さよならバンガード

バンガード社は、1976年に世界で初めて個人投資家向けのインデックスファンドを発売し、それ以来、低コストインデックスファンドの先導者(バンガード)として大きな役割を果たしてきました。

その最大の武器は直販システムであり、他社には追随できない低コストで顧客を取り込み、その運用総資産は565兆円に達しています。
しかし、日本では、外国株口座を通じて米国ETFを買うか、セゾングローバルバランスファンドを通じてアイルランド籍の投資信託を買うかするくらいしか、バンガード社の低コストインデックスファンドに投資する方法はありませんでした。


※よろしければ、次の記事もご覧ください。

●セゾン投信はtsumiki証券で買ってポイントを貰おう
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1023.html

●スルガ銀行の問題点
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-1022.html

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ただし、米国ETFを買うためには外国株口座を開設しなければなりません。
2013年12月16日にマネックス証券が日本で初めて特定口座に対応するまでは一般口座で投資しなければならなかったということもあり、一部のマニアを除き、普通の人はバンガード社の米国ETFを買うことはありませんでした。
しかも、ETFは必ず分配金を出すことから、米国ETFを買ったら最後、3か月に1回の頻度で分配金が米ドルで交付されるため、その米ドルの始末に困る(少額だと手数料負けするので再投資できない)という問題点もあります。

また、セゾングロバラは、インデックス投資家の支持を集め、1655億円もの純資産額を集めています。
しかし、その実質的な信託報酬は0.68%ですから、0.11772%のスリム先進国株をはじめとする超低コストインデックスファンドに太刀打ちすることはできません。
しかも、セゾングロバラは、アクティブファンド宣言をした挙句、超低コスト戦争には参加しない意思を表明しており、当初の志を失ったとの批判もなされています。

【ソース】
1、アクティブファンド宣言
そもそも資産運用業界は、指標インデックスをなぞることだけがミッションであるはずがありません。「資産運用の高度化」を叶える資産運用業界の姿とは、本来極めて高度な知見と経験に裏打ちされた専門的能力を競い合い、各々が目指す超過リターンを追求するために真摯に最善を尽くすことに違いありません。
セゾン投信は2つのアクティブファンドの提供を通じて圧倒的な成果を追求してまいります!
https://www.saison-am.co.jp/guide/information/_pdf/message1710.pdf#page=2

2、ベンチマークは存在しない
当ファンドは運用の成果について目標とするベンチマークは設定しません。
https://www.saison-am.co.jp/fund/vanguard/_pdf/svgb_seikyu.pdf

3、超低コスト戦争への不参加宣言
それらの超低コストファンドは、提供側の運用業者としての純粋確固たる理念や矜持に裏打ちされたものとは言い難く、圧倒的多数の高コスト既存ファンドとの併存を前提に実現されている低コストであり、残念ながら会社としての経営基盤は対面販売による販売主導型既存ファンドに立脚したうえで提供されている超低コストであるということです。
ビジネスには様々な事業モデルが存在して然るべきですが、こと情報の非対称性が著しい金融業界、とりわけ資産運用業者において顧客への一貫性を欠く姿勢は、大きな資金を信じて託される者として果たすべき社会的責任(フィデューシャリーデューティ)を専ら重んじている自身にとっては、 どうしても不納得を禁じ得ないのです。
真のフィデューシャリー精神を打ち出し実践する運用会社が評価されて厳選される、生活者主導の資産運用の定着を目指して、セゾン投信は独自の存在価値に磨きをかけて参ります!
https://www.saison-am.co.jp/guide/information/_pdf/message1602.pdf

4、当初の志
「セゾン・バンガード・グロ ーバル・バランス・ファンド」は世界の株式・債券を対象としたインデックス・ファンドなので守りに強く、長期で安定的な財産づくりのベースができる。
https://www.saison-am.co.jp/guide/information/_pdf/message0703.pdf
「長期資産形成、ローコストをコンセプトとした商品をお客さまに提供していくことこそが差別化につながる」
「良い運用結果を阻害する最大要因の縮小化、つまりできる限りの低コストを実現することこそが、その基本的前提として導き出された」
http://www.saison-am.co.jp/guide/information/_pdf/message0703.pdf


そして、2017年9月2日、バンガード社は、楽天投信投資顧問と組んで「楽天・バンガード・ファンドシリーズ」を作りました。
下記ビデオを見ると、例の大コケしたバランスファンドの組成にもバンガード社はかなり関わっているようです。
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/16172

楽天・バンガード・ファンドシリーズは、バンガード社の米国ETFを買うだけファンドです。
具体的には、楽天投信投資顧問がアメリカのブローカーに依頼して米国ETFを引け値で購入し、ブローカーからの請求金額に必要な限度で円をドルに換えてブローカーに支払う形で米国ETFを買っていきます。
買い方としては理想的な方法です。

しかし、ETFは、ある日の終値では指数より上振れしたりある日の終値では下振れしたりするものの、市場の価格形成機能(上振れすれば割高と感じた市場参加者による売りが入り、下振れすれば割安と感じた市場参加者による買いが入ることで適正値が形成される機能)によって自然と指数に近づくように価格変動が収束していく仕組みになっています。

これに対し、楽天・バンガード・ファンドシリーズは、日々、指数よりも上振れたり下振れたりしている米国ETFを、日々の注文額に応じて多く買ったり少なく買ったりするわけですから、日々の米国ETFの乖離率と日々の楽天・バンガード・ファンドシリーズの注文額という2つの要素に影響されて乖離率が発生するという制度的宿命にあります。
これは全くの偶然の事情に左右される制度的宿命ですので、運用会社の努力で改善できるものではありません。

また、そもそも、アメリカ株以外の国の株を買う米国ETFには、三重課税コスト問題があることも知られてきました。
私の推定では、VTの三重課税コストは0.11704%となります。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-745.html#more

超低コスト戦争によって、スリム先進国株の信託報酬は0.11772%になり、その推定トータルコストは0.19657%に下がりました。
三重課税コストを加味したVTの推定トータルコストは0.21704%ですから、既に米国ETFのコスト面での優位性は失われています。

しかも、SBI証券と楽天証券では投資信託の保有残高に応じた投信保有ポイントサービスを実施しています。
SBI証券は0.03%、楽天証券は0.048%です。これを考慮すると、超低コストインデックスファンドの優位性は更に広がります。

そして、とどめを刺したのが楽天カード投資です。
月額5万円の購入額制限はあるものの、購入した投資信託の1%のポイントを付与するサービスは破壊的です。
アメリカで信託報酬をゼロ円とする投資信託が発売され、世界的な話題を呼びましたが、楽天カード投資はゼロ円どころかポイントバックをしてくれます。
投信保有ポイントを考慮すれば、楽天証券でスリム先進国株を購入すると、実に14年5か月分の信託報酬がゼロ円になる計算となります。

大和証券の調査によれば、投資信託の積立投資をしている世帯のうち84.1%が月額5万円以下ということですから、月額5万円までの楽天カード投資が日本にインデックス革命を起こしたと言ってもよいでしょう(配偶者がいる人は、配偶者名義で楽天証券、楽天銀行、楽天カードを作れば、1世帯で月額10万円までの楽天カード投資をすることができます)。

バンガード社は、2018年3月、日本で直販を導入することを強く示唆しました。

バンガード・インベストメンツ・ジャパンのディビッド・キム社長(45)は3月のインタビューで、直販の日程は決まっていないと述べた上で、日本での従業員を増やしたことを明らかにした。日本で受け入れられる「適切な方法」を検討中だとキム社長は述べた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-04-25/P7QB9F6TTDS501

しかし、その4か月後には直販への参入を完全に否定しています。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-981.html

バンガード社は、伝統的に、ETFではなくインデックスファンドに重きを置いています。
バンガード社の創設者であるジョン・C・ボーグルは、ETFに極めて否定的であり、長期的な資産形成の手段としてはインデックスファンドを強く推奨しています。

そのバンガード社がインデックスファンドの直販を諦めたということは、あのバンガード社でさえ、日本の超低コスト戦争には勝てないと判断したことを意味します。

バンガード社が直販を諦めた以上、バンガード社のETFや投資信託を日本の運用会社に商品化させて儲けることしかできませんが、セゾン投信は超低コスト戦争に最初から白旗を上げて降参しており、頼みの楽天・バンガード・ファンドシリーズも超低コスト戦争から離脱する意思を表明しています。

企業努力としてがんばりたいとは思っていますが、正直、公募投信に係る0.12%は最大限努力をした結果です。大きい会社と価格競争しても厳しいので、違うところで戦いたいと思っています。
https://www.americakabu.com/
(リンクに日本語が含まれており、直接リンクが貼れませんでした。引用元は2018年8月25日の記事です)

楽天・バンガード・ファンドシリーズは、「信託報酬0.1296%+米国ETFの経費率」というコスト水準を将来的にも維持することが予想され、これ以上のコスト減を期待することはできません。
もっとも、米国ETFの経費率が下がれば、その分だけ楽天・バンガード・ファンドシリーズの実質的な信託報酬も下がりますが、VTの経費率は0.1%、VTIの経費率は0.04%であり、既に極限まで引き下げられていることから、今後、米国ETFの経費率が劇的に引き下げられることは期待できません。

私を含めたインデックス投資家はバンガード社を無条件で礼賛していますが、バンガード社は所詮はアメリカの会社ですから、バンガード社が日本国内で幅を利かせる状況は好ましくありません。
その意味で、超低コストインデックスファンドの決定版であるスリムシリーズや、運用技術にぬぐい切れない不安はあるものの、元祖低コストファンドとして他社を圧倒する純資産額を集め、ついに前人未到の1000億円に到達したニッセイ外国株が顧客の支持を集める現在の状況は非常に好ましいものといえるでしょう。

私は、現在、たわら先進国株とVTを半々ずつ保有しています。
しかし、VTは3か月に1度、分配金を吐き出すことから完全放置はできません。
現在、自民党の税調で源泉税率を20%から25%に引き上げる案が真剣に検討されています。

税率が上がった時がスリム化に向けた決断をすべき時かもしれないなと漠然と感じています。


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コメント

>それらの超低コストファンドは、
>圧倒的多数の高コスト既存ファンドとの併存を前提に実現されている低コストであり

セゾンの言い分で唯一ここだけは気になります。10年、20年後を考えたとき、銀行等の言いなりに高コスト商品を買ってくれる層は確実に減少していくことを考えると、例え純資産100億超えでも儲からないから償還や改悪されるファンドも出てくる可能性はあるのでしょうか?

ブロガー向けミーティングでバンガードは貸株料をファンドに戻していると説明あったようです
国内インデックスファンドはその点ちゃんとしているか気になるところです

No title

first tradeは、株式やETFの買い付け手数料無料だそうですね。DRIP使えますが。このタイミングでfirst tradeはどうでしょう。

「円ドルの為替手数料の問題」「外国送金の問題」「アメリカでの課税」「売却したドルを日本に送金する問題」「日本の銀行でドルを円に交換する手数料の問題」「売却時の売買差益への税務の問題」など、いろいろ考えておくべきことありますが。

私は面倒そうなので、やっていないのですが。直接VT買ってdripし続けるならいいな、と。また、日本国外に資産を分散して保有するのも、将来の日本のカントリー・リスクの低減の観点からありかなとも。

No title

ボーグル氏が否定したのはETFそのものではなく、それを頻繁に売買する行為ではなかったでしょうか。
インデックスETF自体の長期バイ&ホールドは否定していなかったような記憶です。
楽天と組まない純粋な日本向けVTSAX等が実現しそうにないのは残念ですね。

No title

コメントありがとうございます。

>セゾンの言い分で唯一ここだけは気になります。

スリムシリーズは、巨額のマザーファンドを買うだけファンドだから安くできるわけですが、セゾン投信がそれを認めてしまうと、「投資信託を買うだけファンドなのに安くできないのか」と言われてしまうことから、認めるわけにはいかないのです。

>国内インデックスファンドはその点ちゃんとしているか気になるところです

ポッケに入れたのがバレると、今の時代、ネットで拡散して会社が終わりますから、大丈夫だと考えています。

>このタイミングでfirst tradeはどうでしょう。

一般口座に為替が絡むと、その時々のレートを自分で確認して円換算しなければならないことから、確定申告は非常に難しい作業を強いられます。
私は全くやる気が起きないです。

>ボーグル氏が否定したのはETFそのものではなく、それを頻繁に売買する行為ではなかったでしょうか。

「ETFはTIF(伝統的なインデックスファンド)をトレーダーのおもちゃに作り変えたものだ。賢明なる投資家には実績あるインデックス運用にとどまることを強く求めたい。」(「インデックス投資は勝者のゲーム」243頁)

 ボーグルは、ETFは売買したくなる誘惑に負けてしまうから、伝統的なインデックスファンドをバイアンドホールドすべきであると言っているわけですね。

>純粋な日本向けVTSAX等が実現しそうにないのは残念です

バンガード社のインデックスファンドであっても、コスト面でスリムシリーズに勝つことはできません。
楽天カード投資が登場した現状では尚更無理です。

コストがかかる直販を諦めたとしても、バンガードジャパンが運用会社となってインデックスファンドを販売し、SBI証券や楽天証券に報酬を認めて売ってもらえばよさそうですが、楽天バンガードファンドシリーズとセゾングロバラが死にますし、直販にこだわるバンガード社の伝統にも反しますので、そこまではなかなか踏み切れないということでしょうね。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

コメントありがとうございます。

管理者のみ閲覧可能になっていましたので、該当部分を引用してお答えします。

>現在30代後半、7月からつみたてNISAを始めた超初心者です。
本日、Googleで「債券 バンガード」で検索したところ、御ブログの記事に辿り着き、まだ一部ではありますが、記事を拝読しました。
何処かのコメント欄にありましたが、私も楽天VTと楽天VTIに投資しており、男爵さまの「意味がわからない」ファンドに二つも投資してしまっていた大馬鹿者です…
emaxis slim先進国の優位性、実質コストから見ても明らかですね。鈍器で頭をガツンと殴られた気分になりました。三重課税…私には難しかったことも理解できました。
しかしながら、始めて間もないこと、勉強のためまだ少額投資(月15,000円程度)であったことは不幸中の幸いでありました。12月に残額はまとめて投入予定。来年からは男爵式一括購入を採用したいと思います。


いまからでもスリム先進国株を買えば、将来に備えた十分な資産形成になると思います。


>こんな私にご教示していただきたいことがございます。
①投資初心者が読むと良い書籍を数冊ご紹介下さい。


右端の「インデックス投資家必読の書」をうち、お好きなものをお読みください。
どれか1冊を選ぶのであれば「投資の大原則」がお勧めです。


>②仮につみたてNISA内の2ファンドの積立を解除し、emaxis slim先進国1本にした場合、残りのファンドは解約すべきか否か。


解約すると非課税投資枠を無駄にしてしまいますので、そのままホールドしたほうが良いと思います。


>③idecoについては御ブログ記事にもあったように私も慎重に検討しているところです。来月より転職することが決まっており、個人型確定拠出年金に加入できるかが不明だからです。
当面は余裕資金で特定口座での運用も行いたいと考えておりますが、同口座でもemaxis slim先進国株1本にするべきでしょうか。


「iDeCoをしたほうが、将来の転職可能性等を考慮しても絶対に得だ」と確信できるのであればやってください。
投資すべきファンドはスリム先進国株でよいと思います。
ただし、スリム先進国株に投資できる証券会社はマネックス証券と松井証券の2社だけです。両者ともにポイントが付きませんので、好みで選んでよいと思います。

また何かあればコメントいただければと思います。

ありがとうございました。

アドバイスありがとうございました。

また、不明な点等ありましたら質問させて下さい!本当にたわら男爵から回答いただけるとは思いませんでした。稚拙な質問、失礼しました。

毎日ブログ楽しみにしております。
ありがとうございました。

No title

「日本市場がバンガード社にさよならを言い渡した」ことであることを祈ります。バンガード社が日本のインデックス投資家を相手にするのにさよならしたのでなければ良いのですが・・・。

No title

コメントありがとうございます。

>バンガード社が日本のインデックス投資家を相手にするのにさよならしたのでなければ良いのですが

バンガード社といえど超低コストインデックスファンドにはコスト面で勝てないことから、ある意味、バンガード社は日本のインデックス市場からさよならしたのだと思います。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

パソコン版右端の「ブログ記事検索」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
●カテゴリ「この投資信託がすごい」では、ベストバイファンドの具体名を明示しています。
●カテゴリ「インデックスファンドの基礎知識」を読めば、誰でも簡単に投資信託の必須知識を得ることができます。

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