スリム全世界株(含む日本)は税抜0.12%にしないと大コケするでしょう

三菱UFJ国際投信の代田常務執行役員が、9月28日に開催された「第2回ブロガーミーティング」において、日本を含む全世界株インデックスファンドをスリムシリーズで出すことを表明し、話題になっています。

なお、代田常務執行役員によれば、ベンチマークは合成指数ではなく、全世界株指数(MSCIかFTSEかは未定)だということです。

私は、これに対しては強い懸念を抱いています。率直に言って反対です。
詳細は下記記事をご覧ください。

●MSCI指数の全世界株ファンドはやめてください
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1046.html


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詳細はこちらの記事をご覧ください。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1047.html

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日本を除く全世界株インデックスファンドの嚆矢は、eMAXIS全世界株です。
https://www.am.mufg.jp/text/100701release.pdf

上記のプレスリリースを見ると、eMAXIS全世界株の設定当時、eMAXIS先進国株とeMAXIS新興国株の信託報酬は同額(税抜0.6%)であったことから、eMAXIS全世界株の信託報酬も税抜0.6%とされたことが分かります。
ただし、先進国株の信託財産留保額はゼロであるのに対し、新興国株は0.03%であり、全世界株は0.05%です。

そもそも、eMAXIS全世界株が新規設定されたきっかけは、三菱UFJ国際投信が2010年3月10日から4月30日までの間に実施したアンケートで支持を集めたからです。


三菱UFJ投信は、eMAXIS専用サイト(http://maxis.muam.jp/)にて「eMAXISファンド追加アンケート」を実施し(実施期間:2010年3月10日~4月30日、応募総数6,464件(複数回答含む))、この結果に基づき、全世界株式インデックス<除く日本>、新興国債券インデックスの商品化を進めると2010年5月12日に発表した。
三菱UFJ投信では、昨年より2回のブロガーミーティング、UstreamxTwitterでの社長対談、今回のWebアンケートを実施してきたが、今後も投資家などとの対話を重視しながら、商品性の更なる向上に努めると述べている。
https://www.toushin.com/news/news-05132010/


相互リンク先のとよぴ~さんによると、このアンケートの第2位は「日本を含む全世界株」だったようです。
http://toyop.net/blog-entry-975.html

しかし、アンケートまで取って満を持して登場したはずのeMAXIS全世界株ですが、全く振るいません。

eMAXIS全世界株の新規設定日は2010年7月20日ですので、この日を起点としてeMAXIS先進国株・新興国株と純資産額を比較してみます。

●eMAXIS全世界株
2010.7.20 100万円
2015.7.21 55億6400万円

●eMAXIS先進国株
2010.7.20 27億7200万円
2015.7.21 314億7600万円

●eMAXIS全世界株
2010.7.20 46億3600万円
2015.7.21 263億4700万円

勢いが全く違います。

なぜeMAXIS全世界株が不人気なのか、その理由は簡単です。

新興国株が好きな人にとっては、新興国株の組み入れ比率が1割(最新の月報では11.44%)では物足らないと感じるでしょう。
新興国株の比率を増やしたいと考えたとき、先進国株と新興国株を個別に買ったほうが便利です。

これに対し、新興国株がそれほど好きでない人にとっては、既に先進国株ファンドを買っているでしょうから、新興国株を1割混ぜるためにあえて全世界株ファンドに乗り換えようとは思わず、そのまま先進国株ファンドを買い続けるでしょう。

つまり、日本を除く全世界株(全海外株)ファンドは、どっちつかずの中途半端なものといえます。
そのため、eMAXIS全世界株は、eMAXIS先進国株やeMAXIS新興国株が純資産額を集めているのにもかかわらず、全く伸びませんでした。

ところで、日本を除く全世界株(全海外株)ファンドが脚光を浴びたタイミングが、これまで2回あります。
1回目は、DC専売品であった三井住友DC全海外株が一般開放された時点であり、2回目は野村つみたて外国株投信が新規設定された時点です。

三井住友DC全海外株は、2015年9月18日、楽天証券から一般発売されました。
信託報酬は税抜0.25%。その時点で最安だったニッセイ外国株の信託報酬は税抜0.39%だったことから、みんな度肝を抜かれました。
新興国株部分が100%先物運用であることが気がかりであったものの、これほどのコスト差は無視できず、この点に目をつぶって三井住友DC全海外株に乗り換えようと考えた人は少なくありませんでした。

※なお、ニッセイ外国株は、2015年11月21日、信託報酬を税抜0.24%に引き下げましたが、12月18日、たわら先進国株が信託報酬0.225%で登場し、その後1年ほど最安の座を奪われることになります。

つぎに、野村つみたて外国株投信です。

野村つみたて外国株投信は、2017年10月2日、信託報酬を税抜0.19%として登場しました。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-559.html

この信託報酬0.19%は、その時点の先進国株ファンドの最安値と同額ですが、先進国株ファンドよりも信託報酬が高い新興国株を1割混ぜながらも同じ値段ということで非常に魅力的でした(詳細は、上記リンク先の絶賛記事をご覧ください)。

※野村つみたて外国株投信は、税込0.1155%の雪だるま先進国株の登場を受けたスリム先進国株が税抜0.1095%の異次元の値下げに踏み切ったことで(発表は2017年12月29日)、その短い命を終えました。

これら2件の前例から、日本を除く全世界株(全海外株)ファンドは、コストの面で先進国株よりも有利なときに初めて人気が出るということが分かります。
eMAXIS全世界株のように、先進国株とコストが同額では人気は出ません。

eMAXIS Slim全世界株が2018年3月19日に登場しましたが、その純資産額は半年かけてようやく20億円に到達しました。

スリム全世界株の純資産額が伸び悩んでいる理由は、スリム全世界株の信託報酬は税抜0.142%であり、スリム先進国株(0.109×88%=0.09592)とスリム新興国株(0.189×12%=0.02268)の信託報酬の合計額0.1186%よりも高いからです。

eMAXIS全世界株の前例から分かるとおり、全世界株ファンドは先進国株ファンドと信託報酬を同額にしても勝てないのに、配分比で案分するよりも割高な信託報酬では誰も買いません。

この状況に風穴を開けたのが、2017年9月29日に新規設定された楽天全世界株(信託報酬は税込0.2296%)です。

楽天全世界株は人気を集め、その純資産額は1年間で138億6800円です。
これに対し、同じ月(2017年9月11日)に新規設定されたステートストリート全世界株の純資産額は7億3300万円と振るいませんが、その理由は単純に信託報酬が税抜0.48%と高かったからです。

もしステートストリート全世界株が信託報酬を税抜0.3%にしていたら、SBI証券の投信保有ポイントがギリギリ0.2%付与されます。そうすると、実質的な信託報酬が0.1%となって人気が出たかもしれませんが、0.48%では全く話になりません。

楽天全世界株は、

「これ1本で世界中の株を丸ごと買うことができる」

という新たな概念を提案し、それがうまく顧客の心にはまりました。

楽天全世界株の実質的な信託報酬は税込0.2296%ですが、そのうちの0.1%はVTの経費率ですから、それを除くと信託報酬は税抜0.12%となります。

私は、三菱UFJ国際投信が日本を含む全世界株ファンドを作って楽天全世界株のシェアを奪うのであれば、信託報酬は日本を除く全世界株ファンドと同額(税抜0.142%)ではなく、税抜0.12%とし、楽天全世界株とガチンコ勝負をしなければならないと考えます。

私が提唱する合成ベンチマーク(先進国株80、新興国株10、TOPIX10)の配分比で信託報酬を案分すると、スリム先進国株0.109×80%=0.0872、スリム新興国株0.189×10%=0.0189、スリムTOPIX0.159×10%=0.0159の合計額0.122%になりますから、税抜0.12%の信託報酬はちょうどいい塩梅ではないでしょうか。

そして、何よりも重要なのは、信託報酬を税抜0.12%とすることで、全ての顧客は、

●スリムシリーズを自分で個別に買って組み合わせるよりも損しない(リバランス時の手間や課税コストを考えると、バラで買うよりも得)
●現物株を買っているのに、ETFを買うだけにすぎない楽天全世界株と同額だから、スリムのほうが得

というプラスイメージを持つことでしょう。

これに対し、もし三菱UFJ国際投信がスリム全世界株の信託報酬を日本を含むバージョンと同額(0.142%)にしたら、おそらく大コケすると予想します。


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コメント

No title

いつも勉強させていただいております。

さて、この場を借りましてリクエストなのですが、「ベンツの買い方」シリーズの記事も、また執筆いただけないでしょうか。

買い方から維持の仕方、ベンツのある生活まで、カー情報誌では読めない、男爵様の視点で語られるワクワクするお話に期待しております。

VTのように、バラで買った方が安上がりになりそうですね。

仰る通りだと思います。
仮に、信託報酬が0.12%で全世界投資が可能となるならば
私ならば、以後はそれ一本に切り替えます。自動的にリバランスしてくれるのは素晴らしいことなので。
もちろん、飛ぶように売れると思います。こんなの分かりきったことです。
しかし、三菱国際投信がその分かりきった事をしない何らかの理由があるから、設定しないのではないでしょうか?
0.12%だと三菱国際投信としては利益にならない。
或いは、直販で設定して、直販以外では買えないファンドにするためとか。

合成指数は男らしくないとかそんなことは口では言っても、本心ではないと思います。
設定できない重大な理由があるのではないでしょうか?

男爵様は、逆に0.12%で設定できると思いますか?会社の費用対効果等も含めて。

こんにちは
いつから日本を含んだ全世界は販売されますかね?

No title

全世界(3地域均等)0.142%、全世界(除く日本)0.142%
この状態だと全世界(日本含む)も0.142%で出してきそうですね。

三菱は3地域均等はゴミとして放置し、全世界(除く日本)を0.12%に下げ、同時に全世界(日本含む)を0.12%で新発売する、という英断を示してもらいたいですね。

No title

コメントありがとうございます。

>「ベンツの買い方」シリーズの記事も、また執筆いただけないでしょうか。

せっかくのリクエストですので、折を見てまた再開します。

>VTのように、バラで買った方が安上がりになりそうですね

VTは信頼性がありますが、スリム全世界株は新設のMSCI指数の日本株を含むため、信頼性に疑問があります。
バラで買ったほうが安いなら、そちらを買う人のほうが多でしょうね。

>0.12%だと三菱国際投信としては利益にならない。

現状の3ファンドの信託報酬の案分が0.12%ですから、余り儲からないとしても悪い数字ではないと思います。
十分やっていける現実的な数字ではないでしょうか。

>直販で設定して、直販以外では買えないファンドにするためとか

これは私も考えましたが、純資産額が伸びずに高コストになるリスクがあり、更に客が離れるという悪循環になりかねません。

さらに言えば、日本を含むといえども、全世界株ファンドのニーズはそれほど強いものではないことから、直販に限定すると純資産の伸び悩みという残念な結果に終わると思います。

>いつから日本を含んだ全世界は販売されますかね?

いまこれが確実に分かっている人は、世界で代田常務執行役員だけです。

>この状態だと全世界(日本含む)も0.142%で出してきそうですね。

私もそれを危惧しています。

そうなると想定どおり売れないでしょうが、それを見た他社は、日本を含む全世界株ファンドのニーズがないと判断することでしょう。
残念なことです。

なお、日本を除く全世界株ファンドをバラで買ったときの信託報酬は0.1186%ですので、0.12%にしても売れないと思います。

かといって、日本を含んだほうが高くなるのもバランスがおかしいことから、私は、日本を除くほうは3均等と一緒にそのまま放置するか、あるいはeMAXIS全世界株の登場時の前例のように、思い切って全てをスリム先進国株と同額に引き下げることを期待しています。

もしこれを今月中に踏み切れば(MSCI指数は時間がかかるでしょうが、TOPIXの合成指数ならすぐにできます)、今年のFOYの第1位はスリム全世界株(含む日本)で決まりでしょうね。

No title

さすがに要求が厳しすぎる気が・・・

自分はなるべく手間をかけたくないタイプなんで
0.14%くらいでも普通に買うと思うんですが
そういう人って少数派なんですかね

No title

コメントありがとうございます。

>自分はなるべく手間をかけたくないタイプなんで0.14%くらいでも普通に買うと思うんですが
そういう人って少数派なんですかね


日本を除く全世界株ファンドが売れていませんので、0.14%では売れないと思います。
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http://www.masuitousi.com/

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●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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