ところで、バンガード社は、2020年12月25日付けで、「2021年の経済および市場見通し」と題するレポートを公表しています。
https://www.vanguardjapan.co.jp/retail/articles/resources-learning/markets-economy/2021-outlook-summary.htm世界の主要国の間でも、景気回復への道のりには差が見られます。
感染の封じ込めに成功しているとされる中国は、短期間でコロナ前の成長トレンドまでほぼ回復しています。この傾向は2021年も持続し、成長率は9%になるとバンガードは予想しています。
中国以外では、感染拡大はそれほど抑えられていません。米国とユーロ圏は2021年も完全雇用水準を下回ると予想され、成長率はいずれも5%と予測します。新興国はさらに回復が遅れる見通しで、予想成長率は6%です。
規律ある投資家は、不安を感じさせるニュースにもかかわらず株式投資を継続することで、2020年に利益を手にしました。バンガードが予測する株価の適正価格によると、世界の株式市場は著しく過大評価されてはおらず、また今後過大なリターンを生む可能性も低くなっています。
世界株式のリスクプレミアムは小幅なプラスで、トータル・リターンは債券のリターンを3~5%上回ると予想されます。JPモルガンは、世界株式の期待リターンについて、
ドルベース 5.10%
円ベース 3.70%
と予想しています。これに対し、バンガードの予想は3~5%(債券のリターンはゼロと仮定)ですので、両社の予想はおおむね一致していると言えるでしょう。
ただし、JPモルガンがコロナショックに対する政策介入の影響(将来の期待リターンの先食い)に重大な懸念を示しているのに対し、バンガードは楽観的です。
もっとも、私は、常々、インデックスファンドの運用会社であるバンガードが将来予測を発表する意味があるのかとか、その精度は信頼できるのかといった疑問を抱いています。
しかし、我々が最も注目すべき点は、バンガード社が公表している将来予測の内容や精度ではなく、
規律ある投資家は、不安を感じさせるニュースにもかかわらず株式投資を継続することで、2020年に利益を手にしました。というメッセージです。
私は、インデックス投資で重要なことは、
入金力(より早く、より多額の資金を投入すること)と
鈍感力(相場の上げ下げを無視して均等額積立投資を継続し、一度買ったら絶対に売らない)の2点であると考えています。
しかし、人間は弱い生き物ですから、どうしても目先の損得に心を奪われてしまいます。
バンガード社の創設者であるボーグルでさえ、
それは私を含めて誰にもできない。
「市場が50%下落したら、どう感じるか」と聞かれたら、正直に「惨めに感じる」と答える。
胃がキリキリ痛んできたら、自著2冊を取り出し、「長期的展望を維持する」と書いた箇所を読み返す!と述べているほどです。
そのようなとき、我々に寄り添い、積立投資を継続するペースメーカーとなってくれる存在がいたならば、大変心強いことでしょう。
バンガード社は、定期的にニュースレターを顧客に送付することで、顧客の「インデックス投資を継続しようという気持ち」が折れないように顧客に寄り添ってきました。
しかし、バンガード社が日本から撤退することで、そのニュースレターも2020年12月25日付けで最終号となってしまいました。
最終号の冒頭には、バンガード・ジャパンからの次のメッセージが掲載されています。
平素より、バンガードおよびバンガードの商品をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
先日お知らせ致しました当社の営業活動終了に伴い、バンガード・ニュースレターのお届けは今回が最後となります。長い間、たくさんの個人投資家の皆さまにご購読頂きましたことを大変感謝しております。バンガード・ジャパンとしての情報発信は終了になりますが、今後も引き続き、バンガード・グループをどうぞよろしくお願い致します。
我々は、日本にインデックス革命をもたらした先駆者であるバンガード社のこれまでの功績を偲ぶとともに、バンガードの影響力が徐々に低下していく中で、我が国のインデックス投資の低コスト競争の行く末がどうなるかについても考えていく必要があるのかもしれません。
※超低コスト競争に多大な貢献をしたSBIアセットマネジメントは、SBIバンガードS&P500を新規設定するまで純資産額を集めることができず、スリムシリーズの当て馬に過ぎませんでした。
SBIアセットマネジメントは、SBIバンガードS&P500で初めて報われたことになりますが、バンガード・ジャパンがなくなりSBIバンガードのシリーズ化が期待できない中で、SBIアセットマネジメントがこれまでと同様に超低コスト競争に参加し続けることができるのかどうかについて注視すべきであると考えます。
コメント
No title
2020/12/27 20:15 by ぽんすけ URL 編集
No title
>SBI証券でされているインデックスマラソンの成績一覧の公表をまたお願いしたいです。
前回はスリム先進国株の1000億円到達記念で公表しましたので、次回は1500億円到達記念で公表する予定です。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1773.html
2020/12/27 22:12 by たわら男爵 URL 編集