超低コスト競争が行きつく果て

日経電子版2020/1/10 4:30の記事を読みました。

●米投信協会プレジデント「日本の運用業界、DC拡大がカギ」
「日本の資産運用業界にはまだまだ潜在的な力が残っている。未来への扉を開く鍵となるのは、確定拠出年金(DC)の構造を革新的に変えていくことだ」
「具体的には3つの方法があると考える。拠出額の上限を上げること。税制優遇により制度利用のメリットを一層拡大すること。そして、資産の成長が期待できる投信を(運用方法を個人が指定しない場合に自動的に資金が導入される)デフォルト商品として組み込むことだ」
「伝統的なアクティブ運用からインデックス運用への移行の流れが、ファンドの収益性に対する圧力となる現象は、各国で生じている」
「このような状況にも希望はある。例えば、ESG(社会、環境、ガバナンス)投資への関心の高まりだ。我々が現在抱いているESGの考え方が10年後にどう変化するかは分からない。つまり最良のESG投資とは何かという問題は、投資家や運用者が自分自身で考えていくべきということだ。従ってESGの枠組みを政府が決めつけることなく、その方向性を運用者や投資家が自発的に選択することのできる環境が各国で生まれることが大切だ」



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まず、DCの拡充が「貯蓄から投資へ」を実現する鍵となる理由は、金額が大きいからでしょう。
DCを魅力的にし、より多額の掛金を投入させる一方で途中解約できないようにすれば、自然とリスク資産が積み上がっていくことになりますので、非常にうまい手だと思います。

ただ、私は、つみたてNISAの拡充のほうが効果的だと考えます。

つみたてNISAは、上限40万円・運用期間20年の非税投資枠が毎年1本ずつ20年連続で付与される制度です。
非課税投資枠は1年で1本ずつしか付与されず、その年が終わるまでに利用しなければ消滅してしまいますし、20年の運用期間が満了するまでに売却すると、残りの非課税運用期間の利益を放棄することになってしまいます。

したがって、その年の非課税運用枠を上限まで利用しなければ損をするし、途中で売却しても損をするということが周知されれば、自分のお金を「貯蓄から投資へ」移転する動機付けになるでしょう。

私は、つみたてNISAは、生まれてから死ぬまでの間に毎年1本ずつの非課税投資枠を付与し(各非課税投資枠に投資できる期間はその年が終わるまで。枠が余っても翌年以降には繰り越すことができない)、非課税運用期間は死ぬまでにすべきであると考えます。
そうすると、非課税投資枠の上限まで利用しなければ損をするし、途中で売却しても損をするという状況を作り出すことができますので、この事実が周知されればみなが競ってつみたてNSAをし、死ぬまで売却せずにホールドし続けることになるでしょう。

「貯蓄から投資へ」を実現するためには、貯蓄よりも投資をしたほうが得だと思わせる仕掛けを作ることが重要です。
たとえば、未成年者のつみたてNISAについて、成人までは売却を制限する代わりにつみたてNISAの購入額の半額ないし3分の1を国が援助することにすれば、若い世代にお金が流れるきっかけにすることもできます。


このように、「貯蓄から投資へ」を実現するための方策は色々と考えられるものの、信託報酬が低コスト化することに対しては有効な対策がありません。
記事の中でESGが例に挙げられているのは、時価総額比の単純なインデックスファンドでは信託報酬を安くしなければ売れない一方で、色々と複雑な仕組みを作れば、複雑な仕組みの分だけ信託報酬を高くすることができるからと思われます。
つまり、ファンドの仕組みを複雑にすれば、信託報酬を高くしても客は納得するわけです。
これで成功したのがグローバル3倍3分法です。

しかし、単純な時価総額比のインデックスファンドからテーマ投資に流れが変わるとは思えません。
これは「打つ手がない」ことを自認するに等しく、結局のところは、バンガード社が実践しているとおり、純資産額を増やすことで、1件1件から得られる報酬は少なくてもそれらを集めた全体の報酬はそこそこの金額になるという作戦を目指すしかないのでしょう。

VT(全世界株ETF)は、昨年末、経費率を0.09%から0.08%に引き下げました。
経費率0.09%の内訳は、信託報酬0.07%、運用コスト0.02%です。
経費率0.09%を0.08%に引き下げたことで、信託報酬0.07%がいくらになるのかはまだ分かりませんが、仮に信託報酬が0.06%とすると、VTの純資産額は130億ドルですから、その0.06%は780万ドル=8億5800万円(1ドル110円換算)となります。

130億ドルは1兆4300億円です。
これだけの純資産額を集めてようやく8億5800万円の売上げになるわけですから、普通の運用会社がインデックスファンドの運用に手を出して儲かるとは思えません。

これだけの純資産額を集めることができなければ信託報酬を高くするしかないわけですが、いまさら超低コスト競争をなかったことにはできませんし、もしなかったことにすれば米国ETFにカネが流れることになるだけです。

現在は、誰も有効な対策のないまま、超低コスト競争だけが加速しているという状況です。
超低コスト競争に参加しても明るい未来は来そうにないものの、参加しなければ未来を心配する前にファンドが純資産額を集めることができずに死んでしまいます。

私がバンガード社が好きな理由は、ファンド保有者が株主であるということがどういう意味なのかは全く分からないものの、規模の拡大によって増えたお金は全て経費率を引き下げるために使う(バンガード社は儲けを追求しない)というコンセプトが非常に分かりやすいからです。

私がたわら先進国株が好きな理由は、企業DC等で集めた巨額のマザーファンドが遊んでいるからそれを個人客にも販売して有効活用しようというコンセプトが非常に分かりやすいからです。

両者に共通するのは、「なぜ安くできるのか」という仕組みが分かりやすく納得できるものであり、競争のために無理をして値下げをしているわけではないという点です。

ニッセイ外国株やスリム先進国株がどれほど純資産額を集めたとしても、今のコスト水準で儲かるとはとても思えません。
アットコスト(当該ファンド内で収支トントンにする)というコンセプトで運用しているVTの信託報酬が0.06%なわけですから、それよりも安くてやっていけるはずがないと思うのです。

※VTはETFであり、運用の手間とコストを証券会社に丸投げすることができます。それでも0.06%の信託報酬をもらわなければやっていけない(アットコストにならずに赤字になる)わけですから、運用の手間とコストが掛かるインデックスファンドがVTよりも安い信託報酬で果たしてやっていけるのでしょうか。

※バンガード社はVTの信託報酬0.06%を総取りできますが、ニッセイ外国株やスリム外国株は販売会社・信託銀国と信託報酬を分け合わなければなりませんので、更に条件は悪いです。

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コメント

本記事とは無関係のコメントです。

キャンペーンで「セブンカード・プラス」を申込むと1,000 nanacoポイントプレゼントとのことです。

nanacoチャージは1.2%還元のリクルートカードが最強ですが、ポイント還元であり用途が限定され使い勝手が良いとは言えません。例えばPontaに換えてローソンで不要不急なものを買うことになります。
それならいっそのこと還元率が0.5%でも現金還元になるセブンカードプラスの方が使い勝手が良いと言えるのではないでしょうか。

男爵さんのご意見を伺いたく。

すみません。訂正します。
セブンカードプラスは現金還元ではなくnanaco還元でした。

nanacoの方が税金払いに使い勝手が良いとは思います。

No title

コメントありがとうございます。

>nanacoチャージは1.2%還元のリクルートカードが最強です

今春、auウォレットポイントがなくなってポンタに統合されることから、dポイント(プリペイドカードにチャージ可)のようにauウォレットプリペイドにチャージして利用できるようになるのではないかと期待しています。

これがダメでも、私の場合はガソリンスタンドで利用すればすぐに使い切ることができますので、それほど負担には感じていません。

>還元率が0.5%でもnanaco還元になるセブンカードプラスの方が使い勝手が良いと言えるのではないでしょうか。

私の場合は国保の11万円、固定資産税の20万5000円だけですので、そのためだけにカードを作る気にはなれません。
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Painter:ますい画伯
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ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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