まず、電子申告のやり方については、下記記事をご覧ください。
●確定申告書を電子申告で提出しました
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1199.html私は、VTの分配金については、所得税との関係では総合課税で確定申告し、住民税との関係では申告不要制度を利用して特定口座(源泉徴収あり)内で完結させています。
なぜなら、このようにしたほうが税金が安くなるからです。
特定口座(源泉徴収あり)の税率は、所得税15.315%、住民税5%です。
これに対し、総合課税で税務申告すると、所得税は超過累進課税となり、住民税は一律10%となります。この時点で住民税の税率は5%から10%に倍増するため、住民税との関係では特定口座(源泉徴収あり)から出さないほうが得です。
※国民健康保険で法定減額の対象となるかどうか(33万円以下であれば国民健康保険料が7割減額され3割で済みますが、33万円を超えると支払額が5割に増えてしまいます)、国民年金で免除の対象となるかどうかの判定基準は住民税の課税対象となる所得の金額で判断されます。
配当所得を特定口座(源泉徴収あり)から外に出してしまうと、これらの掛金アップに直結する(特に国民健康保険料の7割減額の判定基準である33万円を超えてしまう)というデメリットがあります。
このように住民税は特定口座(源泉徴収あり)から外に出すべきではないため、申告不要制度を利用すべきですが、所得税は総合課税で確定申告したほうが有利です。
なぜなら、総合課税の税率は、課税所得が330万円以下であれば10%で済むからです。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htmつまり、配当所得のほかに課税所得がないときは、配当金のうち、195万円以下の部分の所得税は15%から5%に、195万円を超えて330万円以下の部分の所得税は15%から10%に減ることになり、その差額分だけ得をします。
しかも、所得控除が効きます。
誰でも38万円の基礎控除を持っています。配偶者を扶養していれば38万円の配偶者控除があります。
国民健康保険料は社会保険料控除(支払った金額全額)、学資保険や掛け捨ての生命保険は生命保険料控除(旧生命保険料の上限5万円)、地震保険は地震保険料控除(上限5万円)があります。
これらはおおよそ100万円です。
仮にVTの分配金が200万円(相当のドル)とします。
このうちアメリカが10%を源泉徴収しますので、特定口座(源泉徴収あり)の処理は、残りの180万円×20.315%=36万5670円(所得税27万5670円、住民税9万円)を源泉徴収し、143万4330円相当のドルを顧客の口座に入金するというものになります。
これを所得税との関係では総合課税で申告すると、次のようになります。
所得税の収入金額 200万円
アメリカ源泉税 20万円
住民税 9万円(180万円×5%)
所得税の収入金額は200万円(アメリカ源泉税と住民税を差し引く前の金額)となりますが、200万円について所得税率を掛けるのではなく、所得控除と外国税額控除が効きます。
所得控除ですが、上記のように、配偶者がいる人は誰でも100万円程度の所得控除はあります(私は国民年金の免除申請をしていますが、本人・配偶者の2人分の国民年金を払っている人は20万円×2人分=40万円増えることになります)。
とりあえず所得控除の合計額(確定申告書B第1表整理番号25)が100万円とすると、課税される所得金額(確定申告書B第1表整理番号26)は100万円となります。
これに対する所得税率は5%ですので、所得税額は5万円(復興所得税2.1%を加算すると5万1050円)となります。特定口座(源泉徴収あり)で徴収された所得税額は27万5670円ですので、この時点で22万4620円安くなります(還付されます)。
今回のテーマは、更に外国税額控除をするとどうなるかということです。
外国税額控除をするには、「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」に必要事項を記載して確定申告書と一緒に電子申告する必要があります。
※確定申告書(第1表・第2表)と青色申告決算書はMFクラウド確定申告のデータをe-Taxソフトに取り込むことで自動作成されます(ただし、本人と妻子のマイナンバーをe-Taxソフトで表示した帳簿に入力しなければなりません)。
MFクラウド確定申告には「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」はありませんが、e-Taxソフトには用意されていますので、これだけを追加して入力することになります。
私はこれまで、外国税額控除は他に所得がなければ利用できないと誤解していましたが、総合課税申告をした配当所得でも大丈夫でした。
つまり、設例で言えば総合課税申告をした配当所得の所得税が5万1050円ですので、これを外国税額控除の対象にすることができます。
外国税額控除の具体的な金額は、国外所得金額を所得総額で割り、これに所得税額を掛けることで計算します(e-Taxソフトの「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」が自動計算してくれます)。
つまり、
米国ETFの分配金しか所得がなければ、国外所得金額200万円÷所得総額200万円=1、所得税額5万1050円×1=外国税額控除5万1050円となり、
最終的に所得税額はゼロとなるわけです。
確定申告電話相談センター(最寄りの税務署に電話し、音声ガイダンスが流れたら「0」をプッシュすると転送されます)に別件で電話する必要があったので軽い気持ちで聞いてみたところ、課税所得が米国株の配当金しかなければ所得税は全額還付されることになると言われ、非常にびっくりしました。
私は、他に事業所得と日本株の配当金を総合課税で申告をしています。
事業所得については、各種経費と青色申告特別控除を駆使したところ、課税所得はゼロになりましたので、外国税額控除の計算式の「所得総額」にはカウントされません。
そのため、私のケースでは「所得総額」にカウントされる所得は「米国ETFの分配金+日本株の配当金(総合課税申告をした配当金に限る)」となりました。外国税額控除は所得税の100%ではありませんが、日本株の配当金は米国ETFの分配金と比較すると微々たるものですので、ほぼ100%に近い所得税が還付されることになります。
日本株の配当金には配当控除があります。
配当控除は配当金の10%です(特定口座源泉徴収ありでは、口座ごとの配当金の合計額に10%を掛ける。1円未満は1円に切り上げる)。
これは非常な破壊力があります。
しかし、外国税額控除にも絶大な破壊力があることが分かりました。
米国ETFの分配金の税率は28.2835%(アメリカ源泉税10%、日本源泉税18.2835%)ですが、所得控除や外国税額控除を駆使して所得税をゼロにすることができれば、14.5%(アメリカ源泉税10%、住民税4.5%)に半減することになるからです。
なお、過去分の確定申告について、平成22年所得税までは当初申告要件(外国税額控除を適用するためには確定申告書に記載することが必須)がありましたが、平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する所得税については当初申告要件が撤廃されたことから、5年以内であれば更正の請求をすることで外国税額控除を受けることができます。
※5年以内とは、法定申告期限から5年以内という意味です。例えば、2019年1月1日から12月31日までの所得の法定申告期限は2020年3月17日ですので(3月15日が休日のため、休日明けが期限となります)、2025年3月17日まで更正の請求をすることができます。
しかし、更正の請求をすると、税務署が過去分の確定申告書をじっくり確認することになり、税務調査を誘発するリスクがあります。
税務申告をする際に最も重要な点は、とにかく目立たないようにするということです。
更正の請求をすると極めて目立ちますので、数千円とか数万円のためにすることは避けるべきです。
コメント
自分で確定申告するのは難しいので
来月外国税額控除をするときに税理士さんにこういう方法があると相談してみようと思います。
有益な情報ありがとうございました。
2020/01/22 12:34 by URL 編集
配当金額がどんなに大きくても、配当所得のほかに課税所得がなく、配当所得が全て外国株によるものであれば、配当にかかる税金は所得税0%住民税5%になるという理解で合っていますでしょうか。
もしそうなら、リタイア後の人は、トータルリターンが同じなら売却益ではなく配当益の方が有利ということになりますよね。
リタイア後も配当を使い切れず配当のほとんどを再投資するほどの資産家でない限り、リタイア後は配当再投資型の投資信託よりETFがいい、トータルリターンが同じなら無配株より高配当株の方が有利、ということになるんでしょうか。
配当だけでなく元本も切り崩す人であれば、超過累進課税の税率が高くなってしまう場合はこの作戦は取れないのですね。
また、VTのように日本株が混ざったETFの外国税額控除の扱いはどのようになるのでしょう。
たくさん質問して申し訳ありません。
2020/01/22 14:45 by URL 編集
2020/01/22 14:57 by リタイアしたい URL 編集
No title
>来月外国税額控除をするときに税理士さんにこういう方法があると相談してみようと思います。
この記事をプリントアウトして渡してあげてください。
その場で渡してもおそらく即答できず、互いに気まずい気持ちになるでしょうから、事前にFAX等しておいたほうがよいと思います。
なお、本業で顧問税理士を頼んでいるのでなければ、税務署に資料一式を持って相談に行くと無料で親切に教えてくれます。
確定申告シーズン(2/16~3/15)を外して今の時期に行くのがコツです。
>配当金額がどんなに大きくても、配当所得のほかに課税所得がなく、配当所得が全て外国株によるものであれば、配当にかかる税金は所得税0%住民税5%になるという理解で合っていますでしょうか。
相談センターの人は、額の多寡にかかわらず米国株の配当所得しかなければ所得税はゼロ円になると言っていました。
>リタイア後の人は、トータルリターンが同じなら売却益ではなく配当益の方が有利ということになりますよね。
外国税額控除によって所得税が全額還付されたとしても、アメリカ源泉税10%+住民税4.5%=14.5%は源泉徴収されたままです。
これに対し、売却すると含み益(値上がり益)に20.315%の所得税・住民税が課税されます。
特定口座(源泉徴収あり)から外に出して申告すると申告分離課税となりますので(譲渡所得は配当所得のように総合課税を選択できません)、税率は20.315%のままです(総合課税の他の所得で所得控除を使い切らない限り、所得控除は効きます)。
どうせリスク資産を取り崩してリタイヤ生活を送るのであれば、譲渡所得(常に20.315%)ではなく配当所得(最小で14.5%)で生活費をまかなったほうが税率の点では有利だと思います。
>配当だけでなく元本も切り崩す人であれば、超過累進課税の税率が高くなってしまう場合はこの作戦は取れないのですね。
元本の取り崩しは譲渡所得になり、総合課税で申告することができませんので、税率は常に20.315%となります。
超過累進課税と言っても誰でも100万円程度の所得控除はあるでしょうから、実質430万円以下の配当所得であれば総合課税で申告したほうが税率の点では得をします。
年430万円の配当金は年率4%の配当利回りとして1億750万円のリスク資産が必要です。
VTの配当利回りは2.27%ですから、1億8942万円のVTが必要です。
したがって、普通の人は税率を気にする必要はなく、総合課税で申告して外国税額控除を適用したほうが得をします。
>VTのように日本株が混ざったETFの外国税額控除の扱いはどのようになるのでしょう。
私は、米国ETFはその保有資産に日本株を含むかどうかに関係なく、普通の米国株と全く同じように外国税額控除を利用することができると理解しています。
>2重、3重課税問題を忘れていました。
三重課税コスト問題と言っても0.1%程度にすぎません。
VTの経費率にはその他コストを含むため、三重課税コストを加味したトータルコストは0.19%前後であると推測されます。
このコスト水準は先進国株インデックスファンドのトータルコストと大差ないことから、指数との乖離を心配する必要がないVTを選んで配当金生活を目指すこともひとつの見識だと思います。
2020/01/22 19:48 by たわら男爵 URL 編集
住民税申告不要制度は、配当所得だけの適用できるんでしょうか?
私も、先週e-taxで確定申告を済ませました。私は、給与所得、不動産所得、農業所得、配当所得、雑所得あります。
2020/01/22 21:12 by ペッパーピグ URL 編集
No title
大変参考になりました。
2020/01/22 23:36 by リタイアしたい URL 編集
No title
>住民税申告不要制度は、配当所得だけの適用できるんでしょうか?
申告不要制度という名称ですが、住民税の申告書(配当所得はゼロ円としたもの)を提出し、そこに「所得税について配当所得の申告をしましたが、住民税についてはいたしません。」という希望を記載するものとなります。
住民税について配当所得を除く税務申告をすることで、所得税の配当所得を含む税務申告が住民税の申告に反映されることを防ぐ効果が発生します。
なお、各市町村によって申告書は異なります。「配当所得について申告不要制度を利用する」というチェックマークにチェックをするだけでいいところから、全ての所得(配当所得のみゼロ円)を手書きで記載させるところまで様々です。
ただし、どこの市町村でも所得税の確定申告書のコピーの添付を求められますし、納税者の側としても住民税の配当所得をゼロ円にしたいだけで数字の書き間違いがあると面倒ですから、求められなくてもコピーを添付すべきです(間違っていても役所で訂正してくれる=郵送提出後に訂正ために役所に出頭する必要がないという絶大なメリットがあります)。
>大変参考になりました。
よかったです。
2020/01/23 11:45 by たわら男爵 URL 編集
そのうえで、所得控除限度額を超えた課税所得がある場合は、従来どおりその課税所得額が多いほうが得なんですか?
2020/01/23 15:50 by URL 編集
No title
>所得控除限度額を超えた課税所得がある場合は、従来どおりその課税所得額が多いほうが得なんですか?
米国ETFの分配金しか課税所得がないときは、所得控除の有無に関係なく外国税額控除によって所得税はゼロ円となります。
これに対し、米国ETFの分配金のほかに課税所得があるときは、所得控除後(日本株の配当控除もした後)の所得税額×(国外所得金額÷所得総額)で計算します。
したがって、米国ETFの分配金ではない課税所得があればあるほど外国税額控除の金額は少なくなり、納税すべき所得税額は増えることになります。
2020/01/23 18:02 by たわら男爵 URL 編集
画期的な情報です
この情報で手取り収入UPを図りたいと思います。
記事抜粋「税務申告をする際に最も重要な点は、とにかく目立たないようにするということです。更正の請求をすると極めて目立ちますので、数千円とか数万円のためにすることは避けるべきです。」←この記述も秀逸ですね。まさにかゆいところに手が届いています。
2020/01/27 14:42 by 宗助 URL 編集
No title
>他の書籍やブログでも同様にできないという記述しか無かったと記憶しております。
私もすっかり誤解していました。
よく外国税額控除をしてもほとんど効果がないと書かれています。しかし、本業の収入が極めて多いのに対して米国株の配当金収入が少ないことから、総所得に占める米国株の配当金所得の割合が僅少であるという前提があったわけです。
米国株で配当金生活をするという状況は極めてニッチですので、外国税控除を利用したほうが得だとはっきりとしたアドバイスをする人はいなかったのでしょうね。
2020/01/28 00:15 by たわら男爵 URL 編集