投資信託とETFの課税関係

投資信託やETF(以下「ファンド」といいます)が保有する現物株が配当金を出すと、配当金の分だけファンドの純資産が増えます。

ファンドは、増えた純資産について、
(1)配当しない
(2)一部だけ配当する
(3)全て配当する
という選択肢の中から、いずれかを選びます。

配当する場合もしない場合も、極めて複雑な課税関係が発生します。
私が理解する限度になりますが、整理してみました。間違い等がありましたら、ご指摘いただけるとうれしいです。

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まず、配当しないケースについても課税関係が発生します。
ただし、発生する課税関係は、顧客とファンドの関係ではなく、ファンドと現物株との関係です。

ファンドが現物株の配当金をファンド内に受け入れる際、のちにそれを顧客に分配するかどうかには関係なく、現物株の所属する国(以下「現地国」といいます)によって源泉税が徴収され、税引き後の配当金がファンドに入金されます(ただし、現地国がファンドの所属国と同じ場合には課税されないのが通常です)。

現地国の源泉税の税率は各国バラバラですが、大抵の国は互いに租税条約を締結し、10%にしているケースが多いようです。

これに対し、配当するケースでは、上記のほかに、顧客に交付する分配金の20.315%について日本国が課税します。

ファンドが投信の場合はこれで終わりですが、ファンドが米国ETFのときは、顧客に交付する分配金について、まずアメリカが10%を源泉徴収し、残りの20.315%(90%×20.315%=18.2835%)を日本が源泉徴収するため、結局、28.2835%(10%+18.2835%)が源泉徴収されることになります。

以上をまとめると、次のように整理できます。

投資信託
(1)現地国による源泉徴収10%(各国によりバラバラ)
(2)顧客に分配するときは、更に配当益の残り90%の20.315%を日本国が源泉徴収する

●米国ETF
(1)現地国による源泉徴収10%(各国によりバラバラ)
(2)顧客に分配するときは、配当益の残り90%の10%をアメリカが源泉徴収し、更に残り81%の20.315%(16.45515%)を日本国が源泉徴収する

では、なぜVTとたわら先進国株の比較の記事で現地国課税を考慮しなかったのかというと、あまりに複雑で私の理解を超え、きれいに説明する方法が分からなかったからです。

具体例でみてみます。

たわら全世界株
(1)たわら先進国
現地国課税10%
(2)たわら新興国株
現地国課税10%
(3)たわらTOPIX
現地国課税0(現地国=たわらTOPIXの所属国=日本)
(4)小計(80:10:10の配分比) 9%(8+1+0)


●VT
(1)アメリカ株(配分比53%)
現地国課税0(現地国=VTの所属国=アメリカ)、アメリカ国課税10%、日本国課税20.315%(90%×20.315%=18.2835%)
28.2835%×53%=14.990255
(2)それ以外(配分比47%)
現地国課税10%、アメリカ国課税10%(90%×10%=9%)、日本国課税20.315%(81%×20.315%=16.45515%)
35.45515%×47%=16.6639205
(3)小計31.6541755%

たわら全世界株とVTの源泉税の差は22.6541755%ですから、30%ではなく22.6541755%でシミュレーションしたほうが良かったと思うかもしれませんが、そう単純ではありません。

たわら全世界株が100%分配投信だったと仮定して源泉税を計算してみます。

●たわら全世界株
(1)たわら先進国株(配分比80%)
現地国課税10%、日本国課税20.315%(90%×20.315%=18.2835%)
28.2835%×80%=22.6268%
(2)たわら新興国株(配分比10%)
現地国課税10%、日本国課税20.315%(90%×20.315%=18.2835%)
28.2835%×10%=2.82835%
(3)たわらTOPIX
現地国課税0(現地国=たわらTOPIXの所属国=日本)、日本国課税20.315%
20.315%×10%=2.0315%
(4)小計(80:10:10の配分比) 27.48665%

たわら全世界株(100%分配バージョン)とVTと比較すると、VTのほうが4.1675255%多く源泉徴収されることが分かります。

配当金がファンド残高の2%とすると、その4. 1675255%は0.08335。
配当金がファンド残高の2.5%とすると、その4. 1675255%は0.10418。

現地国の源泉税を10%と仮定したときの推定計算では、VTはたわら全世界株よりも毎年の税コストが純資産額の0.1%ほど余計にかかることになります。
※外国税額控除は、所得税の非課税者には利用できないことから、推定計算上では考慮していません。

とはいえ、現地国の源泉税を10%としてよいのかどうかが分からないこと、たわら全世界株は、実際には分配はせず、現地国の源泉徴収後の配当金をファンド内で運用すること、たわら全世界株とVTの現地国と源泉税率が異なることから、正直、どのように推定計算したらよいか分からなかったことから、現地国課税は無視してシミュレーションをすることにしました。

「俺なら正確な計算ができる」と思われた方は、ぜひブログに書いて、私にコメントをください。よろしくお願いします。

ところで、VTとVTWSXであれば、バンガード社がアメリカの税制を前提としたリターンを計算してくれています。

下記リンク先の5頁の「Return After Taxes on Distributions and Sale of Fund Shares」が税引き後のネットリターン(インカム及びキャピタルゲインとして発生した損益に課税された後の損益)になります(バンガード社に確認済)。

VT 1年5.42 5年7.77 設定来(2008年6月24日)3.67
https://personal.vanguard.com/pub/Pdf/p3141.pdf#search=%27Vanguard+Total+World+Stock+ETF+Prospectus%27

VTWSX 1年5.35 5年7.67 設定来(2008年6月24日)3.70
https://www.vanguard.com/pub/Pdf/sp628.pdf#search=%27Vanguard++Prospectus+VTWSX%27

期間は2016年11月31日を起点としたときのものですから、設定来は8年5か月ということになります。

バンガード社の分析によれば、課税コストの影響によって、およそ5年から8年でリターンが逆転することが分かります。

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コメント

No title

こんにちは、「しんたろう」です。
私も海外ETFに投資する意味があるのか興味を持っており一連の記事を参考にさせて頂きました。
そして、実際に計算してみた結果が
http://shintaro-money.com/kaigai-etf-relay/
です。
海外課税は複雑すぎて私にはよく分かりませんので米国10%としました。
その結果、若干ですが未だVTの方が有利になります。
たわら男爵さんの結果と異なりますが、最終的に売却する時の課税、元本の違い(ETFは再投資分も元本になる)は考慮されてますでしょうか?

No title

しんたろうさん

記事を拝見しました。

表の「米国配当課税」で、インデックスファンドは10%課税後再投資、海外ETFは10%課税と記載されていますが、私の理解ではどちらも間違っています。

まず、インデックスファンドにかかる配当課税は、アメリカ一国ではなく、アメリカを含む各国が源泉徴収します。

つぎに、米国ETFの配当金には、確かにアメリカ一国が10%の源泉徴収をしますが、その前に、ETFを構成する現物株の所属国(アメリカを除く)が源泉徴収します。
そのため、私のブログに記載したとおり、VTのアメリカ株部分の配当金には10%、アメリカを除く残りの43%の配当金には10%(現地国)+9%(残りの9割×10%。アメリカ)の合計19%の源泉税がかかります(+日本国の20.315%の源泉税)。

No title

なお、

>たわら男爵さんの結果と異なりますが、最終的に売却する時の課税、元本の違い(ETFは再投資分も元本になる)は考慮されてますでしょうか?

この点ですが、私は、インデックスファンドはETFと異なって源泉税相当額を運用できることから、ETFより高いコスト以上の運用益が上がればインデックスっファンドの勝ちという視点で比較しました。

No title

たわら男爵さん
ご返信有難うございます。

>インデックスファンドにかかる配当課税は、アメリカ一国ではなく、アメリカを含む各国が源泉徴収します。

これについては承知しておりますが、平均すると10%程度だと下記の記事を信用し、米国の10%で代表しました。
https://www.k-zone.co.jp/study/learning/fund/selection/189.html

>米国ETFの配当金には、確かにアメリカ一国が10%の源泉徴収をしますが、その前に、ETFを構成する現物株の所属国(アメリカを除く)が源泉徴収します。

ここは私にはよく分からなかったのですが、やはり3重課税されるのですね。早速、記事に注釈を入れておきます。ご指摘有難うございました。

>ETFより高いコスト以上の運用益が上がればインデックスっファンドの勝ち

これは評価基準の違いですね。
私は、最終的に全て売却という前提で比較しましたので、譲渡益に対する課税、その時の元本の違いを重視しました。

No title

しんたろうさん

>ここは私にはよく分からなかったのですが、やはり3重課税されるのですね。早速、記事に注釈を入れておきます。ご指摘有難うございました。

注釈を拝見しました。

しかし、あの比較だと、インデックスファンドだけ現地国課税を考慮したことになってしまい(ETFも現地国課税されています)、インデックスファンドに不公平な結果になってしまいます。

No title

たわら男爵様

おはようございます。再度のご指摘有難うございます。
仰っている点は、曖昧にしようかと思ったのですが、折角なので、ご指摘通り、現地国課税、米国課税両方を考慮して再計算してみます。
ファンドはそのまま、ETFは50%を10%、残り50%を19%の課税で計算します。

ところで、たわら男爵さんの記事で、未だに理解できないところがあるのですが、
例えば、
>期待リターンを年利5%とすると、保有残高の0.6%の運用益相当額は、保有残高の0.03%(0.6×5%)となる。

この計算、税金で失った0.6%の運用益は、0.6% x 1.05 = 0.63%ではないのでしょうか?

それと私の最初の質問の売却時の件ですが、たわら男爵さんの計算ではETFに国内課税20%を入れています。それなら、やはりファンドでも売却時の課税を考慮しないとファンドに有利になりすぎると思いますが、如何でしょうか?
(無分配)ファンドの分配金相当の課税、国内20%は、非課税ではなく税の繰延べみたいなものですし。

何回もお手数をお掛けしてすみません。

No title

しんたろうさん

>それと私の最初の質問の売却時の件ですが、たわら男爵さんの計算ではETFに国内課税20%を入れています。それなら、やはりファンドでも売却時の課税を考慮しないとファンドに有利になりすぎると思いますが、如何でしょうか?


元本1000万円で、現地国税引き後25万円の配当金をインデックスファンドに受け入れたケースを前提とします。

本来であれば25万円×20.315%=5万0787円の源泉税を日本国に収めるべきところ、顧客に分配しないおかげで5万0787円を売却時まで運用することができます。
つまり、5万0787円×年5%=2539円を丸儲けしたことになるわけです。

他方で、たわら全世界株はVTよりも0.2%ほど高コストです。
元本1000万円×0.2%=2万円のコストが余計に掛かります。
2539円の儲けで2万円のコストを取り戻すには、2万円÷2539円=7年10か月が掛かるというわけです。

これは単利計算であり、現実には複利(計算できない)で増えていきますから、取り戻す期間はもっと短くなります。

というわけで、手計算しやすいようにシンプルにした結果があの推定計算になります。

No title

たわら男爵さん

ようやく、たわら男爵さんの計算が理解できました。
国内課税が免れた金額の1.05ではなく、0.05にする事で、課税分の元本は既に引いた上で、運用益だけを考慮されてますね。(ちょっと言い方がおかしいですけど)
お手数をお掛けしました。

それと、私の記事へのご指摘有難うございました。おかげさまで、初回投稿時より、より正確になったかなと思っています。

これからも、よろしくお願いします。

No title

しんたろうさん

いろいろとコメントありがとうございました。

>これからも、よろしくお願いします。

こちらこそ、よろしくお願いします。

VTの構成銘柄数

VTの構成銘柄数は、てっきり8000近くあると思っていたのですが、調べてみると,VT Holdings に All 857 Holdings とあり、銘柄がすべて載っていました。
確かにベンチマークについては、約8000銘柄で構成されるFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスとされていますが、実際の運用は、抽出して最小分散しているものと思われます。指数へのパフォーマンスへの連動を目指しますだの、インデックス・サンプリング法を用いたパッシブ運用を行うと書かれていますので。
過度な分散よりはよいのかもしれないと感じました。ということは、米国株式部分はS&P500の銘柄数以下に抑えているはずですね。大切なのは指数への連動ですので。中小型株も抽出しているとすると、なかなか面白い感じです。

etfdb.com(英語ページ)http://etfdb.com/etf/VT

No title

コメントありがとうございます。

英語であるため、「All 857 Holdings」の意味がよく分かりませんが、バンガード社は6981銘柄だと言っています(今日の記事をご覧ください)。

私も引き続き調査してみますので、もし新たな情報があったらまたコメントいただけると嬉しいです。
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プロフィール

たわら男爵

Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
http://www.masuitousi.com/

ブログ開始日 2016年3月1日

●リスク資産(6割)は「たわら先進国株」(楽天証券)とVT(SBI証券)をほぼ50:50でホールド中。
●つみたてNISA(SBI証券)では「たわら先進国株」を年初一括40万円購入。
●楽天カード投資(毎月1日)では「たわら先進国株」を毎月5万円購入(+特定口座で11日と21日に各5万円ずつ積立買付中)。
●SBI証券で「インデックスマラソン」の毎営業日100円投資を実行中。

●無リスク資産(4割)は、個人向け国債変動10(みずほ証券、SMBC日興証券)と楽天銀行(金利0.1%)。

パソコン版右端の「ブログ記事検索」と「カテゴリ」が便利です。

●「誰でもできる超簡単ほったらかし投資」(カテゴリ「【公開】誰でもできる究極の投資」)はこのブログの全エッセンスを1記事に凝縮したものです。
●カテゴリ「この投資信託がすごい」では、ベストバイファンドの具体名を明示しています。
●カテゴリ「インデックスファンドの基礎知識」を読めば、誰でも簡単に投資信託の必須知識を得ることができます。

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