インデックス投信、「隠れコスト」のワナ

日経新聞電子版11月18日2時配信の記事を読みました。


●隆盛インデックス投信、「隠れコスト」のワナ
代表的な保有コストである信託報酬が低いものを選べばいいと考える人が大半だが、実は必ずしもそうとは言い切れない。信託報酬以外の「隠れコスト」や、連動対象とする指数の特性、資金流出入の動向など多様な要因が成績を左右する。過去の運用成績をきちんとみることが大事だ。
保有コストは実は信託報酬だけではない。組み入れ銘柄の売買コストや海外資産の保管料、監査費用などが別途かかる。その多くは運用報告書を詳細にみればわかるが、組み入れ銘柄の売買の相対取引などの費用は表示されないことも多く、完全にはわからない。購入時に信託報酬ほどはっきり提示されないという意味で「隠れコスト」と呼んでもいいだろう。信託報酬にこうしたその他コストを加えた全体が実質コストと呼ばれる。
運用担当者が銘柄やタイミングを選ぶため成績格差が出やすいアクティブ型に比べて、指数に連動するだけのインデックス投信は過去の成績の調査がそれほど重要ではないという見方が従来多かった。
しかし信託報酬以外でリターン格差をもたらす様々な要因は運用報告書だけでは完全にはわからない。そうした全ての要因が最終的に表れるのは、連動対象指数とのリターン格差。つまり実際の成績だ。
信託報酬が今やほんのわずかな差になっているだけに、それ以外の要因の影響が大きくなりつつあるのが現状だ。インデックス投信でより緻密に成績向上を目指すには、運用リポートなどで開示されている連動対象指数とのリターン格差に、より大きな注意を払う必要がありそうだ。




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これは田村正之さんの署名記事です。
しかし、残念ながら間違っています。


まず最初に、田村さんは「過去の運用成績をきちんとみることが大事だ」と述べています。
田村さんは最後に「全ての要因が最終的に表れるのは、連動対象指数とのリターン格差。つまり実際の成績だ」と述べていることから、「過去の運用成績」=「指数とのリターン格差」(乖離率)であると定義していることが分かります。

しかし、指数との乖離率は投資信託の比較の視点としては使えません。
なぜなら、指数との乖離率は公開情報ではないからです。

まず、運用報告書ですが、投資信託とベンチマーク双方の「期中騰落率」が記載されています。
たわら先進国株の最新の運用報告書の期中騰落率は2.8%、ベンチマークは3.3%ですので、たわら先進国株はベンチマークを0.5%下回ったことになります。

しかし、ここで注意しなければ「期中」騰落率であるということです。
「期中」とは「前年の決算日の翌日から当年の決算日まで」を意味します。したがって、決算日が同じ投資信託でない限り、運用報告書を見ても乖離率で比較することはできません。
ちなみに、たわら先進国株の決算日は毎年10月12日、スリム先進国株は毎年4月25日、ニッセイ外国株は11月20日であり、全てバラバラです。

つぎに、月次報告書です。
こちらは「月次」ですから、当月の初日から末日までの情報が記載されています。
http://www.am-one.co.jp/fund/pdf/313125/313125_mr.pdf
https://emaxis.jp/pdf/geppou/252653/252653_201910.pdf
https://www.nam.co.jp/report/monthly/m121332-191115.pdf


月次報告書には、投資信託とベンチマークの騰落率について、1か月、3か月、6か月、1年、3年分が記載されています。
しかし、よく見ると指数提供会社から提供を受けているはずのベンチマークの騰落率が各投資信託によって異なっていることに気づくでしょう。

本来であれば異なるはずのないベンチマークの騰落率が異なっているということが何を意味するのかというと、各投資信託によってベンチマークが異なっているということです。


●【基礎知識】指数の種類
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-757.html


上記記事で整理したように、実は指数は1種類ではなく3種類あります。


プライス 「配当除く」指数
ネット 「配当込」指数(配当は課税後配当)
グロス 「配当込」指数(配当は課税前配当)


というものですが、各投資信託が採用しているベンチマークは、


プライス スリム先進国株(~2019.6.30)
ネット スリム先進国株(2019.7.1~)、ニッセイ外国株
グロス たわら先進国


というようにバラバラです。

したがって、月次報告書から分かるベンチマークとの乖離率を見たとしても、各投資信託によってベンチマークが異なるため、比較の視点とはなりません。

田村さんは「インデックス投信でより緻密に成績向上を目指すには、運用リポートなどで開示されている連動対象指数とのリターン格差に、より大きな注意を払う必要がありそうだ。」と結論づけていますが、運用リポートに大きな注意を払っても何も分かりません。

結局どうしたらよいかと言えば、基準価格の騰落率を比較するしかありません。
しかも、ある特定日と別の特定日の2点の基準価額の騰落率で比較しても不正確です。なぜなら、基準価額は毎日変動するからです。

私がインデックスマラソンをしているのは、マイページで毎日の基準価額の変動によるリターン差を一瞥することができるため、これを見て、


「やっぱり先進国株100%でいいね」


という事実を確認するためです。

しかし、自分で確認するのが面倒な人のために、2つのサイトをご紹介します。


1つめのサイトは、ダイヤモンドザイが提供しているものです。
https://diamond.jp/articles/-/131949

スリム先進国株は純資産額が500億円以上になった部分の信託報酬が引き下げられていますが、それも反映されています。
運用報告書から判明した実質コストも明記されていますので、これを見ればインデックスファンドのコスト水準の現状を概観することができます。


2つめのサイトは、三井住友トラストアセットマネジメントが提供しているものです。
https://smt-am.mfund.jp/

これは基準価額の騰落率で比較しているものです。
一括投資と毎月積立ての2パターンの騰落率の推移をグラフで見ることができます。


というわけで、各投資信託を比較するためには、信託報酬や運用報告書を分析して判明する実質コストだけではなく、基準価額の騰落率に着目しなければならないところ、毎営業日積立が可能になり、基準価額の騰落率で比較するツールを提供するサイトが登場するなど、徐々に時代は進んでいるというお話でした。

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コメント

No title

偶々か意図的かと勘ぐってしまうくらい綺麗に先進国株式のベンチマークが3つとも違うんですね
決算日が違うので,同じアセットクラスでベンチマークが同じでも異なるファンドをきちんと比較するのは難しいというか意味があまりなさそうですね

No title

くは72さん、コメントありがとうございます。

>偶々か意図的かと勘ぐってしまうくらい綺麗に先進国株式のベンチマークが3つとも違うんですね

そうですよね。
決算日が違う運用報告書は仕方ないとしても、月次報告書を見ても比較できないのは残念です。

なお、コメントをいただいてスリム先進国株が配当込み指数にベンチマークを変更したことを思い出しましたので、本文を訂正してあります。
なぜたわら先進国株が下方乖離を宿命づけられている課税前配当指数をベンチマークにしているのかは分かりませんが、マザーファンドができた当時はここら辺は余り意識されていなかったのかもしれません。

男爵様、いつもこちらで勉強させていただいております。
ご多忙のところ大変恐縮ですが、もしよろしければ来年のつみたてNISA等についてご相談させて下さい。
現在楽天でつみたてNISAでslim先進国33,333円、特定口座でslim先進国16,667円、イデコで楽天全米23,000円、投信以外は個人年金25,000円を毎月積み立て中です。
あと余剰金があれば本当に微々たる金額ですがslim先進国、slim米国、楽天全米を特定口座で時々買っています。この三種なのは比較してみたいという単なる好奇心です。
イデコは手数料値下げした事もあり楽天全米から男爵様イチオシのたわら先進国に変更しました。
しかしつみたてNISAと特定口座では来年は何を積み立てればいいのか思い悩んでおります。現在検討しているのはたわら先進国、slim先進国、slim米国です。
イデコとつみたてNISA・特定口座の積み立ては別の投信がいいでしょうか?
たいした金額ではないなら同じ投信でもいいでしょうか?
投資は自己責任と承知しておりますがもしよろしければお知恵をお貸し下さい。

No title

コメントありがとうございます。

>つみたてNISAと特定口座では来年は何を積み立てればいいのか思い悩んでおります。現在検討しているのはたわら先進国、slim先進国、slim米国です。イデコとつみたてNISA・特定口座の積み立ては別の投信がいいでしょうか?


私ならば、全ての口座でたわら先進国株だけを買い続けます。
私は、インデックス投資の目的は資産形成であって、人生の楽しみは別に見つけるべきであると考えています。無味乾燥な投資方法を選択し、あとは忘れてしまうのが一番だと思います。

男爵様
さっそくのお返事ありがとうございます。
長々と書き込んでしまい申し訳ありませんでした。
貴重なアドバイスをいただき助かりました。
無駄に思い悩まず淡々と積み立てていこうと思います。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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