株と債券の同時安の時代が到来(byGPIF)

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の最高投資責任者が、アメリカ最大の公的年金運用機関であるカリフォルニア州職員退職年金基金の理事会において衝撃的な発言をしたと報道されています。

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発言内容は次のとおりです。

“Conventional wisdom of portfolio diversification is when we lose money in equity we make a profit in fixed income,”
“But we lost in every single asset classes and lost in the currency translation as well. It never happened in the past.”
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-08-20/japan-s-1-5-trillion-manager-warns-of-global-investing-losses

【日本語訳】
分散したポートフォリオに対する伝統的な理解は、仮に株式投資で損失を被ったとしても債券投資で利益を得られる点にある。
しかし、我々は全ての資産クラスで損失を出し、同様に為替差損も被った。これはこれまでに起きたことがない状況である。


昨日の記事でもお伝えしたとおり、これまでの伝統的なポートフォリオ理論は、株100%は避けるべきであり、適度な割合で債券を混ぜてリバランスすべきであるというものでした。
その理由は、債券は満期に全額返済されることから価格変動の波にさらされにくく、リターンのばらつきを抑えることができるからです。
株式市場が暴落したとき、債券市場は下がったとしても株式市場よりも下げ幅は少なく、株式市場から逃げたマネーが債券市場に流れれば債券価格は回復しやすいことになります。

そして、ポートフォリオ理論の肝は、定期的なリバランスです。
1年に1回程度の定期的なリバランスを行うことで、過熱した割高な資産クラスを高値で売却することができ、他方で、相対的に値下がりしたお買い得な資産クラスを割安で買うことができます。


投資家なら誰でも、間違うことなく「安く買って、高く売る」指令を出してくれる魔法使いがいたらいいなと思うだろう。
そして、規則正しいリバランス戦略こそ、その魔法使いなのだ。
(「ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版」444頁)


しかし、GPIFの最高投資責任者は、全資産クラスで損失のリスクがあるとの危惧感を表明するに至りました。

そして、これまで債券投資を含む広範な分散投資を推奨してきたマルキール先生ですら、


現在のような異常な低金利時代では、債券運用の一部を安定した配当利回りの株式で代替することを勧めている。それによって全体のリターンは向上し、リスクは抑えられるのだ。
異常時には教科書的な運用ルールにとらわれずに、少し工夫を加えることが必要だ。
(「ウォール街のランダム・ウォーカー原著第11版」401頁)


との見解を表明し、伝統的な債券投資に疑問を抱いています。

その理由は私には分かりませんが、結局のところ債券投資の魅力はインカムゲイン(利子収入)であり、歴史的な低金利によってインカムゲインという債券投資の本質的な魅力が揺らぎつつあることが根本原因ではないかと漠然と考えています。

さて、

冒頭でご紹介した記事の要約版が、

●GPIF水野氏、全資産クラスで損失の危険-市場のシンクロに警鐘

というタイトルで公開されています(リンクは日本語が混じっているタイプのため貼れません)。


私は、この記事を見て、グローバル3倍3分法を思い出しました。

●【追記あり】革命的なバランスファンドなどない
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1216.html


半年前に上記記事でご紹介し、その際、


もしこのファンドが伝統的な時価総額比のインデックスファンドよりも優れているとしたら、このファンドに顧客が群がって巨額の純資産額が積み上げられるようになるほか、他社も追随して同種ファンドを新規設定し、一大ムーブメントが巻き起こることでしょう。


と指摘しました。

その後、ものすごい勢いで純資産額が増えています。
1年決算型は1364億4700万円、各月分配型は665億8400万円で、両者の合計は2030億3100万円です。

そして、ついに「ウルトラバランス世界株式」という類似ファンドが新規設定されるに至りました。

「株式投資」に加えて、比較的安定的な値動きを特徴とする「先進国の債券」と、当ファンドの特徴の1つでもある「金」投資を組み合わせることによってリスクを抑え、さらに先物取引を活用することで純資産総額の約3倍の資産を運用し、“収益性”と“分散効果”の両方が狙えるバランスファンドの仕組みです。
https://www.sbisec.co.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?OutSide=on&getFlg=on&burl=search_fund&cat1=fund&cat2=none&dir=info&file=comment/fund_comment_190816_01.html&_scpr=int_id%3d190816_fund_spot:more_attx_01

このように、グローバル3倍3分法は、純資産額の激増と類似ファンドの登場の2点が示すように急速に顧客の支持を集めつつあります。

グローバル3倍3分法は、特定の指数(合成インデックスを含む)への連動を目指していないため、インデックスファンドではありません。
しかし、開発担当者(商品開発第一部長)が

資産配分比率が基本的に固定されていることから、ファンドマネージャーはいわば機械的に、価格が下がった資産を買って、上がった資産を売ることになり、リバランス効果が高い。
https://www.nikkoam.com/files/about/newsroom/kiji/2018/1120_02.pdf

とコメントしているとおり、アクティブ的な要素が極力排除される建付けになっています。

とはいえ、アクティブ的な要素が極力排除される建付けになっているのは資産配分比に限定されています。
現物部分は「目標資産配分比までマザーファンドを買う」という単純構造であるため、マザーファンドのパッシブ運用がその質を担保しますが、先物部分には運用の質を担保するものは何もありません。

グローバル3倍3分法は、現物部分(先進国株、新興国株、先進国リート、日本リート)と先物部分(日本株、日本国債、4か国の国債)から構成されます。
現物部分には、次のマザーファンドが存在します。

先進国株 907億1800万円(現物比率95.6%)
新興国株 168億8600万円(現物比率94.1%)
先進国リート 65億3200万円
日本リート 73億2500万円

マザーファンドは比較的小規模といえます。
この規模感のマザーファンドに10か月で2000億円の資金が流れ込んだわけですので、マザーファンドはおそらく大変な混乱状態にあるものと推測されます。
その混乱は、コストと乖離率の増加という2点で悪影響をもたらすことでしょう。

グローバル3倍3分法は、資金の80%で上記4資産を均等に買い(20%ずつ買うことになります)、残りの20%の資金で日本株の先物20%、債券の先物200%をレバレッジを掛けて購入し、合計で300%の資産運用を目指すことになります。

20%の資金で220%の先物運用をするわけですから、単純計算で11倍(220÷20)です。
しかし、グローバル3倍3分法は3%の証拠金しか差し入れておらず、残りの17%は国債及び格付けの高い公社債に投資するマネーオープンマザーファンド(純資産額1億3100万円)を買っています。残念ながら、マイナス金利の影響を受け、マネーオープンマザーファンドは微損を出してしまっていますが、この件の肝は金利収入を得ることではなく、証拠金の差入れ額を少なくすることで為替リスクを極力減らす点にあります。

外株投資には為替リスクはありませんが、外債投資は為替リスクをもろにかぶります。
そのため、外債投資をするにはヘッジコストの負担を考慮しても7~8割程度の為替ヘッジを掛けるべきであると言われていますが、日米金利差が拡大するとヘッジコストも増加することが最大のネックでした。
これに対し、先物投資で為替リスクにさらされるのは、差し入れた証拠金(ドル)と差損益部分の2箇所であり、元金部分は為替リスクからは守られます。

ここまでを読むと、現物部分のマザーファンドが小規模であることや先物部分の運用の質が担保されていないといった問題点はあるものの、グローバル3倍3分法はよいファンドとも思えますが、グローバル3倍3分法の運用資産の200%を占める債券投資には最大のリスクがあります。
すなわち、急激な利上げによって債券価格が急落するリスクです。

債券価格が急落した場合、証拠金の割増しを求められます。
その場合にはマネーオープンマザーファンドで運用中の17%を証拠金にあてることになりますが、それでも足りないときには現物運用の4資産を売却して証拠金にあてることになります。

つまり、グローバル3倍3分法には、発生する現実的なリスクがどの程度かは別として、全損リスクが存在することになります。

顧客の全損リスクは、「ファンド情報」(2019年6月10日号)で大きく取り上げられています。
https://www.nikkoam.com/files/about/newsroom/kiji/2019/190719_01_j.pdf


ところで、グローバル3倍3分法のリスクについて平易に解説した記事があります(ようやく本題です)。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1908/01/news019_3.html

この記事がリスクであると指摘する部分を抜き出してみます。

●先物の場合、レバレッジをかけた分の金利に相当する金額はコストとなる。

●先物はそのまま持ち続けられるわけではなく、満期が存在するため、3カ月に一回、新たな先物に買い換える必要がある。
ただし、今回の債券先物はいずれも10年ものの各国の国債が対象のため、十分な流動性がある。需給関係で価格が上下することはあるが、買い換えの際の価格差はほぼ起きないと話す。また先物の売買手数料は、現物に比べて非常に安価だ。

●レバレッジをかけた商品は、レバレッジを比率を維持するために、価格が上下を繰り返すと、自然と価値が減ってしまう(減価)という特性もある。

●最大のリスクは、分散効果が働かず、組み入れている資産すべてが値下がりすることだ。レバレッジにより、値下がりの影響も3倍になるだけでなく、レバレッジにかかるコストもリターンを悪化させる。


ようやく最初に戻るわけですが、


我々は全ての資産クラスで損失を出し、同様に為替差損も被った。
これはこれまでに起きたことがない状況である。


という今の状況は、まさに

「最大のリスクは、分散効果が働かず、組み入れている資産すべてが値下がりすることだ。レバレッジにより、値下がりの影響も3倍になるだけでなく、レバレッジにかかるコストもリターンを悪化させる。」

という状況なのではないかとの懸念を払拭することができません。


レバレッジ投資信託が長期投資向けの商品として根付くかどうか。商品のリスクと特性を、投資家にしっかり理解してもらえるかどうかがポイントになるだろう。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1908/01/news019_4.html

との記載のとおり、グローバル3倍3分法が投資信託の分野で新たな地位を獲得するためには、全損リスク、レバレッジコスト、売買コスト、自然減価率、株と債券の同時安にどの程度まで耐えられるのかについて、懇切丁寧な説明をしなければならないと考えます。


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コメント

No title

重箱の隅をつつくようなコメントですみません。
レバレッジ商品が減価するという点については3倍3分法の場合は違うのではないかと思っています。

一般的なレバレッジ商品が減価するのは「値動き」をn倍にするために順張りのポジションを持つためです。
詳細はこちらをご覧いただくのがいいと思います。
http://www.rokohouse.net/archives/1439

3倍3分法のようなレバレッジバランスファンドであれば、レバレッジはファンド全体の「実質投資額」をn倍にするために行うので、価格が下がったら追加投資する逆張りになると思います。

もちろん金利コストはかかるので、金利分はは減っていくでしょうが、「レバレッジ商品は減価するものだ」という説明がされる場合は金利のことは考慮していないと思います。

No title

コメントありがとうございます。

>レバレッジ商品が減価するという点については3倍3分法の場合は違うのではないかと思っています。

私はレバレッジはよく分からないため、イメージが湧きませんが、ご指摘の内容が正しいのであれば、運用会社が何らかのアクションを起こすのではないでしょうか。

私は、運営会社がこのファンドを幅広く売りたいのであれば、顧客の漠然とした不安感を払拭することが不可欠であると考えています。

そのためには、楽天バンガードのように質問箱を設けるなど、運用会社のほうで何らかのコンテンツを積極的に作ってほしいものです。
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