販売会社は
SBI証券だけです。
SBI証券は「投信マイレージサービス」(投資信託の保有額に応じたポイントを付与するサービス)を顧客に提供しています。
ポイントの付与率は投資信託ごとに異なりますが、信託報酬の安い投資信託の付与率は低く、信託報酬の高い投資信託の付与率は高い傾向にあります。
本ファンドの付与率は
0.03%です。
この付与率は、相場よりも低い水準です。
たとえば、信託報酬が税抜0.26%と本ファンドよりも安い
Smart‐i先進国株式ESGの付与率は0.05%です。
SBI証券が、本ファンドには0.03%しか付与しないのに、Smart‐i先進国株式ESGに0.05%を付与する理由は、両ファンドの
販売会社報酬の違いにあります。
この点、Smart‐i先進国株式ESGインデックスの信託報酬の配分は、極めてオーソドックスなものです。
つまり、信託報酬から0.02%を信託銀行報酬として差し引き、残りの0.24%を運用会社と販売会社で山分けするというものになります。
そのため、
SBI証券の報酬は0.12%です。
しかし、Funds‐i先進国ESG株式では、運用会社が0.19%、信託銀行(※)が0.03%の報酬を取ります。
その結果、販売会社である
SBI証券の報酬は0.05%だけしかありません。
※信託銀行は野村信託銀行かと思いましたが、三井住友信託銀行でした。
こういう露骨なことをすると、普通は販売会社に嫌われて販路が広がりません。
しかし、本ファンドは天下の野村が運用するものですから、何とかなると思ったのかもしれません。実際にSBI証券が取り扱っているわけですし。
ただ、SBI証券が取り扱うファンドは楽天証券も取り扱うのが通常です(※)。本ファンドの販売会社に楽天証券の名前がなく、現時点における販売会社がSBI証券だけしかないという事実は、今後の販路の拡大に対する重大な懸念材料となります。
※SBIバンガードS&P500は、信託報酬の配分はオーソドックスなものですが、あまりに低額にすぎ、販売会社はSBI証券だけでした。
しかし、その素性の良さから、おそらく他の証券会社の顧客が取扱いを要望したものと思われます。今では、マネックス証券、au株コム証券、岡三オンライン証券といったネット証券会社のほか、SMBC日興証券や佐賀銀行も取り扱っています。
ただし、楽天証券は扱っていません。私は、SBI色が強すぎる(
明らかに楽天全米株をつぶしに来ている)ことを嫌ったためではないかと考えています。
販売会社報酬を削り、その分を運用会社報酬に上乗せするという本ファンドのやり方は露骨すぎます。
しかし、これをうまくやったのが
HSBC ESG米国株式インデックスファンドです。
HSBC ESG米国株式インデックスファンドの信託報酬は、税抜0.115%です。
運用会社報酬は0.05%、販売会社報酬は0.05%、信託銀行報酬は0.015%ですので、一見するとフェアなように思われます。
しかし、このファンドのマザーファンドは、HSBCが運用するETFを買うだけファンドです。
つまり、HSBCにとってみれば、このファンドが売れると、同時にマザーファンドを通じて自社ETFも売ることができます。そして、
自社ETFの経費率は0.15%です。
つまり、HSBC ESG米国株式インデックスファンドの実質信託報酬で考えると、
運用会社 0.20%
販売会社 0.05%
信託銀行 0.015%
となり、
Funds‐i先進国ESG株式よりも運用会社の取り分が多いことになります。
ただ、自社ETFを買うだけファンドとはいえ、マザーファンドをかませていることで、HSBC ESG米国株式インデックスファンドには見かけ上の公平感があるからか、SBI証券のほかに楽天証券も販売会社に名を連ねています。
まとめです。
今回、Funds‐i先進国ESG株式が税抜0.27%という低コストで新規設定されました。
しかし、販売会社報酬を削って運用会社報酬を増やすという露骨なことをしたせいか、販売会社はSBI証券だけです。今後の販路拡大に重大な懸念があります。
また、ベンチマークとなる指数は先進国株の中から
100銘柄を選定しており、集中しすぎているのではないかとの懸念もあります。
これに対し、Smart‐i先進国株式ESGは、信託報酬が税抜0.26%であり、Funds‐i先進国ESG株式よりも安いです。
ベンチマークとなる指数は先進国株の中から
700銘柄を選定しており、比較的広く分散されています。
また、SBI証券の投信マイレージも0.05%と高率(Funds‐i先進国ESG株式の付与率は0.03%)です。
しかし、新規設定日が2019年10月30日で、既に1年3か月ほど前であるにもかかわらず、純資産額は2億5600万円にすぎません。純資産額の少なさは、コストと乖離率に悪影響を及ぼしますので、この点が懸念材料です。
【参考】
●ファンドの純資産額が100億円あればひとまず安心http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1789.html最後のHSBC ESG米国株式インデックスファンドは、非常にうまく立ち回って自社の利益を確保しています。
新規設定日は2020年11月27日なのに、純資産額は既に6億5200万円です。
ただし、前述の2ファンドが先進国株を対象とするのに対し、本ファンドは米国株に限定されています。地域分散が弱いのが懸念材料ですが、組入銘柄数は
438銘柄であり、そこそこの数です。
というわけで、どれも一長一短あって悩ましいわけですが、
そもそもESG投資が必要なのか(時価総額比インデックスファンドを超える魅力があるか)を考えなければなりません。
ESG投資の魅力は、その成長性(投資家がこぞってESG投資をすれば株価が上昇する)にあるわけですが、
時価総額比のインデックスファンドを買い持ちすれば、ESG投資による株価上昇の利益についても享受することができます。もちろんESGに集中投資したほうが当たればより儲かるわけですが、ESGに集中投資するということは時価総額比インデックスファンドを買い持ちすることに比べてより大きなリスクをとることを意味しますので、外れればより損をすることになります。
私は、ポッと出のESGに自分のお金を投資したいとは思えません。
これまでどおり、たわら先進国株の買い持ちを継続します。
コメント
三菱UFJ銀行について
いつもブログ拝見させて頂いております。
初めてコメント、質問させて頂きます。どうぞよろしくお願い致します。
6月から三菱UFJ銀行において、投信積立及び運用残高に応じたポイントサービスが始まります。
https://www.bk.mufg.jp/info/20210108_mb/index.html
私は楽天証券にて、楽天カードを使ってつみたてNISA及び特定口座に月額5万円、iDeCoに2万3千円を、スリム先進国及びたわら先進国で積み立てております。
かねて提唱されている『投資に回すお金は60等分し、60か月かけて毎月同じ金額のインデックスファンドを買うべきである』というポリシーからみますと、
私にはもう少し毎月の投資金額を増やすべきでありその余裕もあります。
三菱UFJ銀行でのポイントサービス開始後に、運用商品残高がポイント付与対象となる50万円を超えるまで投信積立をすべきか思案しております。
男爵様からみて三菱UFJ銀行のポイントサービスは魅力的でしょうか。コメント頂ければ幸いです。
2021/01/23 21:17 by ゆーすけ URL 編集
No title
新記事でご回答します。
2021/01/23 22:14 by URL 編集