を利用した利益はそもそも追い求めておらず、ただひたすらホールドすることで

についてのなのですが、投資信託で

①現在の含み益があるが、一度得た利益を失うのが怖いので、利益の一部だけでも解約したいという気持ちがある
②解約しないで持ち続けるのが基本という話
なので、解約しない方が正しいのでないかとい葛藤
③税金20%はきつい。書籍等ではリバランスが推奨されているが、20%の税金については記載が無いような扱いだ、何故だ?
④今年暴落が起こったら、やっぱり利益の一部は利確しておけばよかったと思うだろうな

といった葛藤があります。含み益で悩む自分は、いわゆるリスク許容度が低いんだろうなあと自覚しています。

含み益がある時の、気持ちの持ちようについてなにかコメントがありましたら、是非お願い申し上げます。

No title

コメントありがとうございます。

>先日、セゾン投信のセミナーに行ったのですが、中野社長さんが「(セミナーでは米国株の右肩上がりの図で説明してきたが)明日、1000万円すべて投下するのはやめてください。時間分散してください」というようなお話をされてました。

いきなり多額の含み損になると、文句を言う人が出てきてトラブルのもとになるでしょうしね。

山崎先生のVT購入は、私も記事にしましたが、山崎先生はかなり前から「自分だったらVTを買う」と明言されていますので、初心者用のニッセイ外国株と自分用のVTということで、一応言行は一致されています。
著書の中でも、具体的な銘柄は分からないから、銘柄選定は共著者や部下に任せたと断っているくらいですしね。楽天証券に籍を置いている以上、ニッセイ外国株の乖離云々に言及するのはさすがにまずいと考えておられるのでしょう。

後半のご質問については、夜の記事でお答えしますので、それまでお待ちください。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は、たわら先進国株(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)はeMAXIS Slim先進国株を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資はeMAXIS Slim先進国株を毎月5万円購入(+特定口座で4万円×4回=毎月16万円の積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、大和証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

パソコン版右端の「ブログ記事検索」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
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