昨日アップされた「運用報告書(全体版)第1期〈決算日2016年10月12日〉」5頁を見ると、1万口当たりの費用明細が記載されています。
それによれば、信託報酬税込0.199%、信託報酬を除くコストは税込0.03%、実質コストは税込0.229%です。
ただし、これは2015年12月18日から2016年10月12日までの期間の実質コストですから、1年に引き直す必要があります。
たわら先進国株の信託報酬は税込0.243%ですから、これは運用報告書の0.199%の1.22110552763倍です。したがって、運用報告書の実質コスト0.229%にこの数字を掛けると1年の実質コストになるはずです。
たわら先進国株の実質コスト(信託報酬を含む総額) 0.2796%(税込)
信託報酬を除くコスト 0.0366%(税込)
私の推計した実質コストは0.032%でしたので、良い線いっていましたね。
なお、この運用報告書を分析したブロガーの安房さんが「
たわらノーロード決算。ところどころ乖離が気になる...?」という記事を書いています。
http://anbowasset.blog.fc2.com/blog-entry-260.htmlその中で安房さんは、
たわら先進国株の乖離が「大きく頻繁」であるとし、
「
たわらシリーズは、まさにその競争を引っ張っていくべき存在であったはずです。
それだけに、今回のこの大きく頻繁な乖離につき、詳細な原因の分析及び説明が求められ(たとえば、市場の需給の偏り・流動性などのどうにもできない事情によるのか、それとも運用手法に何か問題があっただけなのか…)、今後の乖離の頻度及び幅の減少につき信頼を与えることが急務なのではないかと思います。」
と主張しています。
私もこの記事を昨日見て非常にびっくりしました。
そこで、先ほど電話して聞いてみました。
質問1
たわら先進国株は、新規設定日とその翌日の基準価額が1万円で変わりませんが、なぜですか。
回答1
たわら先進国株は当初募集ではなく継続募集です。新規設定日は内部資金を投入して様子を内部観察していました。この段階ではマザーファンドは購入していません。
そのため、運用報告書では指数と乖離する結果になり、その後も長期間にわたって乖離が続いていますが、ファンドの規模が増えるにつれて乖離も解消していきます。
なお、このような運用方法は、
インデックスファンドを新規設定する際には珍しくないものです。
質問2
マザーファンドの運用は非常に安定しており、月間の乖離もゼロから0.3%で、2015年の1年間の乖離は0.2%であるのに、なぜ
たわら先進国株にはマザーファンドよりも大きな変動幅(3.4%から2.5%)があるのですか。
回答2
たわら先進国株に対する注文(購入、解約)は、その日の15時で締め切られ、その後に証券会社を経由して当社にデータが届きますが、当日に入手できるデータは概算額に過ぎず、注文額が確定するのは翌日になります。
これはシステム上、どうしても避けることができないことから、マザーファンドにできるだけ迷惑を掛けないように、概算額よりも2~3%低い金額(たわら先進国株に2~3%の現金が残るような形)でマザーファンドに注文を出すことになります。
つまり、たわら先進国株は、常に日々の注文額の2~3%の現金を保有していることになりますので、その限度でマザーファンドとの乖離が生じることになります。
なお、運用報告書1頁を見ると、たわら先進国株が3.4%の上振れから始まり、決算日には2.5%の上振れに上振れ幅が減少したかのような印象を受けますが、これは新規設定日に内部的な試験運用をしたことに起因する名目的なもので、マザーファンドとの実際の乖離率は日々の概算注文額の2~3%の現金をたわら先進国株に残しておくことに基づく極々小さいものに過ぎません。
たわら先進国株は、日々の概算注文額の2~3%の現金をファンド内に留保するほかは全てマザーファンドを購入していることから、マザーファンドの乖離率とほぼ連動しています。
私のこれまでの継続的な毎月の分析でも、たわら先進国株は他の先進国株
投信の運用成績とほぼ同じであり、異常な上振れ下振れは発生していません。
【参考記事】
たわら先進国株vsニッセイ外国株vs
インデックスe、SMTグロ株、Funds-i外国株(8)
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-257.html#moreなお、安房さんが言うほどの乖離(「先進国株式の6月の乖離が▲0.38%、7月には逆に+0.22%」)があるのかについて、調べてみました(運用報告書1頁)。
2015年12月18日~2016年10月12日 2.5%
2015年12月 3.4%
2016年1月 3%
2016年2月 2.8%
2016年3月 2.8%
2016年4月 2.9%
2016年5月 2.9%
2016年6月 2.5%
2016年7月 2.7%
2016年8月 2.6%
2016年9月 2.4%
うーん、私には、新規設定日の意図的な乖離を順調に消化しているように見えます。
特に運用に問題があるようには思えません。
安房さんには、たわら先進国株ではなく、ニッセイ外国株の極めて異常な大幅な乖離(下記記事を参考にしてください)について舌鋒鋭く切り込んでほしいですね。
【参考記事】
たわら先進国株、ニッセイ外国株を0.3797%上回る
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-258.html#more
コメント
No title
意図的にインデックスをトラックせずに、アクティブリスクとっているってことですか?
2016/12/07 21:38 by URL 編集
共に他のファンドと比べるのではなく、対象インデックスとの乖離の大きさを議論すべきだと思います。
2016/12/07 22:03 by とあるインデックス投資家 URL 編集
No title
>「新規設定日の意図的な乖離を順調に消化」ってどういうことですか?
本文で説明したとおり、運営会社は、新規設定日に内部資金をファンドに入れ、マザーファンドを買わずに試験運用しましたが、そうすることで指数と乖離する結果になることは十分に承知の上でやったわけです。
新規設定日から顧客の金を入れて運用するのか(当初募集)、運用途中で顧客の金を入れて運用するのか(継続募集)は運営会社の趣味の問題ですので、我々がどうこう言うことはできませんが、非常に分かりにくいなとは思います。
>たわらインデックスの乖離が、多くのインデックスファンドの新規設定時に見られることであるならば、ニッセイインデックスの乖離もまた同じなのではないでしょうか。
本文末尾のリンク先の記事で詳述したとおり、ニッセイ外国株は為替でやらかしてしまっただけのことですから、全く違います。
そもそも、ニッセイ外国株自身が異常事態であると考えて臨時ペーパーを出したくらいですし、問題を起こしたのはニッセイ外国株だけで、他の先進国株投信にはニッセイ外国株のような問題は起こしてはいません。
なぜ繰り返しやらかしているニッセイ外国株を擁護する人がいるのかは分かりませんが、たわら先進国株に乗り換えた方がいいのにとは思います。
少なくとも、他の先進国株投信では起きない事象がニッセイ外国株には起きており、しかもそれがリターンをむしばんでいるわけですから、納得できる合理的な説明がなされるべきでしょう。
私には、あのようなペーパーを出してお茶を濁して乗り切れると考えているニッセイ外国株の見通しは非常に甘いと思われてなりません。
2016/12/07 22:51 by たわら男爵 URL 編集
乖離?
基準価額とベンチマークである配当込みインデックスの差が2015年12月3.4%→2015年9月2.4%に縮小するのは1.0%の上方乖離ではないのでしょうか?
>うーん、私には、新規設定日の意図的な乖離を順調に消化しているように見えます。
と仰っていますが、ベンチマークに追従するべきインデックスファンドが乖離を縮小(上振れ)しては下振れニッセイと同じで褒められたものではないと思うのですが。
2016/12/09 15:33 by 通りすがり URL 編集
No title
私の見解は新記事にしましたので、よろしければご覧ください。
2016/12/09 19:38 by たわら男爵 URL 編集