私は、12月20日付けで下記記事を書きました。
●JPモルガン超長期市場予測2021http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1966.htmlJPモルガンによると、
(1)これからドル安円高のサイクルが始まること
(2)コロナショックへの政策介入のせいで、伝統的資産の期待リターンの先食いがなされてしまったこと
の2点から、
「先進国株(除く日本)」の期待リターンの超長期予測は3.40%であるとのことです。
72の法則(元金が2倍になるまでの運用期間を求める簡易計算式)によると、期待リターン3.40%のとき、
投資元金が2倍になるまで21年1か月かかることになります。
また、115の法則(元金が3倍になるまでの運用期間を求める簡易計算式)によると、期待リターン3.40%のとき、
投資元金が3倍になるまで33年10か月かかることになります。
私は、かねてから、
インデックス投資の必勝法は「入金力」であると考えています。
「入金力」とは、
より早期に、より多額の資金を投入し、売らずに保有し続けた人がインデックス投資で成功するというものです。
インデックス投資の期待リターンは投資額の多寡に関係なく一律です。
そのため、より早く、より多額の資金を投入できた人がより多くの期待リターンを得ることができます。
しかし、
インデックス投資でやることは、時価総額比の低コストインデックスファンドを買って、買った後は売らずに保有し続けることに尽きるため、工夫の余地がありません。
そのため、インデックス投資では、他人を出し抜いて抜け駆け的に自分だけが利益を独占することは想定されていません。みんなで一緒に指数の期待リターンを得て幸せになろうという、実に牧歌的な投資方法です。
インデックス投資には、市場予測も銘柄分析も不要です。
ただひたすらに毎月同じ金額でインデックスファンドを買い続け、一度買ったものは絶対に売らないという
固い決意さえあれば、投資の経験や能力が皆無であっても、誰でも市場平均のリターンを得ることができます。これに対し、市場平均のリターンで満足できない人は、時価総額比のパッシブファンドに投資するインデックス投資ではなくアクティブ投資をし、市場平均を上回るリターンを志向することになります。
退職金ぶちこみ太郎さんは、この点について、次のように述べます。
アクティブファンドが高額手数料で投資家がリターンを出せない時代は過去の話です。
ファンドも、投資家に寄り添ったアクティブファンドが次々と出ています。
今の時代は優良なアクティブファンドがあるので、活用するべきです。http://www.butikomi.tokyo/archives/25073881.htmlしかし、上記の主張は、3つの重大な問題点から目を背けていると言うべきです。
(1)優良なアクティブファンドがどれかを事前に判断する能力は、ファンドマネージャーと同程度の経験や知識がなければ身に付かない。
→ある専門職(医師や弁護士)が本当に優れているかは、同業者しか分からないのと一緒。我々は雰囲気で選ぶしかない。
(2)仮に優良なアクティブファンドがどれかを事前に判断できる能力があるならば、高いコストを支払ってアクティブファンドを買わなくても、個別株を買って自分でアクティブ投資をすればよい。
(3)我々は、自身の全てのリソース(職歴、学歴、資格歴)を投入して今の仕事についている。自身の全てのリソースを投入した今の仕事で満足できる収入を得ることができていないのに、畑違いのアクティブ投資において、専門的な訓練を受けた投資のプロたちと対等に渡り合い、投資のプロたちの平均的なリターンを上回るリターンをあげる能力があると思う人はイカれている。
退職金ぶちこみ太郎さんは、次のように述べ、アクティブ投資を推奨しています。
インデックス投資では資産を増やすのに時間が掛かるという事実を踏まえ、思い切ってアクティブファンドで投資をするのも良いと思いますよ。http://www.butikomi.tokyo/archives/25073881.html投資に回せるカネが少ないから、手堅いヒットを目指すインデックス投資ではなく、一発逆転ホームランを狙ってアクティブファンドに投資しようという誘いは、悪魔の誘惑と言うべきです。
カネがある人は、投資で100万、200万のカネがなくなっても痛くも痒くもありません。なぜなら、先進国株インデックスファンドであっても基準価額が1日で1%増減することはままあることですが、先進国株インデックスファンドを1億円保有している人にとっての100万円の増減はわずか1%にすぎないからです。
これに対し、投資資金が100万円しかない人にとっての100万円の増減は、当たれば2倍、外れればゼロの博打を意味します。
中にはこのような博打に連続して勝利し、最初の100万円を1億円、10億円に増やすことに成功した人もいるでしょう。そういう人の中には本を書いて自身の成功体験をアピールする人もいるため、その成功体験が非常に目立つわけですが、逆に言えば、本を出版できるということは滅多に起きない極めて珍しい事態であることを意味します。
どれほど低い成功確率であっても、針の穴をすり抜けて成功する人は確かに存在します。しかし、成功者の背後には、無数の失敗者が死屍累々と倒れていることを我々は忘れてはなりません。
そして、カネがない人は、手持ちの少ない投資資金を失った時点で即座に投資の世界から退場しなければなりません。
投資の世界は極めて厳しい世界です。
なぜなら、投資家がどれほどの研鑽を積み、能力に恵まれていたとしても、その半分は必然的に市場平均に負けてしまうことになるからです。
したがって、私は、カネがない人こそ、市場平均のリターンで満足できないと思うのではなく、
(1)自分には、アクティブ投資をする能力や、優良なアクティブファンドを見抜く能力はない
(2)少ない手持ち資金はまさに命のカネであり、それを失えば再び投資の世界に戻ることはできない(できたとしても再びカネを蓄えるまで長い時間がかかる)
ことを自覚し、市場平均のリターンで満足するように自分を説得すべきです。
退職金ぶちこみ太郎さんの記事のタイトルは、
インデックス投資だけで満足する人は、お金持ちにはなれないというものです。
しかし、投資だけで金持ちになろうという発想は、金持ちになれない人の発想だと私は考えます。
なぜなら、金持ちになりたいのであれば、自身の全てのリソースを投入した本業で金持ちになることを目指すべきだからです。
逆に言えば、自身の全てのリソースを投入した本業で金持ちになる方法が分からない人が、畑違いの投資の世界で金持ちになる方法を見つけることはできないと思うのです。
これに対し、本業を頑張っている人が自身の全ての精力を本業に集中しながら、より豊かでより自由な生活を送るためのプラスアルファのお金を準備したいと考えたとき、インデックス投資はそのための最良の手段になります。
天は自ら助くる者を助く、と言います。
インデックス投資に頼る前に、まずは本業を頑張るべきです。その上で、本業で得たお金でインデックスファンドを買い続ければ、いつしかお金に苦労することがない人生を送ることができるようになる、私はそのように思っています。
コメント
リスク資産の取崩し
本記事とは関係ありませんが一つご意見を伺いたいと思い、もしよろしければご返事ください。
投資を始めて20年以上になりますが、その時に最善と思われる投資対象を買って原則ホールドし、何度かの暴落にも耐えこの度アーリーリタイアする決断をしました。
今後は保持していた資産を徐々に取り崩して生活していく(投資は趣味の範囲で継続)予定ですが、はたと悩みが出てきました。
現在の投資対象は、eMAXIS Slimオールカントリーですが、それまで幾度も変遷あり、今後これらをどのような優先順位で現金化していこうかと思案中です。
過去の物ほど高い含み益がのっており、まだまだ長い人生(現在50代前半)を考えると繰延べた方がいいのではと思いますが、信託報酬が高かったり、リスクが高いので先に現金化すべきかとも思います。
男爵様ならどのような判断基準で現金化を進めていくか参考までにお聞かせいただけたら幸いです。
保有リスク資産
1.低信託報酬インデックスファンド(特定口座)
2.個別日本株
3.高信託報酬インデックスファンド(特定口座)
4.米国株ETF(VT等、一部一般口座もあり)
5.Jリート
6.金ETF
7.ビットコイン
8.低信託報酬インデックスファンド(NISA口座)
※3~7はもう投資していないが高含み益、2,8は今後も続ける予定
それでは今後も良質な記事を楽しみにしております。
2020/12/22 13:00 by S URL 編集
No title
良書を読み腹落ちをしてインデックス投資ガチホを決意した人々も、コロナ暴落相場では投げ売ってしまう。
なんとか我慢できた人も反転暴騰相場では他人より割負けしている焦りからテスラ株やARK社のETFに乗り換えてしまう。
「航路を守る」難しさは永遠なのでしょう。
そしてアクティブ投資家達が尽きないことで、パッシブ投資家が利益を得る構図も続いていくのでしょう。
2020/12/22 13:48 by ぽんすけ URL 編集
No title
>過去の物ほど高い含み益がのっており、まだまだ長い人生(現在50代前半)を考えると繰延べた方がいいのではと思います
課税の繰り延べをすると、含み益×20.315%の譲渡所得税相当額の運用利益を取得することができます。
72の法則によれば、おおよそ20年で2倍になることが期待できるため、譲渡所得税相当額の運用利益で譲渡所得税を支払うことができます。つまり、譲渡所得税を実質的に支払わずに済むことになるわけです。
他方で、売却するまで高い信託報酬を払い続けることになります。
どちらが得かは「乗り換えコストチェッカー」で確認してみてください。
https://www.valuetrust.net/tool/ctcc/howtouse.htm
ただ、私は、ごちゃごちゃしたログイン画面を見たくないという気持ちの問題から、古いファンドは基本的に売却しています。
>退職金ぶちこみ太郎さんの感覚はポピュラーだと思います。
売買したいという自分の気持ちとの戦いに打ち勝った人だけが報われるわけですが、時には善意の人がそれを揺るがそうとしてくるわけで大変です。
>アクティブ投資家達が尽きないことで、パッシブ投資家が利益を得る構図も続いていくのでしょう。
人よりも儲けたいという欲望は切りがないため、我々が何もしなくても多くのアクティブ投資家がこれからも生まれては死んでいくのでしょう。合掌。
2020/12/23 00:53 by たわら男爵 URL 編集
No title
当たり前の大原則ながら、誘惑は果てしないですね。
2020/12/23 07:50 by 通りすがり URL 編集
No title
>誘惑は果てしないですね。
我々は、煩悩からの解脱を目指さなければなりません。
2020/12/23 12:34 by たわら男爵 URL 編集
管理人のみ閲覧できます
2020/12/24 15:09 by 編集
けど人のブログなどに反論などの記事はつまらないです。
反論は、楽ですから記事にしたいのも分からないでもないですが…
2020/12/25 00:44 by URL 編集
No title
>人のブログなどに反論などの記事はつまらないです
このようなやり方で記事を作成すると、対立軸が明確になり、問題点が浮き彫りになるというメリットがあります。
私は、思想・表現の自由市場は建設的な批判がなされることで初めて意義あるものになっていくと考えており、自身の意見を外部に公表する以上、他者からの批判的な意見にさらされたとしても受忍すべきであると思っています。
2020/12/25 23:49 by たわら男爵 URL 編集
暴落時にはこのような記事お願いします
ジョン・ボーグルでもそうなのですから仕方ないのでしょうが・・・。とりあえず往って来いになったのですが、また次の暴落が必ずあるでしょうから、その時はこのような記事のアップをよろしくお願いいたします。
ところで、全く関係ない話ですが、革靴を愛用されていると以前の記事で読んだことがあります。お手入れはどのようにされておりますか?やはりシューキーパーは全足分必要でしょうか?
2020/12/27 01:16 by URL 編集
No title
>また次の暴落が必ずあるでしょうから、その時はこのような記事のアップをよろしくお願いいたします。
このブログは、読者のインデックス投資のペースメーカーになることを目指しています。
私が暴落時であっても淡々と均等額積立投資を継続する姿をお知らせすることで、脱落者が1人でも減ることを願っています。
>革靴を愛用されていると以前の記事で読んだことがあります。お手入れはどのようにされておりますか?やはりシューキーパーは全足分必要でしょうか?
1万円もしない安い靴ですから、履き潰して捨てています。
汚れたら靴クリーム(ステックタイプやスポンジタイプのもの)を塗るだけですが、もう数か月塗っていません。
2020/12/27 22:09 by たわら男爵 URL 編集