2019/02/03
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三重課税コスト問題とは、ファンドが保有する株式の配当金に関し、米国ETFについてはアメリカが余計に課税するという問題です。
(1)投資信託
現地国、日本の二重課税
(2)米国ETF
現地国、アメリカ、日本の三重課税
米国ETFを特定口座で保有していると、毎年1月に「特定口座年間取引報告書」が郵送されます。
それを見ると、分配金の総額、日本の所得税、日本の住民税、外国税(米国ETFであればアメリカが徴収したもの)が記載されています。
具体的には、外国税の金額は「分配金の総額×10%」、日本の所得税は「分配金の総額×90%×15.315%」、日本の住民税は「分配金の総額×90%×5%」となります。
※日本の所得税と住民税の課税対象は、「分配金の総額から外国税を差し引いた残額」であるため、「分配金の総額×90%」にそれぞれの税率をかけて算定されます。
ちなみに、配当所得を総合課税で確定申告する際、確定申告書に記載する配当所得の金額は「分配金の総額×90%」ですので、自分で手計算する必要があります。
さて、保有株の所属国(現地国)の税率は10%であることが多いと言われています。
そして、アメリカは、現地国課税後の残りの配当金(90%)に10%の源泉税を徴収するため、配当金の9%(90%×10%)がアメリカに奪われることになります。
ただし、ファンドが保有株の配当金を受け入れる際、原則としてその10%が保有株の所属国(現地国)によって課税されますが、保有株がファンドと同じ国籍の時はファンド受入時には課税されず、ファンドが顧客に分配金を出した時点で初めて課税されることになります。
この例外が適用されるのは、日本の投資信託であれば日本株、米国ETFであれば米国株となります。
したがって、ファンドが分配金を出したとき、
(1)日本の投資信託
日本株は、日本国の一重課税
日本株以外は、現地国・日本国の二重課税
(2)米国ETF
米国株は、米国・日本国の二重課税
米国株以外は、現地国・米国・日本国の三重課税
となります。
そうすると、配当金が100あったとして、日本国(VTでは8%の割合)が課税する前の配当金は、
(1)投資信託 現地国9.2(投資信託の現地国である日本株の0.8を除いたもの)、ファンド受入額90.8
(2)米国ETF ファンド受入額85.95
アメリカ株(VTでは55%) 現地国(アメリカ)5.5、ファンド受入額49.5
アメリカ株以外(VTでは45%) 現地国4.5、アメリカ4.05、ファンド受入額36.45
であるため、この差額4.85が三重課税コスト(米国ETFではなく投資信託であれば払わずに済んだコスト)となります。
ここで「ファンド受入額」と記載しましたが、これは便宜上の表現です。
無分配の投資信託では、上記の「ファンド受入額」は文字どおりファンドの純資産額に上積みされ、顧客にとっては含み益の一部となり、売却時に譲渡所得として日本国によって課税されます。その際の税率は20.315%です。
つまり、無分配の投資信託であれば、保有株に配当金が発生した際、そのまま顧客に分配して日本国に20.315%を徴収されることなく、この20.315%相当額についても顧客の売却時までファンド内で運用し、その運用利益を譲渡益として顧客に渡すことができるため、その分だけリターンが向上します(これを「課税の繰り延べ効果」といいます)。
これに対し、米国ETFでは、上記の「ファンド受入額」はそのまま顧客に分配されるため(ETFの制度上、そのまま顧客に分配しなければならないものとされています)、分配時に配当所得として日本国によって課税されます。その際の税率は20.315%です。
※投資信託を購入する際、分配金「受取型」と分配金「再投資型」を選択できるケースがあります。
これは、投資信託が分配金を出したとき、日本国の源泉徴収後の残額で同じ銘柄を自動買付するかどうかを選択するものです。
私が推奨するスリム先進国株は無分配投資信託であるため(これを目論見書で明言すると課税の繰り延べ効果を嫌う国税庁ともめることから、目論見書では明言していないものの分配金を極力出さない運用をするとしています)、受取型でも再投資型でも変わりませんが、万が一分配金を出したときのために「再投資型」を選択すべきです。
ここまでが私が苦労して考えた理論値です。
米国ETFに三重課税コスト問題があることは昔から知られていましたが、それによるコスト増がいくらかを数字で示した人は、私が知る限りこれまで存在しませんでした。
そこに突如として新星・河童さんがとびこんできました。
●VTの多重課税コストは0.1327%でした
https://secrets2mysuccess.net/2019/01/31/unwanted_tax_issues_of_vt/
河童さんはVTの「Annual Report」(年間報告書)を読み解くという新たな手法を試みています。
VTの2018年10月31日付けの年間報告書はこちらです。
https://advisors.vanguard.com/funds/reports/q6280.pdf
年間報告書17頁の「Statement of Operations」(損益計算書)の中に「Dividends」(配当金)「379,901」との記載があります。
この単位は「($000) 」(1000ドル)と記載されていますので、「379,901」は3億7990万1000ドルになります。
また、「Dividends」(配当金)には、次の注釈が加えられています。
Dividends are net of foreign withholding taxes of $22,221,000.
(配当金は、22,221,000ドルの外国源泉徴収税の控除後のものです。)
つまり、
配当金の総額 4億0212万2000ドル(3億7990万1000ドル+2222万1000ドル)
現地国課税 2222万1000ドル
VTが得た金額 3億7990万1000ドル
となります。
したがって、現地国課税は、配当金の総額の5.5%であることが分かります。
計算式:2222万1000÷4億0212万1000=5.5
先ほどの推定では、現地国の税率を10%と仮定し、配当金100のうちの4.5が現地国の源泉税額であるとしましたが、VTの損益計算書によると現地国の源泉税額は5.5となりますので、現地国の税率は12.2%となります。
※計算式:5.5÷45=12.2…
そこで、現地国の税率が12.2%、アメリカと日本の税率が10%であることを前提にして、推定計算をやり直してみます。
配当金が100あったとして、日本国(VTでは8%の割合)が課税する前の配当金は、
(1)投資信託 ファンド受入額89.986
アメリカ 55×10%=5.5
アメリカ(VTでは55%)・日本(VTでは8%)以外 37×12.2%=4..514
(2)米国ETF ファンド受入額85.059
アメリカ(VTでは55%) 現地国(アメリカ)5.5、ファンド受入額49.5
アメリカ以外(VTでは45%) 現地国5.49、アメリカ3.951、ファンド受入額35.559
であるため、この差額4.927が三重課税コスト(米国ETFではなく投資信託であれば払わずに済んだコスト)となります。
VTの配当利回りは、マネックス証券の外国株口座内のVTのページによれば、年率2.40%です。
この2.40%はVTのファンド受入額85.059にアメリカ課税分を上乗せした金額(94.51)に等しいため、下記計算式のとおり、三重課税コストは保有額の0.1251%となります。
計算式:2.4%÷94.51×4.927=0.1251%
分かりやすく金額で比較してみます。
VTの保有額が1億円のとき、分配金は240万円(保有額の2.4%)、経費率(投資信託でいうところのトータルコスト)は10万円(保有額の0.1%)、三重課税コストは12万5100円(保有額の0.1251%)です。
つまり、VTの経費率と三重課税コストはほぼ同額であり、これらの合計額は年22万5100円(保有額の0.2251%)となります。
スリム先進国株と比較してみます。
●VT
トータルコスト 0.2251%
経費率 0.1%
三重課税コスト 0.1251%
●eMAXIS Slim先進国株式インデックス(イーマクシススリム先進国株式インデックス)
トータルコスト 0.19657%
信託報酬 0.11772%(税抜0.109%)
信託報酬を除く実質コスト 0.07885%
両者の差 0.02853%(1000万円で2853円)
このようにVTとスリム先進国株のトータルコストは、VTが若干悪いものの、ほぼ同額です。
ただし、VTのトータルコストはこの数字どおりですが、スリム先進国株のトータルコストは運用報告書にあらわれない隠れコストが存在し、その数値は運用会社は把握していると思われるものの、一切公表されていません。
そのため、スリム先進国株の本当のトータルコストは、確実に0.19657%を超えます。VTとの本当の優劣は分かりません。
さらに、スリム全世界株(自作)を比較します。
スリム全世界株をVTの配分比で組成すると(上記の年間報告書5~6頁参照)、
●スリム先進国株 81.4%
●スリム新興国株 10.6%(VTの新興国+韓国)
●スリムTOPIX 8%
となります。
これらのトータルコストは、0.21473768%となります。
●スリム先進国株 0.19657%×81.4%=0.16000798%
●スリム新興国株 0.38545%×10.6%=0.0408577%
●スリムTOPIX 0.1734%×8%=0.013872%
比較します。
●VT 0.2251%
●スリム全世界株(自作) 0.21473768%
VTのほうが若干悪いとはいえほぼ同額です(0.01%=1000万円で1000円差)。スリム先進国株との差よりも縮まりました。
ただし、スリム全世界株(自作)の本当のトータルコストはこの数字を確実に超えますので、VTとの本当の優劣は分かりません。
ただし、VTは、保有株が配当金を出した時点で顧客に分配するのに対し、スリム全世界株(自作)は無分配です。
そのため、VTは3か月に1回の頻度で日本国による源泉徴収課税がなされ、配当金の20.315%が運用資産から失われていきますが、スリム全世界株(自作)は顧客が売却するときまで日本国による課税はなされません。その結果、スリム全世界株(自作)は、本来であれば日本国に渡すべき源泉徴収相当額(配当金の20.315%)を運用し、その運用利益を手にすることができます。
このように、三重課税コストを考慮したとしても、VTとスリム先進国株ないしスリム全世界株(自作)はほぼ同等のトータルコストであると思われます。
結局のところ、VTと無分配投信(スリム先進国株ないしスリム全世界株)との差は、配当金×20.315%の運用利益(課税の繰り延べ効果)の有無による差に等しいという結論になります。
なお、課税の繰り延べ効果について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
●DRIP(配当金自動再投資サービス)はなぜ素晴らしいのか
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1193.html
(1)投資信託
現地国、日本の二重課税
(2)米国ETF
現地国、アメリカ、日本の三重課税
米国ETFを特定口座で保有していると、毎年1月に「特定口座年間取引報告書」が郵送されます。
それを見ると、分配金の総額、日本の所得税、日本の住民税、外国税(米国ETFであればアメリカが徴収したもの)が記載されています。
具体的には、外国税の金額は「分配金の総額×10%」、日本の所得税は「分配金の総額×90%×15.315%」、日本の住民税は「分配金の総額×90%×5%」となります。
※日本の所得税と住民税の課税対象は、「分配金の総額から外国税を差し引いた残額」であるため、「分配金の総額×90%」にそれぞれの税率をかけて算定されます。
ちなみに、配当所得を総合課税で確定申告する際、確定申告書に記載する配当所得の金額は「分配金の総額×90%」ですので、自分で手計算する必要があります。
さて、保有株の所属国(現地国)の税率は10%であることが多いと言われています。
そして、アメリカは、現地国課税後の残りの配当金(90%)に10%の源泉税を徴収するため、配当金の9%(90%×10%)がアメリカに奪われることになります。
ただし、ファンドが保有株の配当金を受け入れる際、原則としてその10%が保有株の所属国(現地国)によって課税されますが、保有株がファンドと同じ国籍の時はファンド受入時には課税されず、ファンドが顧客に分配金を出した時点で初めて課税されることになります。
この例外が適用されるのは、日本の投資信託であれば日本株、米国ETFであれば米国株となります。
したがって、ファンドが分配金を出したとき、
(1)日本の投資信託
日本株は、日本国の一重課税
日本株以外は、現地国・日本国の二重課税
(2)米国ETF
米国株は、米国・日本国の二重課税
米国株以外は、現地国・米国・日本国の三重課税
となります。
そうすると、配当金が100あったとして、日本国(VTでは8%の割合)が課税する前の配当金は、
(1)投資信託 現地国9.2(投資信託の現地国である日本株の0.8を除いたもの)、ファンド受入額90.8
(2)米国ETF ファンド受入額85.95
アメリカ株(VTでは55%) 現地国(アメリカ)5.5、ファンド受入額49.5
アメリカ株以外(VTでは45%) 現地国4.5、アメリカ4.05、ファンド受入額36.45
であるため、この差額4.85が三重課税コスト(米国ETFではなく投資信託であれば払わずに済んだコスト)となります。
ここで「ファンド受入額」と記載しましたが、これは便宜上の表現です。
無分配の投資信託では、上記の「ファンド受入額」は文字どおりファンドの純資産額に上積みされ、顧客にとっては含み益の一部となり、売却時に譲渡所得として日本国によって課税されます。その際の税率は20.315%です。
つまり、無分配の投資信託であれば、保有株に配当金が発生した際、そのまま顧客に分配して日本国に20.315%を徴収されることなく、この20.315%相当額についても顧客の売却時までファンド内で運用し、その運用利益を譲渡益として顧客に渡すことができるため、その分だけリターンが向上します(これを「課税の繰り延べ効果」といいます)。
これに対し、米国ETFでは、上記の「ファンド受入額」はそのまま顧客に分配されるため(ETFの制度上、そのまま顧客に分配しなければならないものとされています)、分配時に配当所得として日本国によって課税されます。その際の税率は20.315%です。
※投資信託を購入する際、分配金「受取型」と分配金「再投資型」を選択できるケースがあります。
これは、投資信託が分配金を出したとき、日本国の源泉徴収後の残額で同じ銘柄を自動買付するかどうかを選択するものです。
私が推奨するスリム先進国株は無分配投資信託であるため(これを目論見書で明言すると課税の繰り延べ効果を嫌う国税庁ともめることから、目論見書では明言していないものの分配金を極力出さない運用をするとしています)、受取型でも再投資型でも変わりませんが、万が一分配金を出したときのために「再投資型」を選択すべきです。
ここまでが私が苦労して考えた理論値です。
米国ETFに三重課税コスト問題があることは昔から知られていましたが、それによるコスト増がいくらかを数字で示した人は、私が知る限りこれまで存在しませんでした。
そこに突如として新星・河童さんがとびこんできました。
●VTの多重課税コストは0.1327%でした
https://secrets2mysuccess.net/2019/01/31/unwanted_tax_issues_of_vt/
河童さんはVTの「Annual Report」(年間報告書)を読み解くという新たな手法を試みています。
VTの2018年10月31日付けの年間報告書はこちらです。
https://advisors.vanguard.com/funds/reports/q6280.pdf
年間報告書17頁の「Statement of Operations」(損益計算書)の中に「Dividends」(配当金)「379,901」との記載があります。
この単位は「($000) 」(1000ドル)と記載されていますので、「379,901」は3億7990万1000ドルになります。
また、「Dividends」(配当金)には、次の注釈が加えられています。
Dividends are net of foreign withholding taxes of $22,221,000.
(配当金は、22,221,000ドルの外国源泉徴収税の控除後のものです。)
つまり、
配当金の総額 4億0212万2000ドル(3億7990万1000ドル+2222万1000ドル)
現地国課税 2222万1000ドル
VTが得た金額 3億7990万1000ドル
となります。
したがって、現地国課税は、配当金の総額の5.5%であることが分かります。
計算式:2222万1000÷4億0212万1000=5.5
先ほどの推定では、現地国の税率を10%と仮定し、配当金100のうちの4.5が現地国の源泉税額であるとしましたが、VTの損益計算書によると現地国の源泉税額は5.5となりますので、現地国の税率は12.2%となります。
※計算式:5.5÷45=12.2…
そこで、現地国の税率が12.2%、アメリカと日本の税率が10%であることを前提にして、推定計算をやり直してみます。
配当金が100あったとして、日本国(VTでは8%の割合)が課税する前の配当金は、
(1)投資信託 ファンド受入額89.986
アメリカ 55×10%=5.5
アメリカ(VTでは55%)・日本(VTでは8%)以外 37×12.2%=4..514
(2)米国ETF ファンド受入額85.059
アメリカ(VTでは55%) 現地国(アメリカ)5.5、ファンド受入額49.5
アメリカ以外(VTでは45%) 現地国5.49、アメリカ3.951、ファンド受入額35.559
であるため、この差額4.927が三重課税コスト(米国ETFではなく投資信託であれば払わずに済んだコスト)となります。
VTの配当利回りは、マネックス証券の外国株口座内のVTのページによれば、年率2.40%です。
この2.40%はVTのファンド受入額85.059にアメリカ課税分を上乗せした金額(94.51)に等しいため、下記計算式のとおり、三重課税コストは保有額の0.1251%となります。
計算式:2.4%÷94.51×4.927=0.1251%
分かりやすく金額で比較してみます。
VTの保有額が1億円のとき、分配金は240万円(保有額の2.4%)、経費率(投資信託でいうところのトータルコスト)は10万円(保有額の0.1%)、三重課税コストは12万5100円(保有額の0.1251%)です。
つまり、VTの経費率と三重課税コストはほぼ同額であり、これらの合計額は年22万5100円(保有額の0.2251%)となります。
スリム先進国株と比較してみます。
●VT
トータルコスト 0.2251%
経費率 0.1%
三重課税コスト 0.1251%
●eMAXIS Slim先進国株式インデックス(イーマクシススリム先進国株式インデックス)
トータルコスト 0.19657%
信託報酬 0.11772%(税抜0.109%)
信託報酬を除く実質コスト 0.07885%
両者の差 0.02853%(1000万円で2853円)
このようにVTとスリム先進国株のトータルコストは、VTが若干悪いものの、ほぼ同額です。
ただし、VTのトータルコストはこの数字どおりですが、スリム先進国株のトータルコストは運用報告書にあらわれない隠れコストが存在し、その数値は運用会社は把握していると思われるものの、一切公表されていません。
そのため、スリム先進国株の本当のトータルコストは、確実に0.19657%を超えます。VTとの本当の優劣は分かりません。
さらに、スリム全世界株(自作)を比較します。
スリム全世界株をVTの配分比で組成すると(上記の年間報告書5~6頁参照)、
●スリム先進国株 81.4%
●スリム新興国株 10.6%(VTの新興国+韓国)
●スリムTOPIX 8%
となります。
これらのトータルコストは、0.21473768%となります。
●スリム先進国株 0.19657%×81.4%=0.16000798%
●スリム新興国株 0.38545%×10.6%=0.0408577%
●スリムTOPIX 0.1734%×8%=0.013872%
比較します。
●VT 0.2251%
●スリム全世界株(自作) 0.21473768%
VTのほうが若干悪いとはいえほぼ同額です(0.01%=1000万円で1000円差)。スリム先進国株との差よりも縮まりました。
ただし、スリム全世界株(自作)の本当のトータルコストはこの数字を確実に超えますので、VTとの本当の優劣は分かりません。
ただし、VTは、保有株が配当金を出した時点で顧客に分配するのに対し、スリム全世界株(自作)は無分配です。
そのため、VTは3か月に1回の頻度で日本国による源泉徴収課税がなされ、配当金の20.315%が運用資産から失われていきますが、スリム全世界株(自作)は顧客が売却するときまで日本国による課税はなされません。その結果、スリム全世界株(自作)は、本来であれば日本国に渡すべき源泉徴収相当額(配当金の20.315%)を運用し、その運用利益を手にすることができます。
このように、三重課税コストを考慮したとしても、VTとスリム先進国株ないしスリム全世界株(自作)はほぼ同等のトータルコストであると思われます。
結局のところ、VTと無分配投信(スリム先進国株ないしスリム全世界株)との差は、配当金×20.315%の運用利益(課税の繰り延べ効果)の有無による差に等しいという結論になります。
なお、課税の繰り延べ効果について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。
●DRIP(配当金自動再投資サービス)はなぜ素晴らしいのか
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1193.html
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コメント
VT
インデックスブロガーには海外ETFを推奨する方が多い印象がありますが、コスト的な優位性はほぼなさそうですね。
隠れコストがあるから優劣がわからないという点ですが、日本から投資する立場で考えるなら、楽天証券なら0.048%のキャッシュバックがあるので、隠れコストがこれ以下と想定できるなら、投資信託で十分ですね。
2019/02/03 13:16 by ひろ URL 編集
No title
>インデックスブロガーには海外ETFを推奨する方が多い印象があります
それは信託報酬が0.5%前後の時代の話ですね。
その頃は投資信託を積立買付し、ある程度の金額になったら売却して米国ETFを一括買付するという「リレー投資」が流行っていました。
>日本から投資する立場で考えるなら、楽天証券なら0.048%のキャッシュバックがあるので、隠れコストがこれ以下と想定できるなら、投資信託で十分ですね。
同感です。
ただし、日本の投資信託と米国ETFでは、その規模が文字どおり桁が違います。
そのため、日本の投資信託では指数との乖離を気にする必要があります。
また、スリム先進国株が出る前は、より有利な投資信託が新設されたら乗り換えなければならないのに対し、VTを買えば経費率が年々引き下げられることから乗り換えずに済むというメリットもあり、悩ましい選択を迫られました。
私は既にVTを保有していますので、DRIPが実装されたら移管してホールドを継続しますが、今から投資する人はスリム先進国株を買っておけば間違いないでしょうね。
2019/02/03 18:16 by たわら男爵 URL 編集
No title
ETFに経費率と課税コスト以外の
運用コスト等が発生することはないのですか?
2019/02/03 21:40 by aaa URL 編集
No title
>ETFに経費率と課税コスト以外の運用コスト等が発生することはないのですか?
私は、ETFの経費率は、基本的にトータルコストに等しいと理解しています。
国内籍の公募投信および国内上場のETFについては、投資信託の管理に関わる信託報酬の他に、その他費用としてさまざまな費用がかかってくる。また、日本においては消費税が信託報酬に課せられる。
一方で米国上場ETFの場合、一般的には、経費率という中に日本でいうところのその他費用の多くの部分が含まれているとみなすほうがよいだろう。(個別のファンドやそのストラクチャーによってさまざまなケースが想定される。あくまで一般的な場合の事例)
それとは別に、すべてのケースに関して、ポートフォリオの運用に関わるコスト(リバランスの際の売買手数料など)とポートフォリオがベンチマークから乖離するリスクが存在する。(トラッキングエラーは厳密に言えば標準偏差なので、コストとは異なる。どの程度のトラッキングエラーのリスクを許容するのかは投資家によって異なる。)
https://money-bu-jpx.com/news/article008588/
2019/02/04 02:29 by たわら男爵 URL 編集
↑これは、ETFも経費率の他にもコストがかかっているということでは無いでしょうか?
売買手数料が予め分かっている、またはプールしているというのも変な話ですし。
2019/02/04 22:09 by URL 編集
No title
>これは、ETFも経費率の他にもコストがかかっているということでは無いでしょうか?
ETFは、投資信託のように運用会社が保有株を自ら売買しませんし、VTは純資産額が巨額ですから、リバランスの際の売買手数料がかかったとしても風呂にインクを1滴落とすようなものですから、コストといえるほどのコストはかかっていないのではないかと考えています。
2019/02/05 00:11 by たわら男爵 URL 編集
No title
男爵様のこの実証は、他にはない独創的な視点だと思います。
将来の課税強化と課税繰り延べの関係を教えて下さい。金融所得への課税強化がたびたび密かに検討課題に上がっていますので。
もし、将来、日本の配当課税が30.525%になるとすると、20.315%時代の配当相当分にも売却時の税率30.525%が課税され、ETFのようにその都度課税されるより不利になるのでしょうか。
それとも、20.315%の終わりの日に一旦利益を確定して、買い直す等の対策をすれば有利でも不利でもないでしょうか。
譲渡益課税も同時に強化されそうですから、いずれにしても買い直しになる気がしますが。
2019/02/05 01:44 by 雪ん子 URL 編集
No title
>もし、将来、日本の配当課税が30.525%になるとすると、20.315%時代の配当相当分にも売却時の税率30.525%が課税され、ETFのようにその都度課税されるより不利になるのでしょうか。
保有株の配当金が出た都度に顧客にそのまま分配していれば20.315%、無分配のときは売却時に税率が上がっていれば30%という可能性はそれなりにあるでしょうね。
とはいえ、
>20.315%の終わりの日に一旦利益を確定して、買い直す等の対策をすれば有利でも不利でもないでしょうか。
ご指摘のとおり、適宜このようにして益出しをすることが考えられます。
益出しをしたほうが有利かどうかは、そのときアウターガイさんが元気であればきっとシミュレーションソフトを公開してくれることでしょう。
いずれにしても今から考えても仕方がないことですから、我々は粛々とスリム先進国株を積立買付するしかありません。
2019/02/05 16:11 by たわら男爵 URL 編集
No title
「今から考えても仕方がないことですから、我々は粛々とスリム先進国株を積立買付するしかありません」
に納得しました。税制を含めた制度や景気など、先行き予測できない将来を見据えたインデックス投資でした。
おっしゃるように、「粛々と積立買付」が肝ですね。
2019/02/05 22:21 by 雪ん子 URL 編集
No title
日本の居住者は米国で源泉徴収された上で、日本で納税する必要があります。
すなわち、DRIPが実装されても、税制上の優遇措置がなければ、配当金の認識が発生し、課税対象になると思います。
そうすると、買付の自動化のメリットはあるが、配当金に対する課税の回避(繰り延べ)はできないのではないでしょうか。
2023/05/01 13:27 by こめくい URL 編集
No title
>買付の自動化のメリットはあるが、配当金に対する課税の回避(繰り延べ)はできないのではないでしょうか。
DRIPを導入しているのはサクソバンク証券だけですので、同社が作成する特定口座年間取引報告書の記載によるしかありません。
同社はDRIPを導入するに先立って国税当局と事前折衝を続けてきましたが、本社からの指示が致命的に遅くて国税当局の心証を害したらしく、残念な結果になってしまいました。
国内で唯一米国株式の配当金再投資(DRIP、保有株式の配当金を自動的に再投資する仕組み)を提供*。配当金は税引き後、保有株式の買い増しに充当されます。米国株式への長期投資を通じた資産形成に最適です。
※端株は現金での受け取りとなります。また取引所の取り決め等により現金による配当となる場合があります。
2023/05/01 21:28 by たわら男爵 URL 編集