長崎の私道の封鎖と通行権

面白いニュースがあります。

●長崎・青山町の私道封鎖 住民側が仮処分申請 通行妨害禁止など求める
https://this.kiji.is/552655099772437601
私道は青城自治会内にあり、総延長700メートル弱、延べ面積約3700平方メートル。隣の青山町自治会や若草町の一部の住民も生活道として使用しており、封鎖で100世帯以上に影響が出る見込み。業者は一般車両の通行禁止を住民側に通告し、2日に道の一部を封鎖した。
業者側は3月、前所有者の会社整理に伴い引き受けた私道と隣の山林を、併せて長崎市に寄付すると申し出た。寄付を受けるためには、市道の基準に合うように道や側溝、ガードレールを改修することのほか、道と山林を分割して登記し直すことなどが必要で、長崎市の説明を受けた業者側は難色を示したという。
寄付の話は立ち消えになり、地元住民などによると、業者側はその後、住民側に私道と山林の買い取りを求めたが、金額面で折り合わなかった。続いて通行料の支払いを求め、住民側が応じなかったため、私道の一部封鎖に踏み切った。
長崎市は封鎖に備え、抜け道となる市道などの一部を事前に拡幅したが、軽自動車がようやく通れる道幅しかない。


●長崎・青山町の私道封鎖問題 「通行はもともとの権利」住民側が長崎地裁にバリケード撤去の仮処分申し立て
http://www.ktn.co.jp/news/20191004275076/
問題となっている団地内の道路を所有する福岡県の不動産管理会社は、ことし春、住民側に3千万円での土地の購入や通行料の支払いなどを求めました。
しかし、住民が拒否し業者側は「今月1日から車両の通行を禁止する」と通告した上で、2日、入り口をバリケードで封鎖しました。
住民側 山本真邦弁護士 「一部ではこれまで『厚意によって』他人の土地を通っていたんじゃないか、という話がありますけども、元々購入した時点での開発業者から通行地役権という権利として(通行できる)設定を受けている」
住民側 岡田雄一郎弁護士 「メンテナンスも何もしていなかった土地を買い取って、(金を)請求してきて(通行を)止めると、完全に足元をみてやっているだけ。悪質といえる」


●私道通行で所有者と住民が対立 長崎市青山町の団地内
https://www.oricon.co.jp/article/940985/
私道は青城自治会(田中憲一会長)内を通り、延べ面積は約3700平方メートル。隣の青山町自治会(市山芳樹会長)などの住民にとっても周辺へ抜けるために不可欠な道となっている。
市土木総務課などによると、団地は1960年代後半以降を中心に開発された。
それまで道を所有していた業者の会社整理に伴い、現在の業者が所有者となった。当初は住民側に道の買い取りを提案。現在は車の有無により1世帯で月額数千~1万円程度の通行料を支払うよう求めている。しかし住民側と折り合いはついていない。
業者は封鎖する場合「緊急車両以外の車両通行を禁止する」としている。タクシーや福祉車両、宅配業者、ごみ収集車なども対象とする考え。道の出入り口となる場所にブロックや立て看板を設置するなど封鎖に向け準備を進めている。
封鎖すれば青城自治会では車の出入りができなくなる。青山町自治会側にはほかに市道などがあり、市が拡幅工事を進めているが、軽自動車がようやく通れる道幅しか確保できない。
封鎖は100世帯以上に影響する見込みだ。
21日、住民約70人が集まり対応を協議し、通行料は払わないことを総意とした。「みんなで力を合わせないと解決しない」との声も上がった。



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事実関係を整理してみます。

(1)1960年代に青城地区を団地として整備するにあたり、私道が敷設されて開発業者の名義になった。

(2)開発業者は既に存在せず、私道の名義は転々とした。
私道の前所有者は扱いに困り(土地の所有権は放棄できず、固定資産税や維持管理費用の負担をしなければならないからであると思われます)、長崎市への寄付を要望したが、長崎市は私道としての要件を欠く(ガードレールがない、側溝に蓋がない、アスファルトがひび割れている等)ことを理由に拒否した。

(3)前所有者はいよいよ困って現所有者に私道の所有権を譲渡した(繰り返しますが、土地の所有権は放棄できないのに、所有している限り維持コストを負担し続ければならないからです)。
現所有者は、住民らに対し、3000万円での買取りを求めたものの、住民らがこれを拒絶したため、やむなく通行料を請求することとした。通行料の額は原則として1世帯月額1万円であるが、自動車を所有せずオートバイのみ所有する世帯は月額5000円である。

(4)住民らは通行料の支払も拒絶したことから、私道の現所有者は車両の通行のみを禁止することとし、そのためのバリケードを設置した。
これに対し、住民らは、長崎地裁に対し、バリケードの撤去と通行妨害排除を求める仮処分の申立てをした。



私は思うのです。
1世帯30万円で済むのであれば、さっさとみんなで3000万円出して買い取れよ、と。

※青城地区を法人化すれば、みんなで買い取った私道を自治会名義にすることができます。


私道の面積は3700平方メートル(1121坪)です。坪単価にすると2万7000円ですから、3000万円という代金は法外に高いとはいえません。
青城地区には100世帯ほどいるようですから、単純に頭割りをしても1世帯30万円です。
厳密には、自宅に接着する道路の面積に応じて3000万円の代金を割り付けることになるのでしょうが、仮に倍の60万円出す世帯が出たとしても、30年住むとしたら1年で2万円です。1日あたり55円にすぎません。

なぜ1日あたり55円の金も出せないのか、私はそこを疑問に思いました。

ちなみに、長崎市は悪くありません。
整備不良の私道の寄付を受け付けたとしたら、この1件だけでは済まず、大量の寄付が行われ、市の財政に多大な悪影響が及ぶリスクがあるからです。


そもそも、この団地は1960年代に整備されたというわけですから、今から50年も昔の話です。その当時は今と違って車は高価であり、庶民が気軽に買えるものではありませんでした。


1955年(昭和30年)に登場したトヨペット・クラウン。言わずと知れた初代クラウンは、今から60年前にもかかわらず98万円で発売されていた。これは、1955年の大卒初任給が1万2907円から計算すると(2015年大卒初任給19万8000円÷1955年大卒初任給1万2907円で換算)、現在なら1500万円という価格にもなってしまう。
1958年(昭和33年)に登場した最初の大ヒット軽自動車にして国民車となった、スバル360。乗用車普及促進政策に対応するために、開発された名車中の名車。1958年に発売したスバル360は、その愛くるしいフォルムから「てんとう虫」と呼ばれ、36.5万円というプライスタグが付けられ発売された。こちらも、当時の大卒初任給1万3467円から現在の価格に計算をすると、約573万円(!!)にもなる超高額車両だったのである(!)。
1967年(昭和42年)に登場した日本のスーパーカーの元祖、トヨタ2000GT。スタイリングと、高性能に心を奪われた人も多いはず。1967年に登場したトヨタ2000GTは、当時238万円という価格で販売されたが、結果的にはわずか337台しか生産されなかった。その2000GTも、大卒初任給2万6200円から現在の価格に照らし合わせると、およそ1800万円という価格となり、同社で言うなら今のセンチュリーよりも高く、ポルシェ911カレラ4GTSの1827万円に比肩する値段だったということができる。
https://www.webcartop.jp/2016/03/36796/


そうすると、青城地区が団地として分譲された1960年当時、団地の分譲を受けた人が開発業者からこの私道の通行権を認められていたとしても、それは徒歩による通行権であり、車両による通行は売った側も買った側も想定していなかったのではなかったのかと思うのです。
そして、私道の現所有者は、車両による通行を禁止しているのみであり、徒歩による通行は禁止していません。

これに対し、住民らは長年に渡って車で通行していたのだから、車による通行権を時効取得したのではないかと疑問に思う人もいるかもしれません。
しかし、最高裁判所は、通行権の時効取得が認められるためには、時効取得を主張する側が通路を自力で開設するとか、道路の維持管理を行っていたといった事情が認められなければならないとしています。

したがって、他人が開設し、維持管理している私道をタダで通行していた人には、基本的には何らの権利はない(私道所有者の好意に甘えているだけ)ということになります。

私は、私道の現所有者が徒歩による通行も禁止したのであれば、団地として分譲された経緯を考えると住民らの要求は無理なからぬところかもしれないと思うものの、維持管理費を全く負担しないのに、道路に負担をかける車による通行をタダでさせろと求めているわけですから、それはとても理不尽だと思うのです。


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コメント

投資とは直接関係のない記事、結構好きなので面白く読みました。

重箱の隅をつついて恐縮ですが、(実測4m未満であるものの)恐らく位置指定道路であり、また、公道に繋がっていることから公衆用道路とみなされているはず。宅地課税は考えにくく、固定資産税は非課税ではないかと思います。

車両通行権が認められるかどうかは判例と照らしても何とも言えませんが、住民側がガードレール改修や側溝設置費用を負担したうえで市に寄付されればよかったのに…と思います。これだけ問題になれば、最終的な落とし所はこんなところでしょうね。

No title

コメントありがとうございます。

>恐らく位置指定道路であり、また、公道に繋がっていることから公衆用道路とみなされているはず。宅地課税は考えにくく、固定資産税は非課税ではないかと思います。

仮にこの私道が建築基準法の位置指定道路やみなし道路だとすると、私道の所有者はかなり厳しい立場になります。
あれほどのことに踏み切った以上、どうなんでしょうね。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52806
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62790

>これだけ問題になれば、最終的な落とし所はこんなところでしょうね。

寄付を申し出たのは前所有者ですし、感情的なしこりもあるでしょうから、解決への道のりは遠そうです。
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