サクソバンク証券、外国株にDRIPを実装するも致命的なデメリットあり

9月21日に発売された「ダイヤモンドザイ11月号」には、「買っていい×買ってはダメ人気の米国株100銘柄激辛診断」という別冊付録が付いています。

私は楽天マガジンを年間契約しており、ダイヤモンドザイも読めます。

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ダイヤモンドザイ11月号の別冊付録5頁には、「米国株が買える主なネット証券4社を比較」というタイトルの表が掲載されています。
そこには、マネックス証券、SBI証券、楽天証券のほか、サクソバンク証券が加わっています。

この表を見ると、サクソバンク証券はダントツに優れています。

まず、取扱銘柄数ですが、

●普通株4234銘柄(2位のマネックス証券は2972銘柄)
●ETF・ETNは1542銘柄(2位の楽天証券は283銘柄)
●ADRは354銘柄(2位の楽天証券は129銘柄)

です。

つぎに、手数料ですが、

●売買手数料 約定代金の0.2%(ただし、最低5ドル・上限15ドル)
※他の3社は、約定代金の0.45%(ただし、最低5ドル・上限20ドル)
●為替手数料 0.2%(※追記あり)
※他の3社は、1ドルあたり片道25銭
※2018.9.27追記
ダイヤモンドザイには「1ドルあたり片道20銭」と記載してありましたが、サクソバンク証券に確認したところ、0.2%であることが判明しました。1ドル125円のとき25銭になりますので、為替レートが1ドル125円以下のときはサクソバンク証券に優位性があり、125円を超えると他社に優位性があるということになります。

です。

このようにダイヤモンドザイはサクソバンク証券を猛プッシュしています。

しかも、サクソバンク証券はDRIPに対応しています。

配当金再投資(DRIP)
デフォルトの支払形態は現金です。
ただし、お客様は、株式での受け取りを選択することもできます。受け取り資格のある現金は、権利落ち日の保有高に基づいて、約定日に記帳されます。受け取り資格のある株式は、約定日付けで再投資率が確認された時点で割り当てられます。
https://www.home.saxo/ja-jp/rates-and-conditions/equities-and-etfs/us-trading-rule

DRIPというのは、株やETFで分配金が出たとき、手数料無料で自動的に再投資してくれる(分配金を使って株やETFを自動購入してくれる)という制度です(再投資される分配金は、税金を控除後のものとなります)。

日本の証券会社でDRIPを採用したところはありません。
このDRIPは非常に使い勝手のよい制度であることから、日本で米国ETFを保有している者は誰でもDRIPの実装を待ち望んでいたといってもよいほどでした。

手数料の安さもさることながら、DRIPの実装は、米国ETF投資の概念を変えるほどの破壊力があります。
米国ETF投資にDRIPが実装されれば、最初に買った後は文字通りほったらしておくことができるからです。

しかし、サクソバンク証券には致命的なデメリットが2点あります。

1つめのデメリットは、特定口座源泉徴収ありに対応していないということです。

特定口座源泉徴収ありに対応していないと、必ず確定申告をしなければなりません。
確定申告をする際は、いついくらで買ったのかということをその時点の為替も含めて逐一自分でメモしておかねばならず、非常に面倒です。
サクソバンク証券が特定口座源泉徴収ありに対応していないという点で、私は口座開設する気持ちがなくなりました。

2つめのデメリットは、他社からの入出庫ができないということです。

お客様が買い付けた外国証券は、当社が指定する外国の保管機関にて、当社名義で保管されます。
当該保管機関に保管された外国証券の配当金、利子及び収益分配金等の果実並びに償還金は、当社がお客様に代わって受領し、お客様あてに支払います。
なお、当該保管機関に保管された外国証券を日本国内や他の外国の保管業者に移管すること、また、お客様が保有している外国証券を当社がお預かりしたり当社を通じて売却したりすることはできません。
https://www.home.saxo/ja-jp/rates-and-conditions/equities-and-etfs/us-trading-rule

まず、他社からの入庫ができないということは、他社で外国株を保有している人は、他社で外国株を保有し続けるか、他社で売却してサクソバンク証券で同じ銘柄を購入しなければなりません。
サクソバンク証券で外国株口座を開設しようとする人は、そのほとんどが他の3社の外国株口座で取引をしている人でしょうから、入庫ができないということは乗り換えを躊躇させる事情といえます。

私は、サクソバンク証券には、速やかに他社からの入庫に対応した上で、以前、SBI証券がしたように、他社の移管手数料がかかるときはその全額をサクソバンク証券が負担するキャンペーンを打つべきだと考えます。

つぎに、他社への出庫ができないということは、サクソバンク証券という知名度が皆無の証券会社で大量の取引をしようという意欲を失わせるものです。
非常に危ない感じがします。
サクソバンク証券が顧客にとって最良のサービスを提供する限り、サクソバンク証券から他社に逃げる顧客はいないはずです。他社で普通にできる出庫ができないということは、サクソバンク証券が考えている以上にサクソバンク証券のイメージを悪化させるものです。

私は、サクソバンク証券が特定口座源泉徴収ありに対応し、他社からの移管手数料キャッシュバックキャンペーンを打ち、他社への移管も可能であると堂々と宣言することで、他の3社の顧客が雪崩を打ってサクソバンク証券に流出する可能性があると考えます。
それだけDRIPの実装は魅力的だということです。

また、他の3社は、サクソバンク証券が特定口座源泉徴収ありに対応する前に速やかにDRIPを実装しないと、優良な顧客を失うことになるでしょう。

これまで外国株取引は、いち早く特定口座源泉徴収ありに対応し、手数料が最安だったマネックス証券が優勢でしたが、SBI証券と楽天証券がマネックス証券を丸パクリしたことで、3社横並びという状況にありました(なお、楽天証券だけは、コーポレートアクションがあると強制的に一般口座に払い出されるという致命的な弱点があります。VOOでもコーポレートアクションがあったことから、米国ETF投資だからといって油断できません)。

サクソバンク証券は、本社がデンマークの銀行ということもあってか、日本の顧客の実情に疎い部分があります(公式サイトの日本語が怪しい部分は早急に改善すべきです。非常にうさんくさく感じます)。
日本の顧客にとって、特定口座源泉徴収ありに対応するかどうか、入出庫に対応するかどうかは、サクソバンク証券で取引するかどうかを決断するにあたってサクソバンク証券の想定をはるかに超えた重要な要素ですから、ぜひ早急に対応してほしいものです。

サクソバンク証券がこれらに対応したときこそ、米国ETF投資家のみならず、全ての外国株投資家に対し、歴史的な衝撃を与えることになるでしょう。

【2018.9.23追記】
9月14日、中国の浙江吉利控股集団がサクソバンク証券の親会社であるサクソバンクの株式のうち52%を取得することが決まったようです。
浙江吉利控股集団は、2010年にはボルボ(スウェーデン)の筆頭株主となり、2018年にはダイムラー(ドイツ)の筆頭株主となっています。


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コメント

SBI証券でもコーポレートアクションで特定口座から一般口座に払い出しされるはずですが、変わったのでしょうか?

No title

コメントありがとうございます。

>SBI証券でもコーポレートアクションで特定口座から一般口座に払い出しされるはずですが

SBI証券では、株式併合や株式分割が発生しても一般口座に払い出されることはありません。
https://faq.sbisec.co.jp/faq_detail.html?id=45906&category=251&page=1

しかし、楽天証券では、株式併合や非整数倍の株式分割があると一般口座に払い出されます。
http://faq.rakuten-sec.co.jp/faq_detail.html?id=2014014&scategory=48

VOO(バンガード社のS&P500指数ETF)は、2013年10月24日、株式併合を行いましたので、ETFだから株式併合は関係ないとはいえません。

なお、私がマネックス証券に確認したところ、特定口座から一般口座に払い出されることはないと自信を持って回答されました。
本当にそうかは分かりませんが、マネックス証券が一番守備力がありそうです。

No title

返信ありがとうございます。
内容もリンクをしていただき、大変良くわかりました。

私が調べたのは、コーポレートアクションの資本返還の場合のことでした。(古いことで忘れていました)
株式ETFではめったにないようですが、債券ETFのBNDでは毎年資本返還がされていたようなので、購入前に調べたのでした。

ちなみに私もマネックス証券に確認したところ、資本返還のコーポレートアクションでも特定口座から一般口座に払い出されることはないと回答されました。

No title

税の申告をしないことを前提にするといいよ、ってことなのでしょうかね。
マイナンバーの申告がなければ、補足されにくいのかしら。

No title

コメントありがとうございます。

>大変良くわかりました

よかったです。
本文にも書きましたが、マネックス証券がなぜか鉄壁の守備力なんですよね。
他社も見習ってほしいものです。

>税の申告をしないことを前提にするといいよ、ってことなのでしょうかね

ここは元々はFXの会社です。
FXは特定口座という概念がなく、確定申告が必須ですから、外国株取引を開始するにあたって特定口座の重要性に目が向かなかったのかもしれません。

なお、税務申告を怠ると酷い目にあいます。無申告をすると、単なる見解の相違ではなく完璧な脱税になりますから、割にあいません。特にFXで莫大な利益を上げて無申告で摘発されるというケースがかつて流行りましたので、FXの会社であるここで取引して無申告はヤバいですね。

No title

ここでする質問ではないかもしれませんが、
もしよろしければ教えてください。

現在個人事業主のため、毎月①小規模企業共済を月7万円、②iDeCoを楽天証券でVTIを月6.8万円、③積立NISAを楽天証券でスリム先進国を年40万円 購入しております。

iDeCoは特別法人税のリスクはありつつも、節税のメリットが多いと判断したため、やりました。

ご質問させて頂きたいのは、小規模企業共済も含めると、積立の優先順位はどのようになりますでしょうか?

小規模企業共済は運用を任せっきりで、投資先の大部分は国内債券のようです。

債権不要論の男爵様なら、小規模企業共済は
加入せず、その分をスリム先進国に回しますでしょうか?

この辺りのご意見を伺えると幸甚です。

よろしくお願いします。

No title

コメントありがとうございます。

>債券不要論の男爵様なら、小規模企業共済は
加入せず、その分をスリム先進国に回しますでしょうか?


小規模企業共済は所得控除できますので、所得税率にもよりますが、貯金代わりに満額掛けて損はないでしょう。
廃業すれば退職金控除を利用した後に戻ってきますしね。


現状は、無リスク資産としての小規模企業共済とリスク資産としてのiDeCoが同額ですから、ちょうどいい塩梅ではないでしょうか。
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Author:たわら男爵
Painter:ますい画伯
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ブログ開始日 2016年3月1日

●「たわら先進国株」と「VT」を半分ずつ保有中。
●つみたてNISA(SBI証券)は「たわら先進国株」を年初一括購入中。
●クレジットカードによる投信積立サービスを利用し、SBI証券・楽天証券・auカブコム証券で「たわら先進国株」を毎月5万円ずつ購入中。

●無リスク資産は、個人向け国債変動10とauじぶん銀行(金利0.2%)。

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