楽天バンガードが高コストなのはブローカー報酬が高いから

本日、楽天バンガードファンドシリーズの運用報告書が公開されました。
早速、その実質コストを分析したところ、下記リンク先の記事でお伝えしたとおり、予想を超える高コストであることが判明しました。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1033.html

楽天バンガードファンドシリーズが高コストである原因は、ブローカー報酬です。

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運用報告書の実質コスト欄を見ると、楽天バンガードファンドシリーズのコストを押し上げた原因は、「売買委託手数料」であることが分かります。

運用報告書では、「売買委託手数料」について「有価証券等の売買の際、売買仲介人に支払う手数料」と説明されています。

簡単に言うと、こういうことです。


(1)楽天投信投資顧問は、日本時間の15時までになされた顧客の注文額について、販売会社の速報値を基に推計し、アメリカのブローカーに米国ETFの購入を指示する。
※楽天投信投資顧問は、日本時間の翌営業日まで、顧客の注文額の確定値を把握することはできません。

(2)アメリカのブローカーは、日本時間23時30分から翌日6時(サマータイムは1時間繰り上がり)に開かれるニューヨーク市場で米国ETFの注文を出し、引け値(終値)で米国ETFを購入する。

(3)楽天投信投資顧問は、アメリカのブローカーの請求書を見て、必要な額のドルを用意するために円をドルに交換し、アメリカのブローカーにドルで支払う。


「売買委託手数料」とは、ブローカーに依頼して引け値で米国ETFを購入してもらうための報酬ということになります。

問題は、楽天投信投資顧問が支払っている売買委託手数料が高いのか安いのかということです。

年率にしてみます。

楽天全米株 0.1028%
楽天全世界株 0.2208%
楽天新興国株 0.216%
楽天米国高配当株 0.14688%

これが高いか安いかを比較するために、他のファンドの売買委託手数料を見てみます。

スリム先進国株 0.0137%(第1期運用報告書)
たわら先進国株 0.004%(第2期運用報告書。ちなみに、第1期運用報告書では0.0024%)

文字どおり、桁が違いますね。

しかし、忘れてはいけないのは、スリムもたわらもバックには巨額のマザーファンドがあるのに対し、楽天バンガードファンドシリーズにはマザーファンドがなく、マザーファンドと一緒にゼロから立ち上げたものであるということです。

ベビーファンドやマザーファンドの純資産額が大きいと、そのスケールメリットの恩恵を受け、売買委託手数料の割合は薄まります。

例えば、年間の売買委託手数料が100万円かかったとします。
Aファンドの純資産額は100億円、Bファンドの純資産額は1億円のとき、売買委託手数料の額は同じですが、割合は、Aファンド0.01%、Bファンド1%となります。

このように、ファンドの純資産額が多額であればあるほど、かかったコストは純資産額で案分され、実質コストとなる割合は小さくなります。
また、個別株の売買はマザーファンドが行うため、マザーファンドの規模が巨額であればあるほど、そのスケールメリットによって売買委託手数料の金額自体も安く済むことになります(スリム先進国株やたわら先進国株の第1期運用報告書の売買委託手数料が低率であるのは、巨額のマザーファンドのスケールメリットのおかげであると考えられます)。

では、マザーファンドがベビーファンドと一緒に新設されたファンドのケースを見てみます。

たわらダウの第1期運用報告書時点のマザーファンドの純資産額は5億8200万円です。
これはベビーファンドであるたわらダウと同額です。

たわらダウの売買委託手数料 0.0549%

ついでに、iFreeダウの第1期運用報告書も見てみます。

iFreeダウの第1期運用報告書時点のマザーファンドの純資産額は24億円です。
これはベビーファンドであるiFreeダウと同額です。

iFreeダウの売買委託手数料 0.031%


これらを並び替えてみます。

iFreeダウ 0.031%
たわらダウ 0.0549%
楽天全米株 0.1028%
楽天新興国株 0.216%
楽天米国高配当株 0.14688%
楽天全世界株 0.2208%

ダウ30種を買うのと1種類の米国ETFを買うのと、どちらがより大変かといえばダウ30種だと思います。
純資産額が5億円のたわらダウでも0.0549%ですから、100億円規模の楽天全世界株で0.22%はいかにも高いと考えます。

ところで、楽天バンガードファンドシリーズの売買委託手数料が高いことは分かったとしても、スリム米国株は大丈夫なのかと誰もが疑問に思う人もいるかもしれません。

イーマクシスシリーズにはeMAXISダウというファンドがあります。
eMAXISダウの誕生と一緒にマザーファンドもゼロから新設されたものです。

確認できる中で最も古い運用報告書は、第2期運用報告書(決算日2015年1月26日)となります。
この時点におけるマザーファンド(ベビーファンドも同額)の純資産額は31億円です。

それでは発表します。



eMAXISダウの売買委託手数料 0.153%



おお・・・


並び替えてみます。


iFreeダウ 0.031%
たわらダウ 0.0549%
楽天全米株 0.1028%
eMAXISダウ 0.153%
楽天新興国株 0.216%
楽天米国高配当株 0.14688%
楽天全世界株 0.2208%


もっとも、eMAXISダウの売買委託手数料は3年半も前のことであり、現時点では売買委託手数料は当時よりは安くなっていると思われること、eMAXISダウの純資産額は31億円であるのに対し、楽天全世界株は105億円、楽天全米株は150億円ですから、eMAXISダウの売買委託手数料が0.153%であったからといって楽天バンガードファンドシリーズの売買委託手数料が正当化されるものではありません。

しかも、私が三菱UFJ国際投信に確認したところでは、スリム米国株には100億円以上のマザーファンドがあるようです。
そうすると、ベビーファンドの純資産額がゼロから出発している点で不利になるものの、この点はスリム先進国株の第1期運用報告書の数字を見ればそれほど心配する必要はないと考えられます。
また、スリム先進国株より少額であるとはいえ、スリム米国株もマザーファンドのスケールメリットを受けることができますので、スリム米国株の売買委託手数料はeMAXISダウの売買委託手数料よりも低率になるのではないかと推測されます。


まとめです。

楽天バンガードファンドシリーズは、楽天全世界株が105億円、楽天全米株が150億円の純資産額を擁しながら、売買委託手数料が0.22%と0.10%ですから、これは高いというべきです。

また、これほどの純資産額がありながら、売買委託手数料の割合が低くなっていないということは、売買委託手数料がよほど高いのではないか、これから純資産額が増えたとしても低率にならないのではないかということが危惧されます。

というわけで、どうしても米国株に集中投資したいという人は、楽天米国株ではなくスリム米国株にしたほうがよいでしょう。
また、米国株集中投資というこだわりがない人は、スリム先進国株を選択すべきです。

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コメント

No title

ETFじゃなくて現物株で運用する場合も
売買委託手数料があるんですね

てっきりファンドマネージャーがネットで注文出すだけかと思っていましたが
例えば先進国株式の場合は、各先進国にブローカーを配置して
各先進国の証券取引所で直接取引しているということなんでしょうか?

もしそうなら、アメリカ1国にブローカーを配置するだけの
楽天VTには、今後の可能性は感じますね。

分析ありがとうございます。楽天にはもっと頑張ってもらわないといけませんね。

No title

コメントありがとうございます。

>例えば先進国株式の場合は、各先進国にブローカーを配置して各先進国の証券取引所で直接取引しているということなんでしょうか?

おそらく指数提供業者が提供する指数に属する個別株の売買を仲介する業者がアメリカにいて、その業者に依頼するとどの国の株でも用意してくれるのではないでしょうか。

>楽天にはもっと頑張ってもらわないといけませんね。

今回のブローカー報酬は適正妥当な水準だったのかどうかについて、レポートなりで十分な説明をして欲しいものです。

度々すみません。

今年からつみたてNISAを始め、ひふみや楽天バンガード、スリム新興国を積立してきましたが、ようやくスリム先進国株一本での運用に対して腹を括ることができました。無駄なコストを払ってきたことは多いに反省すべきところですが、良い授業料だったと割り切って今後に生かしていきたいです。

幸いにも少額からのスタートでしたので、残りを来月にでも残額をまとめて投資し、来年より、男爵さま方式でNISAの日に一括投資を実行します。また、これを機に特定口座や直販での買付も考えているところです。

今後についてお伺いしたいことがあります。恥ずかしながら、私のような初心者は暴落期を経験したことがありません。どんなことになるやら想像もつきませんし、できれば来ないでほしいと祈るばかりです。
しかし、いつかくるであろう時に備え、今から準備できることはやっておきたいと考えています。
男爵さまのこれまでの経験を踏まえ、アドバイスいただければ幸いです。

No title

 現在、スイス旅行中です。

 楽天全世界株の高コスト、残念です。

 VTに次ぐ私のリスク資産の主要商品にしようと思っていましたが、方針変更が必要なようです。

 楽天投信にはなぜこのような高コスト体質なのか説明してほしいですね。

No title

男爵さん、いつも更新楽しみにしています。

売買委託手数料、ブローカーから見て楽天が値引きに値する魅力ある客か、楽天に交渉力があるか、も影響してくるのではないでしょうか。

統一的に比較できる数値として、例えば三菱UFJ国際投信(スリム)、アセットマネジメントOne(たわら)と会社としての投信残高で比べると、
楽天:1,443億円
三菱UFJ:13兆4,760億円
アセットマネジメントOne:14兆9、632億円
(各社のウェブサイトで、7月に「正会員の財務状況等に関する届出書」という書面が掲載されており、そこで見ることができます。)
と大差があり、新興の楽天にとって手数料節約交渉に苦労しそうです。

No title

コメントありがとうございます。

>いつかくるであろう時に備え、今から準備できることはやっておきたいと考えています。

均等額積立買付を自動で行えるようにしておくことに尽きます。
大暴落したら、証券口座は見ないようにして、あとはひたすら自動積立てをするわけですね。

>楽天投信にはなぜこのような高コスト体質なのか説明してほしいですね。

ブローカー報酬が適正妥当な水準なのかどうかということですよね。
この運用報告書を何も手当てしないでそのまま公表してしまったわけですが、感度が悪すぎます。

>売買委託手数料、ブローカーから見て楽天が値引きに値する魅力ある客か、楽天に交渉力があるか、も影響してくるのではないでしょうか。

私も、楽天の預かり資産額は少ないだろうと考えていましたが、これほどの差があるとは思いませんでした。

楽天だと、ブローカーの言い値に近い金額になってしまうのかもしれませんね。

「ブローカー報酬」ですね。

これまで楽天全米を賞賛するネット記事ばかりだったので、「ブロガー報酬」(=販売委託手数料)かと思いました。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

コメントありがとうございます。

>「ブロガー報酬」(=販売委託手数料)かと思いました

報酬がもらえたら嬉しいですよね。
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たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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