ニッセイ外国株に忍び寄る悪夢

ご質問をいただきました。

ベビーファンドの安定運用についてご教示ください。
ベビーファンドの純資産総額が少ないことによるデメリットはわかるのですが、多額の資金流入が悪であるということがいまいちピンときませんでした。
お手数をおかけしますが、再度ベビーファンドの安定運用についてご教示ください。

早速回答します。

※「ベビーファンド」
マザーファンドを買うだけの投資信託のこと。マザーファンドの赤ちゃんという意味。
投信会社としても、ファンドごとに現物株を買って運用するのは大変なので、ファンドは集金のチャンネルとしての役割に特化し、集めた金は一か所でまとめて運用したほうがよいとの判断で、マザーファンド形式のインデックスファンドが主流派となっている。
対人窓口販売用のイーマクシスとネット販売専用のイーマクシススリムができた理由も、マザーファンド形式だから。

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かつて「ベビーファンドの純資産額が小さいことによるデメリット 」という記事を書きました。
http://tawaraotoko.blog.fc2.com/blog-entry-485.html

この記事でもお伝えしましたが、アセットマネジメントONEの担当者は、次のように述べています。

マザーファンドの規模がいくら大きくても、ベビーファンドの規模が小さければ、日々の新規流入資金の影響を受けてしまい、どうしても指数と乖離してしまう。
しかし、ベビーファンドが育ってくれば、新規流入資金がベビーファンドに与える影響が小さくなることから、指数と乖離する度合いは減り、運用が安定してくる。

ベビーファンドの規模が小さければ小さいほど、日々の新規流入資金の影響を受ける理由は、マザーファンドに対する発注方法にあります。

マザーファンドに対する発注方法についての担当者の説明内容です。

たわら先進国株に対する注文(購入、解約)は、その日の15時で締め切られ、その後に証券会社を経由して当社にデータが届くが、当日に入手できるデータは概算額に過ぎず、注文額が確定するのは翌日になる。
これはシステム上、どうしても避けることができないことから、マザーファンドにできるだけ迷惑を掛けないように、概算額よりも2~3%低い金額(たわら先進国株に2~3%の現金が残るような形)でマザーファンドに注文を出すことになる。
つまり、たわら先進国株は、常に日々の注文額の2~3%の現金を保有していることになるので、その限度でマザーファンドとの乖離が生じることになる。

ベビーファンドの規模が小さく、日々の注文額が大きいほど、日々の注文額の2~3%がベビーファンドの純資産額に占める割合は大きくなります。
この2~3%はキャッシュですから、キャッシュの割合が大きくなればなるほど、指数と乖離していくことになります。

大雑把なイメージはこんな感じです。

大きな池をイメージしてください。
その池に石を投げ込みます。投げ込んだ直後こそ水面に波紋が広がりますが、すぐに収まり、石を投げ込んだことなど分からなくなるでしょう。

これに対し、水たまりに石を投げ込みます。水が周囲に飛び散るばかりか、水たまりに石がめり込み、元の水たまりとは様変わりです。

この場合の石は新規流入資金であり、水たまりや池はベビーファンドやマザーファンドの純資産額です。

ベビーファンドの純資産額に比して新規流入資金が少なければ、ベビーファンドは微動だにしないでしょう。指数との乖離率やコストに影響することはありません。

これに対し、ベビーファンドの純資産額に比して新規流入資金が多くても、マザーファンドの規模が大きければ、ベビーファンドは動揺して指数との乖離が生じるものの、コストは巨大なマザーファンドで希釈化されます。

さらに、ベビーファンドの純資産額に比して新規流入資金が多く、マザーファンドの規模も小さければ、ベビーファンドと一緒にマザーファンドも動揺し、指数との乖離率・コストの両面で、ベビーファンドとマザーファンドは悪影響を受けます。

ニッセイ外国株の運用報告書を見てみます。

ニッセイ外国株の第2期決算日(2015年11月20日)の純資産額は190億2900万円でした。
しかし、第3期決算日(2016年11月20日)の純資産額は356億6600万円です。
わずか1年で、額にして166億3700万円、率にして87.42%も増えています。1.874倍もの高成長です。

指数との乖離率は、日々の新規流入資金の2~3%の留保額が影響するだけですから、新規流入資金がよほど多額でなければそれほど影響しません。
しかし、コストはダイレクトに影響を受けます。

ニッセイ外国株の信託報酬を除く実質コストは0.119%であり、極めて高いです。
その詳細を、たわら先進国株と比較してみます。

●売買委託手数料
ニッセイ 0.013(たわら比6.5倍)
たわら 0.002
●有価証券取引税
ニッセイ 0.027(たわら比4.5倍)
たわら 0.006
●監査費用
ニッセイ 0.005
たわら 0.004
●その他
ニッセイ 0.074(たわら比4.11倍)
たわら 0.018

ニッセイ外国株のマザーファンドの純資産額は2016年11月21日時点で621億1500万円ですから、ニッセイ外国株の純資産額はマザーファンドの純資産額の実に57.41%を占めることになります。

これに対し、たわら先進国株のマザーファンドの純資産額は2426億9400万円ですから、現時点のたわら先進国株の純資産額を基準としても5.55%でしかありません。

つまり、ニッセイ外国株が動揺すると、それがダイレクトにマザーファンドに影響するのに対し、たわら先進国株が動揺しても、その衝撃は一旦は巨大なマザーファンドが吸収してくれるため、たわら先進国株に残る動揺はごくわずかとなります。

一般に、新規流入資金が多いことはいいことです。新規流入資金が多ければ多いほど、ベビーファンドは成長し、将来の安定的運用につながっていくからです。
しかし、ベビーファンドの規模に比して、新規流入資金が多ければ多いほど、ベビーファンドの安定的な運用は損なわれます。ベビーファンドのバックに巨大なマザーファンドがあれば、ベビーファンドに発生した動揺はマザーファンドが吸収することができますが、巨大なマザーファンドがなければ、ベビーファンドに生じた動揺はそのままベビーファンドに反映されてしまいます。

私は、ニッセイ外国株の信託報酬を除く実質コストが高い理由について、上記のように理解しています。
ニッセイ外国株のマザーファンドはニッセイ外国株の成長と一緒に成長してきたわけですから、仕方がないといえば仕方がないといえるかもしれません。
ニッセイ外国株は、新規参入者であるがゆえに、信託報酬を安くすることで顧客の支持を得る戦略を立てましたが、現時点ではそれは非常にうまくいっています。
しかし、たわら先進国株やイーマクシススリム先進国株、最近では「野村つみたて外国株投信」など、巨大なマザーファンドを買うだけの超低コスト投信が相次いでリリースされています。

これらのファンドは、各運用会社の主力商品ではないことから気軽に超低コスト戦争を仕掛けることができますが、ニッセイアセットマネジメントにとってニッセイ外国株は主力ですから、ニッセイ外国株の値下げは会社の売上げの減少に直結し、多大な出血を強いられます。
しかし、ニッセイ外国株にとって、コストで顧客を勧誘した以上、他ファンドにコストで負けることは自らの死を意味します。
また、ニッセイ外国株が頑張って新規資金を集めれば集めるほど、短期的には運用の不安定さに直結します(ニッセイ外国株の純資産額が新規流入資金に影響を受けないほどの巨額になるまで耐えなければなりません)。

好景気時の新規流入資金が多額であるということは、不況時の流出資金も多額になるということを意味します。

多額の資金の流入によってベビーファンドが動揺し、それが収まったと思ったら、今度は多額の資金の流出によってベビーファンドが再び動揺する。

まさに悪夢です。
しかし、多額の新規流入資金を受け入れるということは、この悪夢を招き入れることにつながります。

私がたわら先進国株の新規流入資金が少しずつのほうがよいと考えているのは、このような理由からです。

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コメント

No title

たわら男爵様

大変すっきりするご回答ありがとうございます。
マザーファンドの規模に対するベビーファンドの割合が重要だと認識しました。

積立NISA1年目はたわらで様子見。2年目は野村つみたての決算を見てから判断しようと思います。(積立NISA開始後に信託報酬の値下げ合戦があるかもしれませんが)

No title

参考にしていただけて、よかったです。

>積立NISA1年目はたわらで様子見。2年目は野村つみたての決算を見てから判断しようと思います。

野村つみたて外国株投信は、マザーファンドが巨額ですし、運用がわが国随一ですから、最初から買ってもよいと考えています。

私がつみたてNISAをするかどうかは分かりませんが、もしつみたてNISAをするとしたら、1年目から野村つみたて外国株投信を買います。
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Painter:ますい画伯
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●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

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