ネット証券会社、手数料無料化で経営悪化も、SBI証券の作戦だった

日経新聞電子版(2020/7/30 19:00)の下記記事を読みました。


●日米ネット証券、利益なき繁忙 手数料「ゼロ化」直撃
日米の主要なインターネット証券が売買手数料の無料化で収益減少に苦しんでいる。激しい顧客獲得競争の末、「利益なき繁忙」の様相を呈している。
「役員報酬を自主返納する」。auカブコム証券の斎藤正勝社長は打ち明ける。斎藤氏は自主返納の理由を「創業以来2度目の赤字の責任を取る」と説明する。
苦境の原因ははっきりしている。19年12月に信用取引の売買手数料の無料化に踏み切ったことだ。新型コロナで株式相場が急落した今年3月以降、株価が割安とみた個人投資家が売買を活発化した。信用取引の売買手数料という貴重な収益源を無料にしたauカブコムは売買活性化の恩恵を取り逃がしてしまった。
無料化に距離を置いた4社は最終利益が前年同期比5~8割増と大幅増益となった。あるネット証券首脳からは「取引手数料の無料化まで踏み込まなくて良かった」と安堵の声も漏れる。
手数料競争の口火を切ったSBIホールディングスの北尾吉孝社長は30日、4~6月期の決算説明会で「可及的速やかに手数料ゼロに向けて進めていく」と話した。
米ネット証券は手数料ゼロ時代に備えて収益源の多様化を進めている。例えば富裕層に資産運用を助言するRIA(登録投資顧問業者)の囲い込み。ネット証券はRIAから資産管理などを請け負うことで手数料を得る。最大手のシュワブは管理資産残高が1.8兆ドルに達した。
手数料に代わる新たな収益源を見いだせなければ、ネット証券の合従連衡は避けられない。7月末にSBIホールディングスが中堅のライブスター証券の買収を決めた。業界再編は今後加速する可能性が高い。



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SBIの北尾社長は、儲けを捨ててでも手数料ゼロをやる気のようです。
冒頭の記事では、なぜ北尾社長はそんなにやる気満々なのか、手数料ゼロ時代に日本の証券会社はどのようにして収益を確保していくのかについては触れられていません。

調べたところ、

●SBIの「宣言」で曲がり角を迎えたネット証券 手数料の無料化でこれからどう生き残るのか
https://toyokeizai.net/articles/-/329686

という記事(東洋経済オンライン2020/02/12 5:30)を見つけました。


まず、上記記事によれば、北尾社長が手数料ゼロを推進する動機は、次のとおりです。

SBIホールディングスの北尾氏は1月末の決算説明会で「(手数料無料化の)意図は2つ。LINEが野村と組んで入ってきた。提携による新規参入を封じ込めなくてはいけない。入ってくることに魅力がない(ビジネスだ)と思わせないといけない。それから業界再編(もある)」と明かした。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=2

要するに、北尾社長は、

(1)ネット証券他社の4~6倍の純利益があるSBIが率先して手数料ゼロ化を推進する。
(2)ネット証券他社も顧客離れを防ぐために追随せざるを得ないが、元々純利益がSBI証券の15~23%にすぎず余裕がないので経営が傾く。
(3)SBI証券は、経営が傾いた他社を食って大きくなる。
(4)手数料ゼロ化によってSBI証券の純利益も激減するが、その事実によって新規参入を封じる。

という壮大な戦略を描き、手数料ゼロ化を推進しているわけです。

また、SBI証券は、手数料ゼロ化後の収益源について、

収益に占める委託手数料の比率は25%(2018年度)。ホールセール(法人)部門の強化や他業種のM&A(合併・買収)を通じてこれを5%まで下げ、完全無料化に踏み切る構えだ。
ホールセールについて、SBI証券の髙村正人社長は「IPO(新規株式公開)の主幹事など株式・債券の引き受け業務が、伸びしろもあり大きな収益源になる」と話す。
M&Aについては買収先候補として、FX(外国為替証拠金取引)事業者、暗号資産事業者、M&A専門業者の3業種を検討している。SBIはネット証券同士のM&Aにも「話があれば」(髙村氏)と積極的。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=2

としています。

これに対し、SBI証券の手数料ゼロ化を迎え討たねばならないネット証券他社は大変です。

社長らの口からは「これは遊びやゲームではない」「合従連衡もありえる」「本当の第二の創業」といった危機感のにじむ言葉が飛び出した。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686

楽天証券の戦略は、次のとおりです。

楽天証券の楠雄治社長は、「手数料がゼロに近づくのはアメリカを見ていてわかっていた。十数年前から意識して、FXや米国株など収益源の多様化に努めてきた」と語る。
楽天証券は、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)と提携し、主に中間富裕層向けにコンサルティングを提供している。IFAを通じて売買された金融商品については、IFA手数料が支払われる仕組みだ。「大手対面証券に十分面倒を見てもらえていない、金融資産1000万~2000万円程度の中間富裕層にアドバイスの需要はある」
顧客獲得の面では、楽天ポイントを活用した顧客の囲い込み策が奏功している。同じグループ内の楽天カードと連携し、2018年10月からクレジットカードを使った投信の積み立て購入サービスを始めた。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=3


松井証券の戦略は、次のとおりです。

足元の手数料ゼロへの対応として、他社に先行し投信の販売手数料を無料化した。「他社の収益力を落とせば彼らも手数料への依存度が高まる。追随したSBIや楽天は(年間収益で)20億円失ったはず。当社はほぼ影響がない」。
必須となる代替収益源の確保には松井特有の足かせがある。約20年前に松井道夫社長の下、対面のビジネスモデルを否定してネット証券に転身し、成長してきた。IFAのような対面チャネルに「今さら先祖返りはできない」のだ。
そこで「預かり資産を増やし、とくに信用取引の活用をもっと広めていく。いかに現物のお客さんを信用取引の顧客にできるかが課題だ」
信用取引では、投資家が現金や株式を担保に証券会社から資金を借り、手元にある資金よりも多くの株式を売買する。投資家は証券会社から資金を借りるために金利を支払う。松井が狙うのは、この金利収入の増加だ。
信用取引以外では、資産形成層の取り込みに注力する。月間約5000ある新規口座のうち約半数が投資初心者だが、これをさらに増やす。就職・結婚や出産などを契機に投資を始めてもらえるよう、子育てメディアの「キズナ」や女性向けの健康管理アプリ「ルナルナ」と提携。今期は広告宣伝費を前期比25%増とし、「不安はぜんぶ、松井にぶつけろ」というキャッチコピーで広告出稿も増やしている。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=4


マネックス証券の戦略は、次のとおりです。

「アセットマネジメントサービスモデルへ移行する」
新会社では、高い運用成績を実現することで、その対価としての手数料の獲得を狙う。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=5

このことですね。

●マネックス証券の生き残りの秘策は、自社で作った高報酬ファンドを顧客に売りつけることだった
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1793.html


auカブコム証券の戦略は、次のとおりです。

手数料に代わる今後の収益源として、「カテゴリープラットフォーマー」としての地位確立も構想する。地場証券や地方銀行傘下の証券会社などに、自社で使っているシステムを大手より格段に安い価格で提供し、利用料収入を得たい考えだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6


上記記事は、

1人の顧客から得られる収益が薄くなる場合、一般的に企業が取るべき戦略は大きく2つある。顧客の数を増やして薄利多売に備えることと、より収益性の高いサービスに集中し顧客1人当たりの利益が増えるようにすることだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6

と述べた上で、各証券会社の顧客1人を獲得するためのコストが幾らかかるかを示しています。


楽天証券 6840円
SBI証券 7116円
松井証券 1万3621円
マネックス証券 2万1218円
auカブコム証券 2万3376円


楽天証券の顧客獲得コストが最も安いわけですが、上記記事はその理由について次のように述べます。

顧客獲得の近道となるのが「経済圏」への参加だ。経済圏とは共通ポイントを利用した顧客の囲い込み戦略のことで、経済圏全体で顧客獲得コストを負担するため、1社当たりの負担が軽くなる。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6

最も顧客獲得コストが高かったカブトットコム証券は、あえて「auカブコム証券」と改名することで、auユーザーの取り込みを狙ったようです。

auカブコム証券は昨年12月に提携が本格化。1カ月で新規に開設された口座のうち、「約3割がauユーザーからの流入」と、早くも経済圏の恩恵を受けている。
https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6

私なんかは「auという名前にブランド価値などないのに」と内心でバカにしていましたが、浅慮だったようです。
auは素晴らしい歌も発表しています。

「みんながみんな英雄」
https://www.youtube.com/watch?v=tlETK9XC0OQ

「海の声」
https://www.youtube.com/watch?v=-zQWavER7to


そして、SBI証券は、ヤフーと提携を試みました。

王者SBIも例外ではない。「Zホールディングス(旧ヤフー)との提携は経済圏を取りに行った」施策だった。昨年10月にZホールディングスと業務提携を発表し、まずはYahoo! JAPAN IDなどの共通利用からスタートするとしていた。
ただし、そのわずか1カ月後にはZホールディングスがLINEとの経営統合を発表した。野村証券との合弁のLINE証券を抱えるLINEとの統合は、SBI証券とZホールディングスの提携の行方を不透明にしてしまった。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6

これに対し、北尾社長は、

「つまらん小細工をするんやったら、ちょっと懲らしめてやろう」
https://toyokeizai.net/articles/-/329686

と激怒し、手数料ゼロ化をより一層推し進める原動力になったようです。

ただ、上記記事が指摘するとおり、

アメリカのネット証券業界は、委託手数料や信用取引の金利などで稼ぐモデルからの脱却を1990年代から始めていた。そのうえで現在無料化に進んでいるというのだ。
国内のネット証券は手数料以外の差別化要因に乏しい状況が続いてきた。裏返せば、格安手数料以外の付加価値を顧客に提供してこなかったともいえる。このまま手数料完全無料の時代に突入すれば、激しい消耗戦が始まる。その中で生き残れる企業は少ないだろう。

https://toyokeizai.net/articles/-/329686?page=6

ということになるわけですが、それこそがネット証券他社を食い尽くそうとするSBI証券の狙いなのでしょうね。

このような視点で考えると、SBI証券が三井住友カードと提携してクレジットカード決済による投資信託の購入サービスを導入するのは、楽天経済圏を突き崩すためであることが分かってきます。

実におそろしいわけですが、SBIが他社を食い尽くした一強時代の到来は将来的なサービス悪化を招くリスクがあって望ましくないため、ぜひ楽天証券には踏ん張ってもらいたいところです。

そして、マネックス証券は、早急にDRIP(配当金自動再投資サービス)を導入してください。
頼んだよ。
LINE証券

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コメント

No title

ネット証券も戦国時代の様相を呈してきているのですね。
親族が来年創立100周年を迎える中堅?の証券会社に就職するのですが、ネット証券でも大変な時代に対面証券に未来があるのか心配が尽きません。

No title

コメントありがとうございます。

>親族が来年創立100周年を迎える中堅?の証券会社に就職するのですが、ネット証券でも大変な時代に対面証券に未来があるのか心配が尽きません。

とても大変そうですね。
証券会社は創業100年を超えるところが結構ありますが、松井証券でさえ危ういわけですから、生き残るのは大変そうです。

カード投資も
楽天証券の劣化版にしか思えないけど

No title

コメントありがとうございます。

>カード投資も楽天証券の劣化版にしか思えないけど

楽天証券のように販促品として位置付けることができませんので、頑張ったほうではないかと考えています。

普通の顧客にとっては、カード決済が全くできないと楽天証券に移ろうかという気持ちになるでしょうが、還元率が1%なのか0.5%なのかは証券会社を変更する理由にはならないのではないかと思うからです。
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