債券でヘッジする時代は終わった~かつてのようなフリーランチはもう存在しない

債券にレバレッジを掛けるバランスファンドが人気です。

その嚆矢はグローバル3倍3分法です。
グローバル3倍3分法は、3%の証拠金で20%の日本株先物と200%の債券先物を買う仕組みです。
日本株にもレバレッジを掛けていますが、もっぱら値動きが少ない債券に多くのレバレッジを掛けるという工夫をしています。

グローバル3倍3分法の大成功を受け、レバレッジ型バランスファンドが雨後のタケノコのように新規設定されています。
私は、その中で最も有望なのは楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(配分比は、VTI90%、米国債先物270%)ではないかと考えています。


●「楽天・米国レバレッジバランス・ファンド」が23日から募集開始
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1516.html



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しかし、レバレッジ型バランスファンドは債券先物を利用し、債券にレバレッジを掛けます。
グローバル3倍3分法は証拠金を3%しか差し入れていませんので、かなりのレバレッジを掛けていることが分かります。

レバレッジを掛けるということは、リターンだけでなくリスクにもレバレッジが掛かるということを意味します。
債券のリターンが良いときはレバレッジを掛けた分だけリターンも向上しますが、ひとたび債券のリターンが悪化すると、今度は逆にレバレッジを掛けた分だけマイナス方向に損失が拡大します。

これまでの伝統的な理解では株と債券は逆相関であると言われていました。
逆相関とは、株が上がれば債券は下がり、株が下がれば債券は上がるという関係のことです。
債券先物を利用してレバレッジを掛けるレバレッジ型バランスファンドは株と債券の値動きの逆相関を利用しているわけですが、最近、このような伝統的な理解では説明が付かない事態が発生しているのではないかと言われています。


分散したポートフォリオに対する伝統的な理解は、仮に株式投資で損失を被ったとしても債券投資で利益を得られる点にある。
しかし、我々は全ての資産クラスで損失を出し、同様に為替差損も被った。これはこれまでに起きたことがない状況である。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1434.html


これは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者の発言ですが、今度はJPモルガンアセットマネジメントも同じことを言い出しました。


●債券でヘッジの時代は終わった、「安全」再定義を
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-11-13/Q0W2GEDWX2PU01

JPMAMのグローバルマルチアセット戦略責任者、ジョン・ビルトン氏は記者会見で、「われわれは景気循環の遅い時期にあり、成長減速環境にあると思われる」とし、 「株式、クレジットおよび代替資産投資からリターンは得られるが、単純に債券に資金配分することでリスク資産のエクスポージャーをヘッジする時代は終わった」と語った。
緩和的な金融政策を追い風にリスク資産も債券も値上がりし、いわゆる60/40ポートフォリオは今年絶好調だ。しかし、高いバリュエーションは長年にわたる低リターンを予想させ、年金基金などは代替資産を探し求めている。また、世界の債券の4分の1がマイナス利回りとなっている今、債券はヘッジとして割高に見えつつある。


これは抜粋版です。
原文では次の記述があります。


「投資家は最適なポートフォリオの設計方法を再評価する必要がある」とビルトンは述べた。
「リスクの高い資産に投資しない代償としてポートフォリオのリスクを減らすというやり方は過去のものであり、今ではリスクを減らすためにはリターンがゼロないしマイナスリターンの債券に投資しなければならない」
“Investors must reassess how to design the optimal portfolio,” said Bilton. “The trade-off is no longer between foregone risky asset returns and reduced portfolio risk, but instead between a zero or even negative return in exchange for risk reduction.”

「かつてのような無料のランチはもう存在しない」とワードは述べた。
「追加のリターンをもたらすものには追加のリスクはないというふりをしてはならない。そのリスクとは何かを理解しなければならないのだ」
“There is no such thing as a free lunch these days,” Ward said. “Let’s not pretend at all that anything offering additional return doesn’t come with additional risk. It’s about understanding what that risk is.”



レバレッジ型バランスファンドは、債券先物にレバレッジをかけることで、まるで追加のリスクなくしてリターンだけを享受できるかのように受け止められ、もてはやされています。
しかし、我々インデックス投資家は「リターンはリスクの裏返し」であるという言葉を忘れてはなりません。

マルキールは、その著書「ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版」で36ページを使ってスマートベータについて論じています。
マルキールの主張は、次のとおりです。


(1)リターンが高ければリスクも高いはずであり、リスクだけが低いものはあり得ない。もしリスクだけが低いスマートベータがあったとしても、それはリスクがまだ顕在化していないだけで、長期的に見れば、高いリターンに応じた高いリスクがいずれ顕在化するはずだ。
(2)もしリスクだけが低い優れたスマートベータファンドがあったとしても、すぐに真似されてしまい、リターンはリスクに見合う水準まで低下することになる。
(3)スマートベータは、独自の指標に追随させるため、頻繁な売買を余儀なくされる。その結果、バイ&ホールドが基本である時価総額比インデックスファンドよりも、売買手数料と値上がり益課税の2点で高コストとなり、その分だけリターンがむしばまれることになる。


レバレッジ型バランスファンドは、株と債券が逆相関であり、株が下がれば債券は上がることを前提に設計されています。
そのため、株と一緒に債券も下がるという異常事態には弱く、債券にレバレッジを掛けた分だけ株100%よりも不利になります。

この点について、楽天投信投資顧問は次のようにコメントしています。


●株が暴落し、債券もつれ安したケース
一定の前提条件のもとに「USA360」のポートフォリオを複製したシミュレーションによれば、過去30年間において、株式が大暴落し、債券も下落し、「USA360」の1日辺り最大で下落したのは、2008年10月8日の約▲9.5%(米ドル・ベース)になります。
この時は、米国株式は約▲7.6%下落し、5年国債先物は約▲0.7%、10年国債先物は約▲1.2%下落し(これらはいずれもレバレッジ前の数値です。)、ご質問にあるような株式が大暴落、債券もつれ安といった局面です。
なお、1987年のブラックマンデーの際には、米国株式は約▲20%下落する一方、10年国債の先物は+0.3%程度でした。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1516.html


要するに、1987年のブラックマンデーでは株と債券の逆相関(米国株式は約▲20%下落する一方、10年国債の先物は+0.3%程度)が機能していたのに対し、2008年10月にはそのような関係にはなかったわけですね。

レバレッジ型バランスファンドが株100%よりも良いリターンをもたらすのであれば、そこには良いリターンをもたらしたのと同程度の悪いリターンをもらたすリスクが隠れていると考えなければなりません。
私は、そのリスクとは、レバレッジは良い方にも悪い方にも同じだけの振れ幅で働くという点に加えて、債券先物を利用したことによる余計なコストではないかと考えています。
また、株100%であれば、バイアンドホールドしている限り元値に戻ることが期待できるのに対し、レバレッジ型バランスファンドは上下に振れる間に減価するリスクがあり、それがリバランスでどの程度緩和されるかも不明です。バイアンドホールドをしているだけでは救われないのではないかという懸念があります。

私は、


インデックスマラソンで「ツミレバ投資」を始めます
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1536.html


でお伝えしたとおり、グローバル3倍3分法と楽天・米国レバレッジバランス・ファンドのツミレバ投資を開始しました。
スリム先進国リートとスリム国内リートが間に合ったことから、出場選手が16ファンドとなり、非常に賑やかになりました。


果たしてツミレバ投資は、単純な先進国株100%投資に勝てるのでしょうか?

私はこの点に否定的です。
なぜなら、もしツミレバ投資がリスクなくして儲かるのであれば、投資先進国であるアメリカでもてはやされているはずだからです。日興アセットマネジメントの担当者は10年考えたと述べていますが、日興アセットマネジメントの担当者が思い付いたことをアメリカ人が思い付いていないはずがありません。

グローバル3倍3分法を含むレバレッジ型バランスファンドには、マルキールの言う「まだ顕在化していないリスク」があるのではないかとの疑いがどうしても消えません。


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コメント

No title

バフェットならば何と答えるでしょうかね。
ブラック・スワンはやってこない、債券安の時代なんてもう永遠に来ない?

手許現金を12兆円も温存しているバークシャーが現状では株にも債券にも十分に投資できなくて困っている。

リスク/リターン比が釣り合わずバブル化している債券に、それもレバレッジをかけるなんて???

2017~2018年初までの仮想通貨バブル時と同じで隣の人がやっていて儲かっている、自分だけ取り残されているような焦燥感が3倍3分法ファンド爆売れの背景でしょう。

パウエル議長が任期中ずっとハト派のままで債券にも株マーケットにもフレンドリーであり続けることに賭けるなら、短期的には儲かるかもですが、長期的にbetするような投資ストラテジーではありません。

慢心してほったらかし投資してると、VIXショックのような事が起きたら阿鼻叫喚になるでしょうね。

No title

コメントありがとうございます。

>2017~2018年初までの仮想通貨バブル時と同じで隣の人がやっていて儲かっている、自分だけ取り残されているような焦燥感が3倍3分法ファンド爆売れの背景でしょう。

アクティブファンドよりもインデックスファンドっぽいグローバル3倍3分法のほうが売り手は売りやすいし買い手も買いやすいということなのでしょうね。

>パウエル議長が任期中ずっとハト派のままで債券にも株マーケットにもフレンドリーであり続けることに賭けるなら、短期的には儲かるかもですが、長期的にbetするような投資ストラテジーではありません。

利上げのときにどうなるかというシミュレーションをどの運用会社も出さないのが気になっています。
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たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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