2019/11/21
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、令和元年10月18日付けで、高橋理事長に対し、6か月の減給処分を科しました。
GPIFは、処分の理由について、次のように述べます。
具体的には、経営委員会としては、以下の判断を行った。
① 特定の女性職員と多数回にわたり会食を行うなど特別な関係にあることを疑われかねない行為があった。
② 被処分者に提供されている公用車に当該職員を複数回にわたり同乗させており、上記①を合わせて勘案すると、公私混同を疑われかねない行為があった。
③ 当該職員の採用が、当時、被処分者による情実採用であったと認定することはできないが、 被処分者が過去の勤務先に対して職員公募採用の応募方法を情報提供し、これに当該職員が応募しており、上記①・②を合わせて勘案すると、少なくとも結果的には被処分者による情 実採用を疑われかねない状況があった。
④ 上記①~③のような被処分者と当該職員との特別な関係、被処分者に提供されている公用車への当該職員の同乗、被処分者による当該職員の情実採用を指摘する被処分者宛て書簡等 の送付があったにも関わらず、それを監査委員及び経営委員長等に報告するなどの内部通報扱いを速やかにしなかった。
https://www.gpif.go.jp/info/1018_seisai_shobun.pdfこれを受けて日経新聞は10月27日付けで、「GPIF理事長は襟を正せ」とする社説を公表しています。
全文引用します。
160兆円の年金積立金の運用を一手に引き受ける年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織ガバナンスに疑念が生じている。女性問題の疑惑を理由に、高橋則広理事長が懲戒処分を受けた。公益性が高い独立行政法人の長として襟を正すべきだ。
GPIFは18日、高橋氏を6カ月の減給処分(20%)にした。女性職員と特別な関係にあり、その採用について情実人事をした――などが疑われかねない行為・状況があったのを理由としている。
ところが本人は事実関係を認めていないようだ。「疑われかねない行為・状況」だけで重い処分を科したのはなぜか。逆に、仮に事実だとすれば減給で済ませてよいのかという疑問もわく。
GPIFは6700万人の年金加入者、4000万人の受給者に対して説明責任を負う独立行政法人だ。うやむやな幕引きはよくない。内部調査に限界があるなら、第三者委員会を設けて真相解明に乗り出す局面ではないか。
ことの経緯はこうだ。高橋氏は職員採用の応募法を以前の勤務先に知らせ、問題の女性が応じて採用が決まった。女性と公用車で何度も食事に出かけた。これらを指摘するメールや手紙を受けとっていたにもかかわらず、内部通報事案としての処理を怠った。
監査委員の聞き取りに同氏は特別な関係にないと説明したが、業務執行を監督する経営委員会(平野英治委員長)が、一連の行為は役員たるにふさわしくないと判断した。ただ理事長としての適格性は失われていないと、お墨つきを与えた。疑わしきを罰したことになり、疑念を増幅させている。
GPIFは、前身の年金福祉事業団も年金積立金のむだ遣いが問題になった。旧社会保険庁の例を挙げるまでもなく、年金に関する組織のガバナンス不全は政治を巻きこむ大ごとになりがちだ。そうなる前の対応が重要である。
GPIFが投資先の企業を選ぶ際に、女性活躍の度合いを参考にしていることも付言しておく。
残念ながら、日経新聞は裏取り取材をしなかったようです。
新着記事通知用のツイッターアカウントはこちら。https://twitter.com/tawaradanshaku