千葉のゴルフ練習場で倒壊した鉄柱の撤去費用

9月9日午前3時ころ、千葉県市原市のゴルフ練習場のネットが強風にあおられ、ネットを支える鉄柱ごと倒壊し、隣接する民家16棟を損壊する事故がありました。

現場の写真です。
https://ameblo.jp/mori-arch-econo/image-12528077845-14595517472.html

大変なことになっています。
しかし、もっと大変なことがあります。それは、鉄柱の撤去費用はこのままだと住民らが自己負担することになりそうだということです。



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撤去費用についての報道記事です。

「鉄柱の撤去費用は少なくとも7000万~8000万円」(建設業界関係者)。民間調査会社によると、ゴルフガーデンは資本金1000万円、年間の売り上げは約6000万円。費用捻出は容易じゃない。
問題は住宅に倒れたままの鉄柱が野ざらしになっていることだ。鉄柱1本の重さは「10トン程度」(前出の建設業界関係者)とみられており、放置したままだと住宅にのめり込み、崩壊しかねない。「今後の台風や大雨で、さらに建物へのダメージが大きくなっていく恐れがある」(森山高至氏)というから、漏電、引火による2次被害の可能性もある。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/262176/2



最初に誰でも思い付くのが「自分の火災保険でなんとかならないか」ということでしょう。

火災保険の保険金額は填補損害額であり、損害防止費用は含まれません。

保険金額の対象となる填補損害額とは、建物や家財の時価ないし再調達価格(どちらかは契約内容によります)のことです。

これに対し、保険金額の対象とならない損害防止費用は、「損害の発生又は拡大の防止のために必要又は有益であった費用」(保険法23条1項2号)のことです。
損害防止費用は、保険法23条によって保険会社の負担とする旨が定められています。

そうすると、1本10トンの鉄柱が建物にめり込んでいることで建物が少しずつ圧壊しているわけですから、鉄柱を除去する費用は損害防止費用といえ、保険会社の負担となるようにも思えます。
しかし、残念ながら保険法23条1項2号は任意規定であり、これと異なる内容を定めた保険契約があるときは保険契約が優先されます。
保険契約によっては、保険会社が損害防止費用を一切負担しないものから、保険金額の10%程度を負担するもの、填補損害額と損害防止費用の合計額が保険金額を上限として負担するものがあります。
保険金額を超えて無制限に損害防止費用を負担する保険契約はないと考えたほうがよいでしょう。

そうすると、建物が全損であれば「保険金額=填補損害額」となるため、損害防止費用は保険からは一切出ないということになりそうです。


つぎに、ゴルフ練習場に対する損害賠償請求が考えられます。
ゴルフ練習場のネットは「土地の工作物」にあたりますので、「設置又は保存の瑕疵」(民法717条)があれば、ゴルフ練習場は損害賠償責任を負うことになります。

下記ブログ記事を見ると、45年前に作ったネットだけが倒壊し、新しく増築したネットは倒壊しなかったことが分かります。倒壊した45年前に作ったネットは、どうやら支柱の固定が甘かったようです。
また、近隣の全てのゴルフ練習場のネットは倒壊せず、このゴルフ練習場のネットだけが倒壊したようです。
https://ameblo.jp/mori-arch-econo/entry-12528534357.html
https://ameblo.jp/mori-arch-econo/entry-12528644295.html

というわけで、どうやらゴルフ練習場にはネットの設置保存の瑕疵ありといえますので、ゴルフ練習場の運営主体が損害賠償責任を負うものと思われます。
しかし、問題は、ゴルフ練習場の運営主体は、おそらく7000~8000万円もの撤去費用を支出することはできないということです。この費用を支出できなければ運営主体は清算して終わりです。残った財産はほとんどないでしょうから、おそらく住民らは泣き寝入りすることになります。

そんなとき、株式会社フジムラがさっそうと登場します。
このフジムラは、2020年のオリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設に際し、国立陸上競技場の解体工事を請け負った業者です。
http://www.kaitai-fujimura.co.jp/

普通に頼んでも請けてくれないと思われるフジムラのほうから手を差し伸べてくれたわけですから、住民らは喜んで応じるべきです。

しかし、


東京都江戸川区の解体業者「フジムラ」が住民を対象に説明会を開いた。同社は無償で鉄柱の撤去を行う方針を示し、住民らに同意書の提出を求めた。
同社が無償で撤去を申し出たことに、説明会では涙を流して喜ぶ住民もいた。だが、29日に設けた提出期限までに、住民全員の同意書は集まらなかった。
同意書を提出しなかった住民の男性(65)によると、障壁のひとつになったのは、同社が示した「工事でさらに損害が出た場合、フジムラに賠償を求めない」という条件だという。男性は「それはまったく別の問題。ゴルフ場のオーナーが話し合いの場に出てこないまま決まるのは納得できない」と憤る。同意しなかった別の男性も「あんな大きな鉄柱を動かすのだから、多少壊れるのは仕方ない」としつつも、「無償ということは、何か裏があるんじゃないの」とこぼす。
https://www.sankei.com/affairs/news/191006/afr1910060008-n1.html


馬鹿だなと思いますよね。
同意書を火災保険会社に提出し、保険会社の了解を得た上でフジムラに渡し、さっさとネットと鉄柱を撤去してもらうべきでした。

フジムラとしても、他の仕事が立て込んでいる中、被災者救済のために無理に予定をあけて急いで撤去作業に入るつもりでタイトな提出期限を設けたのだろうと推測されます。

「何か裏があるんじゃないの」

などと痛くもない腹を探られたらフジムラも面白くないでしょうし、こういう人はトラブルの元です。
せっかく好意で撤去してやったとしても後から面倒な法的トラブルに巻き込まれそうなにおいがプンプンしますから、期限内に同意書が集まらないことに最もホッとしているのはフジムラの顧問弁護士かもしれません。

ゴルフ練習場の運営主体としては、撤去費用を出せない以上、天災であり不可抗力であったと言い続けるしかありません。
住民らは足並みがそろわない以上、自身の保険会社と相談して個別に対応するしかありませんが、鉄柱は1本ではなくネットで全てがつながっていることから、端の家は何とかなりそうでも、ほとんどの家は自身の家に関係する部分だけを撤去することは困難であろうと思われます。

フジムラへの同意書の提出に反対した一部住民のせいで、かなりの長期間、解決できないままの状態が続きそうです。


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コメント

ゴルフ練習場オーナーも交え10日に業者の住民説明会が再び開催される予定だそうですが、これもゴネル住民が一人いるとどうにもならないですね。

練習場側が住民に提示出来る迷惑料が幾らになるか次第でしょうか。

No title

コメントありがとうございます。

>ゴルフ練習場オーナーも交え10日に業者の住民説明会が再び開催される予定だそうです

この部分ですね。

この解体業者は、近くゴルフ練習場側の弁護士とともに住民に説明会を開き、再度理解を求める方針。今後は、倒壊事故の原因をめぐり、自然災害によるものなのか、ゴルフ場側に瑕疵(かし)があったのかが焦点となる。
https://www.sankei.com/affairs/news/191006/afr1910060008-n1.html


しかし、フジムラは免責同意書に全員が署名しない限り無償工事には応じないでしょうし、ゴルフ練習場の弁護士はあくまでも自然災害による免責を主張するだけで、フジムラの工事で発生した損害賠償の負担を約束することはないでしょう。

住民らが今なすべきことは、説明会の前にありとあらゆる手を使って反対派に圧力をかけ、速やかに免責同意書に署名させることしかありません。

フジムラが2度も説明会をしてくれること自体が奇跡であり、2回目の説明会で少しでもごねる住民が出ればフジムラは手を引くと思います。

No title

なお、

>練習場側が住民に提示出来る迷惑料が幾らになるか次第でしょうか。

ゼロ円でしょうね。

ゴルフ練習場は自身の法的責任を否定しているわけですから、金を出すはずがありません。
また、全損害を賠償しなければ迷惑料を出しても出さなくてもどうせ恨まれますから、迷惑料など出すだけ損です。

あのゴルフ練習場の土地をを売れば
撤去費用くらい十分ペイできそうだけどね

No title

コメントありがとうございます。

>あのゴルフ練習場の土地をを売れば撤去費用くらい十分ペイできそうだけどね

ゴルフ練習場は儲かりませんので、大抵は抵当権が付いているでしょうね。

また、運営会社の所有地でなければ会社が売ることはできません。

無事に、

No title

コメントありがとうございます。

撤去工事に保険を付け、保険料はゴルフ練習場が支払うというのは素晴らしいアイデアでしたね。

本当に、素晴らしいアイデアだと思います。

練習場のオーナーに説明会で謝罪させ、さらに保険料を負担させることで金銭的痛みを伴う禊させる。
もし、金銭的負担がなかったら、フジムラが無償で撤去してくれたとしてもオーナー丸儲けじゃないかという不満が出て、住民との軋轢が残ったはずです。
さらに、同意に反対した住民2人の不満と懸念を解消することで、住民2人の言い分は正しかったんだという流れを作りメンツを立てた。
これで住民間の軋轢も減ったはずです。
フジムラにしても万が一、撤去作業で損害が生じても保険で賠償してもらえるので住民から恨まれる心配はない。

解決案を考えた人は、ものすごく有能な人だと思います。

No title

コメントありがとうございます。

>もし、金銭的負担がなかったら、フジムラが無償で撤去してくれたとしてもオーナー丸儲けじゃないかという不満が出て、住民との軋轢が残ったはずです。

壊れた家をゴルフ練習場が補償しない、というか金がなくてできない以上、ゴルフ練習場側との軋轢は避けられないと思います。

仮にゴルフ練習場側にネットの設置保存の瑕疵がなく壊れた家屋の修理代を負担する義務がないとしても、倒壊したネットによって他人の所有権(家、土地)を侵害している以上、ネットを撤去する義務は残ります。

天災による不可抗力を主張するゴルフ練習場側が撤去工事の保険料を負担することにした理由もそこら辺にありそうです。
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