楽天バンガード、保有ETFを第三者に貸し出し追加報酬を狙う

バンガード社の米国ETFを買うだけファンドである「楽天バンガードファンドシリーズ」は、本日、下記のリリースを公表しました。

●有価証券の貸付取引(レンディング)に関するお知らせ
https://www.rakuten-toushin.co.jp/news/pdf/20210219.pdf
弊社ではファンド資産の更なる効率的な運用に向けて、有価証券の貸付取引(以下「レンディング」といいます。)を以下のファンドで開始します。これによりレンディングによる品貸料を獲得し、収益源を多様化することで、更なる投資成果(パフォーマンス)の向上を目指します。
有価証券の貸付取引(レンディング)は、ファンドが保有する有価証券等の一部を証券会社等に貸し付けることで品貸料を得るものです。


同時に、「楽天バンガードHEADS」において説明記事を公開しました。

●「楽天・バンガード・ファンド」シリーズにおけるレンディング開始に向けて
https://community.rakuten-toushin.net/lending/
Q 受益者の皆様にとってデメリットはありますか。
A レンディングにあたっては、受益者の皆様に余計なコストを負担いただくということはないですし、レンディングの結果による収益を受け取っていただくことで、パフォーマンスの向上が期待できるという意味では、デメリットはないものと考えています。


さて、このような説明を鵜呑みにして無邪気に喜んではいけません。





※よろしければ、次の記事もご覧ください。

●業界最低水準の運用コストを目指す「PayPay投信インデックスファンドシリーズ」爆誕
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-2038.html

●車の保険には「弁護士費用特約(日常生活・自動車事故型)」を付けよう
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-2037.html



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楽天投信投資顧問は、レンディングを開始する目的について次のように述べます。

これまで、国内株式の個別銘柄を用いてレンディングをするケースはありましたが、グローバルに投資する投資信託においてレンディングを行うのは、おそらく、業界でも初めての試みではないでしょうか。
今回、レンディングという新たな取り組みをスタートすることで、ファンドのパフォーマンスの更なる向上を実現し、少しでも皆様の長期に亘る資産形成のお役に立てればと考えております。

https://community.rakuten-toushin.net/lending/


インデックス投資家であれば、リスクとリターンは表裏一体であることを熟知しています。
追加リターンを得るためには必ず追加リスクをとる必要があり、追加リスクなくして追加リターンを得ることはできません。

今回の「レンディング」による追加リターンは「品貸料」です。これは貸株と同じ仕組みと思われます。

●貸株サービスとは
https://www.jpx.co.jp/learning/basics/others/stock-lending/index.html
証券会社各社が提供するいわゆる貸株サービスとは、投資家が、保有している株券等を証券会社に貸し出すことで、証券会社からこれに見合う貸株金利を受け取ることができるサービスです。証券会社は、投資家から借り入れた株券等を他の投資家等に貸し出すなどの運用を行います。

日本取引所グループは、貸株のリスクについて、次のように述べます。

仮に証券会社が破綻した場合、貸株中の株券等が返却されないおそれがあります
※分別管理義務がなく、投資者保護基金の対象でもないため(無担保貸株を想定)



楽天証券投資顧問は、楽天バンガードファンドシリーズがマザーファンドを通じて保有する米国ETFを第三者に貸し出し、その見返りに第三者から貸株料を徴収します。
このとき、第三者が約束どおり借りたETFを返却してくれれば問題ありません。貸株料の分だけ儲かったことになります。
しかし、第三者が借りたETFを返却してくれなかったとき、マザーファンドは貸し出した米国ETFを失う(=その分だけ純資産額が減少する)ことになります。

楽天投信投資顧問が責任を取るのではないか(貸し倒れ分を補填してくれるのではないか)と考えた人は非常に甘いと言わざるを得ません。
楽天投信投資顧問は、2021年2月18日付けで訂正有価証券届出書を提出しています。該当部分を抜き出します。

有価証券の貸付取引等において、取引先リスク(取引の相手方(レンディング・エージェントを含みます。)の倒産等により契約が不履行になる危険のこと)が生じる可能性があります。


この一文によって、楽天投信投資顧問は免責されると考えているはずです。
つまり、貸し倒れが発生したとき、マザーファンドの純資産額はその分だけ単純に減り、各ベビーファンドの基準価額もまたその分だけ単純に減ることになります。

そして、楽天投信投資顧問は、今回のレンディングによって追加報酬を得ることができます。

委託者および受託者は、有価証券の貸付取引の指図を行った場合は、投資信託財産の収益となる品貸料に0.55(税抜0.5)を乗じて得た額※を貸付有価証券関連報酬として受けることができます。当該報酬は、当該報酬にかかる消費税等に相当する金額とともに、毎計算期間の最初の6ヵ月終了日および毎計算期末または信託終了時に投資信託財産中から支弁します。
※マザーファンドにおける品貸料については、当該マザーファンドの約款において、品貸料の一部を、同マザーファンドに投資を行っている証券投資信託の報酬として収受する規定のあるものに限ります。他の証券投資信託が同一のマザーファンドに投資を行っている場合は、マザーファンドの純資産総額における当該各証券投資信託の投資の時価総額に応じて、毎日按分するものとします。



訂正有価証券届出書を読む限り、

(1)レンディングによる貸し倒れリスクについて、楽天投信投資顧問は責任を取らない
(2)レンディングによる品貸料が高額であればあるほど、楽天投信投資顧問が得る追加報酬も高額になる

という疑念が生じます。

そして、注意すべきは、

貸し手や借り手の需給の状況によって、品貸料は都度変わってくるのです。
https://community.rakuten-toushin.net/lending/

という一文です。

銀行の金利をイメージすれば分かりますが、返済リスクがない優良顧客の金利は低く、顧客の返済リスクが高くなるにつれて金利もまた高くなります。
銀行は、貸し倒れが発生すると損をしますので、返済能力が怪しい顧客に対し、金利を高くして貸してやろうとは思いません。
しかし、貸し倒れが発生しても銀行は損をせず、高い金利で貸し付ければ貸し付けるほど銀行はノーリスクで高い報酬を得られるとしたらどうなるでしょうか。

私は、この点に関する疑問が解消されない限り、楽天バンガードファンドシリーズは投資対象から除外すべきであると考えます。

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コメント

No title

私もレンディングのリスクを無駄に取っている様な印象を持ちました。スリム全世界に真正面から戦っては勝てないが為に場外乱闘にもっていってるとでもいいましょうか。レンディングは私にはよく理解できないことも多いのでより手が出せないかなと感じます。例えばレンディングしている状態で多額のファンドの解約が出てもレンディング無しのファンドと比べて不都合はないのでしょうか?楽天シリーズは保有していないので人事ですが色々気になります。

No title

これは最悪ですね。他社に波及しないことを祈ります。slimも前々から貸株を検討しているようなことをブロガーミーティングか何かで言っていたようですが(また、国内株ファンドでは既に実行しているようですが)、些細な貸株料のためにカウンターパーティーリスクを負わされるのは勘弁してほしいですね。

また、デメリットはないなどという表現を通してしまう楽天のコンプラもどうかしてると思います。

いつも参考にさせていただいております。

これは、アクティブファンドへの転向といわざるをえないと思いますが、インデックスファンドとしてつみたてNISA対象ファンドになったものが、途中からアクティブファンドに転向するなどということが許されるのでしょうか。
しかも誰だかもわからない第三者の信用リスクを取って追加リターンを得る投資方針を採用するなど誰も予想しえないところです。

これで、米国ETF買うだけファンドはSBIの一択になり、雪だるまシリーズは巻き返しのチャンスだと思います。
他のファンドには、間違ってもこの真似はしないでほしいところです。

No title

コメントありがとうございます。

>レンディングは私にはよく理解できないことも多いのでより手が出せないかなと感じます。

せっかく解説記事を即日公開したのに、それを読んでもさっぱり内容を把握できないというのは残念ですよね。

>例えばレンディングしている状態で多額のファンドの解約が出てもレンディング無しのファンドと比べて不都合はないのでしょうか?

これまでの運用実績から余裕を見て貸し出すのでしょうが、ご指摘のとおり想定外の大口解約が突然なされたら非常にまずいことになりそうですね。

>他社に波及しないことを祈ります。

同感です。

>デメリットはないなどという表現を通してしまう楽天のコンプラもどうかしてると思います。

つい言ってしまったのでしょうが、あれは極めて不適切だと思います。

>これは、アクティブファンドへの転向といわざるをえないと思います

インデックスファンドを貸し出すだけですので、アクティブ運用とは言えません。
我々がETFを貸株するのと一緒です。

私は、バンガード社が日本から撤退した影響ではないかと考えています。

>米国ETF買うだけファンドはSBIの一択になり

この点は同感です。

>雪だるまシリーズは巻き返しのチャンスだと思います。

雪だるまはなんちゃってインデックスファンドですから、どうかなという気がします。

>他のファンドには、間違ってもこの真似はしないでほしいところです。

私が真っ先にこの記事を書いたのは、投信ブロガーが礼賛記事を書かないようにするためでもあったりします。

また、楽天投信投資顧問には、あのような適当な解説記事ではなく、追加リターンを得ることによる追加リスクについて、できる限り詳細かつ具体的に説明してほしいものです。

No title

インデックス投資するのは指数に沿った経済成長の分け前を貰うため。
世界経済の成長に対するリスクは引き受けるけど、余計なリスクは不要かな。
競争による信託報酬の低減は大歓迎だけど、今回の楽天のやり方までは求めていない。

No title

貴殿のお気に入りの「たわらノーロード 先進国株式」の請求目論見書p.22にこのような記述があります。

有価証券の貸付の指図および範囲(約款第26条)
1)委託会社は、信託財産の効率的な運用に資するため、信託財産に属する株式および公社債を次の1.~2.の範囲内で貸付の指図をすることができます。(以下略)

これは、アセットマネジメントOneがその気になればいつでも貸付ができるという意味だと理解しています。

ちなみに、「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」の運用報告書(全体版)のp.12の「有価証券の貸付及び借入の状況」という項目で、貸し付けの実績が記載されています。
楽天バンガードファンドについても次の運用報告書で貸し付け状況が明らかになると思われます。
「たわらノーロード 先進国株式」にはその項目がない(加えて楽天投信が「おそらく業界初」と言っている)ので、まだ貸し付けはしていないと思われます。

No title

いつも楽しく記事を拝見しています。

楽天VTI をNISA口座で毎日積立、特定口座で毎月積立しています。4年ほど投資信託を積立してますが、今回の記事で「貸株」を初めて知った程度の素人です。
記事の最後に「投資対象から除外すべきであると考えます」とあります。残念ですが積立対象はslim米国株に変更します。NISA口座及び特定口座は解約すべきでしょうか?特定口座は税金を払ってでも即解約し、NISA口座は保有し各年ロールオーバーせずに解約の方針を建てましたが、そこまですべき内容なのか?貸し倒れが発生する確率がどの程度のものなのか?想像がつきません。
この辺りの「感覚」が素人の私には掴めないです。

No title

コメントありがとうございます。

>競争による信託報酬の低減は大歓迎だけど、今回の楽天のやり方までは求めていない。

同感です。

>アセットマネジメントOneがその気になればいつでも貸付ができるという意味だと理解しています。

私もそう思います。
ただ、たわら先進国株が貸株に実際に手を出したら、保有継続を考えなければなりませんね。

>「eMAXIS Slim国内株式(TOPIX)」の運用報告書(全体版)のp.12の「有価証券の貸付及び借入の状況」という項目で、貸し付けの実績が記載されています。

これは知りませんでした。
教えていただき、ありがとうございます。

>残念ですが積立対象はslim米国株に変更します。

SBIバンガードS&P500でもよいと思います。

>特定口座は税金を払ってでも即解約し、NISA口座は保有し各年ロールオーバーせずに解約の方針を建てました

実際の運用状況を見てから判断したらどうかと思います。
ただ、今日の新記事でお伝えしたとおり、楽天投信投資顧問の貸株は非常に怪しげであるため、楽天投信投資顧問による具体的かつ明確な説明が求められます。

>そこまですべき内容なのか?貸し倒れが発生する確率がどの程度のものなのか?想像がつきません。

私も同じです。

三菱UFJ国際投信が貸株後も分別管理を維持し貸出先の信用リスクをとらない運用をしているのに、楽天投信投資顧問がなぜそれをしない(できない)のかが分かりません。
おそらく貸出先が外国であることや貸株料の多寡に関係するのでしょうが、きちんとした説明が欲しいです。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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●カテゴリ「インデックスファンドの基礎知識」を読めば、誰でも簡単に投資信託の必須知識を得ることができます。

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