前回のベストバイファンドです。
●野村つみたて外国株
投信トータルコスト 0.2508%
信託報酬 税込0.2052%(税抜0.19%)
信託報酬を除く実質コスト 0.0456%
純資産額 57億万円(2017年10月3日新規設定)
マザーファンドの規模
先進国株 4547億4300万円
新興国株 338億3100万円
挑戦者と比較します。
●eMAXIS Slim全世界株(除く日本)
トータルコスト 0.23436%
信託報酬 税込0.15336%(税抜0.142%)
信託報酬を除く実質コスト 0.081%
※第1期運用報告書作成前のため、eMAXIS Slim全世界株の数値を流用した
純資産額 40億2200万円(2018年3月19日新規設定)
マザーファンドの規模
先進国株 3329億8500万円
新興国株 497億3400万円
スリム全世界株(除く日本)のコストはイーマクシス全世界株のコストを流用しており、推定値であるものの、、野村つみたて外国株
投信より安いという結果になりました。
ところで、三菱UFJ国際
投信は、スリム先進国株が同種ファンドと比較すると信託報酬を除く実質コストが高い理由について、
(1)ラップ口座の頻繁な売買による売買コストがかかること
(2)市場内取引が多いこと
を挙げたうえで、上記2点については運用報告書上のコストが高くなるだけであり、以下の理由でリターンには悪影響を及ぼさないと説明しています。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-845.html(1)ラップ口座の頻繁な売買によるコスト増は、ラップ取引をする都度、信託財産留保額をマザーファンドに入れてもらうことで手当てをしている(運用報告書の上ではコスト増になってしまうが、ラップ取引から信託財産留保額を徴収することでラップ口座以外の顧客に不利益にならないようにしている)
(2)他社は、運用報告書に書かなくてもよい市場外取引が多いだけであり、実際には売買コストはかかっている
そのため、運用報告書上の実質コストだけを比較しただけではベストバイファンドを選定することはできず、1年リターンを比較するしかありませんが、スリム全世界株(除く日本)は新規設定から1年が経過していませんので、直近10か月リターンを見てみます。
●野村つみたて外国株
投信4/6 9987
2/5 10145
騰落率 1.5820%
●スリム全世界株(除く日本)
4/6 9836
2/5 9994
騰落率 1.6063%
両者の差 0.0243%
年換算 0.02916%(1000万円あたり2916円)
というわけで、潤沢なマザーファンドと野村ブランドの運用技術によってトータルリターンがよかった野村つみたて外国株
投信でしたが、ついにスリム全世界株(除く日本)の低コストに負けてしまいました。
両者の純資産額は、野村つみたて外国株
投信が57億円(新規設定から1年4か月)、スリム全世界株(除く日本、新規設定から10か月)が40億円ですから、スリム全世界株(除く日本)が猛烈に追い上げています。
野村つみたて外国株投信には、
(1)スポット購入ができず、積立買付専売品であること
(2)普通の人は、ファンドを選ぶ際、信託報酬の安さを基準にすること
という弱点がありますので、純資産額の劇的な伸びは期待できません。
スリム全世界株(除く日本)との差は、今後、ますます開いていくものと思われます。
さて、全海外株ファンドでナンバーワンとなったスリム全世界株(除く日本)ですが、個別ファンドを組み合わせたほうが安くなります。
●eMAXIS Slim全世界株(除く日本) 自作版
トータルコスト 0.2211244%
信託報酬 税込0.128952%(税抜0.1194%)
※0.109×87%=0.09483、0.189%×13%=0.02457、これらの合計額は0.1194
信託報酬を除く実質コスト
※0.07885%×87%=0.0685995%、0.18133%×13%=0.0235729%、これらの合計額は0.0921724
信託報酬を比較してみます。
スリム全世界株(除く日本) 0.15336%
自作 0.128952%
両者の差 0.024408%(1000万円あたり2440円)
スリム全世界株(除く日本)は、スリム先進国株とスリム新興国株をバラ買いしたほうが安く済みます。
並び替えてみます。
1、eMAXIS Slim全世界株(除く日本) 自作版 0.2211244%
2、eMAXIS Slim全世界株(除く日本) 0.23436%
3、野村つみたて外国株投信 0.2508%
このように、スリム全世界株(除く日本)は、
自作のeMAXIS Slim全世界株(除く日本)より、0.024408%(1000万円あたり2440円)割高
野村つみたて外国株投信より、0.02916%(1000万円あたり2916円)割安
となります。
ただし、自作ファンドは松井証券の自動リバランスサービスを利用するため、投信保有ポイントが付きません。
楽天証券の投信保有ポイントは0.048%ですので、自作ファンドよりもスリム全世界株(除く日本)のほうが安くなります。
とはいえ、私は、スリム全世界株(除く日本)には、以下のとおり弱点が3つあると考えています。
(1)楽天証券の投信保有ポイントは、永続性に疑問があります。
スリム全世界株(除く日本)の販売会社報酬は0.061%であり、ここから0.048%を差し引くと0.013%です。これは1億円を販売して1万3000円の儲けを意味します。
余りに儲かりません。
(2)全海外株ファンドは人気がなく、スリム全世界株(除く日本)の純資産額の劇的な伸びは期待できません。
イーマクシス先進国株(運用期間9年3か月)の純資産額は355億円ですが、イーマクシス全世界株(運用期間8年6か月)の純資産額は79億円です。
両者の信託報酬は、なんと同額(税抜0.6%)です。
イーマクシス全世界株は、もっと売れなければおかしいわけですが、全く売れていません。
(3)スリム全世界株(除く日本)の信託報酬が、今後、引き下げられる可能性は低いです。
スリム全世界株(除く日本)の信託報酬は、他社の全世界株ファンドが値下げをしないとそのままです。
全世界株ファンドはマイナーであるため、他社がこの分野で超低コスト戦争を仕掛けても儲かりませんので、その可能性は低いと思われます。
これに対し、自作ファンドは、先進国株ファンド、新興国株ファンド、日本株ファンドのどれかで値下げがあれば対抗値下げがなされます。
これらの3種類のファンドは
インデックスファンドの中核をなしますので、他社が超低コスト戦争を仕掛ける可能性はそれなりにあると思われます。特に、日本株ファンドは、相対的に超低コスト戦争に乗り遅れた感がありますので、最近、Smart-iが仕掛けたように、更なるコスト減が期待できます。
そのとき、自作ファンドであれば値下げの恩恵を享受できますが、スリム全世界株(除く日本)の信託報酬はそのままであり、両者のコスト差は拡大することになるでしょう。
これは、日本を含む全世界株ファンドでも同じことがいえます。
というわけで、私は、スリム全世界株(除く日本)には上記の弱点があることから、お勧めはしません。
全海外株ファンドにこだわりがなければ、様々な同種ファンドとの比較によって信頼性が実証されているスリム先進国株を買うべきであると考えます。
また、どうしても新興国株を混ぜたいのであれば、スリム先進国株、スリム新興国株を自分で組み合わせ、全海外株ファンドを自作したほうがよいと考えます。
なお、その際に注意しなければならないことは、年に1回、売却を伴うリバランスを断じて行い、最初に自分で決めた基本投資割合を堅持するということです。
これができなければ、そもそも複数のファンドを組み合わせて買うべきではありません。
しかし、売却を伴うリバランスは、儲かっているファンドを売り、損しているファンドを買うことになります。
これは市場参加者と真逆の行動をすることを意味しますので、心理的なハードルが非常に高く、やるべきだとは分かっていても簡単に行うことはできません。
そこで、先進国株100%ではどうしても納得することができず、新興国株を混ぜたい人は、松井証券のリバランス積立と自動リバランスサービスを利用することを検討すべきです。
※自動リバランスサービスさえあれば、毎営業日の積立買付資金が1万円のとき、スリム先進国株8000円、スリム新興国株1000円、スリムTOPIX1000円ずつ購入する積立買付設定をして放置するだけで、年に1回(例えば10月4日=投資の日)に売却を伴うリバランスを自動で行ってくれますので、基本投資割合を80:10:10に戻すことができます。
自動リバランスサービスは、現状では松井証券にしかありません。
しかし、これを実装することは技術的に難しいものではないでしょうから、投信保有ポイントサービスがあるSBI証券や楽天証券でぜひ実装してほしいものです。
●自動リバランスサービスの実装を求む
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-727.htmlというわけで、全海外株ファンドのベストバイファンドはスリム全世界株(除く日本)としますが、お勧めはしないという結論になります。
コメント
たわら男爵様に質問なのですが、高配当株投資という手法もあるかと思います。
例えばVYM等、高配当株やETFを買い、配当を再投資し雪だるま式に増やしていく方法は、どのようにお考えでしょうか。
インデックスに劣後すると考えてますか?
個人的に配当金が定期的に入る安心感は一定の価値があるとも考えております。
お手数ですが、どうぞよろしくお願いします。
2019/02/08 11:50 by ゾンビ URL 編集
No title
>VYM等、高配当株やETFを買い、配当を再投資し雪だるま式に増やしていく方法は、どのようにお考えでしょうか。
マルキール先生の言葉に「リターンはリスクの裏返し」というものがあります。
高配当株指数は、その高配当性ゆえにリターンが高いように思えますが、その分よりリスクを取っていることから、時価総額比指数に比べて有利とはいえません。
とはいえ、私がやっているように、配当所得(総合課税)として確定申告をすれば、事業所得の赤字と通算したり、各種所得控除の分だけ源泉所得税の還付を受けたりすることができます。
なお、VYMの配当利回りは3.19%、VTの配当利回りは2.40%ですから、その差は0.79%。大した差はありません。
米国の大型株400種に集中投資するリスクとって0.79%の分配金を得ることを考えると、私には魅力的には感じられません。
>個人的に配当金が定期的に入る安心感は一定の価値があるとも考えております。
VTを買っても2.40%の分配金が入ってきますので、もし定期的な分配金がほしいのであればVTをお勧めします。
2019/02/08 15:22 by たわら男爵 URL 編集
No title
以前男爵さまのブログで教えていただいて、その時に購入しましたが、他の銘柄が大きくマイナスになったときも唯一プラスかちょっとマイナスで、パフォーマンスがよいような気がしました。
2019/02/09 09:55 by URL 編集
No title
>配当貴族はどうでしょうか。
私も最初は良さそうに思えましたが、とにかくコストが高すぎます。
時価総額比の先進国株ファンドとこれだけのコスト差があると、投資対象にする気が起きません。
>他の銘柄が大きくマイナスになったときも唯一プラスかちょっとマイナスで、パフォーマンスがよいような気がしました。
私は先進国株の期待リターンを得られれば十分であると考えています。
また、スマートベータ指数に対する理解が深まり、結局のところ、リスクを減らしてリターンだけを向上させることはできないとの結論が正しいと考えていますので、もはや配当貴族指数には魅力を感じません。
2019/02/09 19:15 by たわら男爵 URL 編集